絶望の中でこそ俺達は CL6節 アトレティコvsポルト(A) 2021.12.7



2節からずっと正念場と言っている気がするCL、死の組B組の最終節はこちらです。
5節までの順位を整理

リバプール:15
ポルト:5
ミラン:4
アトレティコ:4


アトレティコはビリだが団子状態。どちらにせよ勝つしかないのでね
ちなみに4位なのにまだ突破可能性があるのはアトレティコと、G組のヴォルフスブルクだけ。そのG組はヴォルフスブルクが首位リールとホームで直接対決で、得失点差の関係でたぶん3点差でヴォルフスブルクが勝つとリールが3位以下になる。地獄かな?

アトレティコはとにかくポルトに勝つ事。そしてリバプールが手を抜きすぎてミランに負けないよう、厳しい目線で見守る事である。頼むぞまじで

●スタメン
・アトレティコ

オブラク
ヴルサリコ / コンドグビア / エルモソ
コケ / デ・パウル / ルマル / ジョレンテ / カラスコ
グリーズマン / スアレス

CBはフェリペが出場停止。サヴィッチとヒメネスが怪我。ヒメネスは脳震盪の影響?かな?最終ラインはすでにスクランブルだ。
トリッピアもまだ欠場。カラスコはスタメン復帰した。2戦連発中のクーニャはベンチから


・ポルト
ディオゴ・コスタ
ジョアン・マリオ / エンベンバ / ぺぺ / ザイドゥ
グルイッチ / ヴィティーニャ / オタビオ / ルイス・ディアス
タレミ / エバニウソン

CHが変わる。ウリベは累積で出場停止。
セルジオ・オリベイラがベンチスタートとなってヴィティーニャがスタメンに。左SBは守備特化のザイドゥでスタート。


スタメン

※13分にスアレスが筋肉系の負傷でクーニャと交代



いざ魂のぶつかり合い(山本昌邦風)


●前半
アトレティコは後方3枚。カラスコとジョレンテをWBに配置して保持を模索する。結果から言うと保持はほとんど出来なかったが。

保持

アトレティコが保持するとポルトは4-4-1-1風。
相変わらず超絶コンパクト圧縮。
タレミがCHを消すように立つ。最終ラインが急造のアトレティコにとっては中盤を消されるのはしんどい。狙っていたんだろうか

前からプレスバックがきっちりかかり、後方は戻りがとにかく速い。
この試合を無失点でいくための準備ではなく、いつもこうなのだろう。良く整備されたネガトラで、ぜひ真似した方がいい。
特にトップのタレミは味方がボールロストするとすぐに切り替えてCHへのパスコースに立つ。良い意識である。彼はシュートさえ入れば素晴らしい選手なんだが、いつも天を見上げている


ポルトは正しく守り、ボールを持ったら左サイドから侵入。右へサイドチェンジしてニアゾーンにラッシュ、という形でアトレティコゴールに迫る

非保持

ヴィティーニャがボールを持って保持
アトレティコは前2枚+コケのプッシュで限定。主に外回りするポルト

左

左からが多い。ザイドゥから前に当てる形。ルイス・ディアスの質が使えれば、という感じか

画像5


ルイス・ディアスで解決できなそうならば逆へ。中盤3枚スライドのアトレティコにとってはなかなか厳しいサイドチェンジでジョアン・マリオへ
ここでカラスコが振り切られてしまい、後手に。

サイドチェンジ対応


縦抜けor並行にサポートするオタビオが自在にボールを引き出す。43分には突進してきたグルイッチを使って決定機を作った。

アトレティコは、なんて事ないロングボールで意外と人数が足りていなかったり、人と人の間を抜けてくるドリブルに足を出せなかったり、ハイボールのクリアが不十分になったりと、スクランブル体制の最終ラインの損失分を吐き出してはいた前半。
コケが懸命にカバーに入り、オブラクが立ちはだかったりでひとまずは難を逃れていった


●前半終了
保持で進めないアトレティコは我慢の45分。たまに前進できると今度はカウンターで背後を取られる連続で、ストレスの溜まる厳しい展開であった。ネガトラが悪いというよりシンプルに質の問題。特にスピード
ただ、簡単じゃないという事が最初からわかっていた分、焦りはなかったように思う。ある程度やられるけど我慢しようねっていう。むしろポルトにとっては先手を取れなかった前半は大失敗と言っていい。それくらい質に差があった。

・意外と脆いポルトの守備
22分にカラスコが作った決定機ではヘディング合戦のこぼれ球から一気に抜け出せたりと、意外と脆いところがありそうなポルト。
“撤退しきれば堅いが、トランジションでふわつく”という印象。付け入る隙は思ったよりもありそうだ

・オブラク
この日はオブラクが大当たり。週末久保に決められてやんや言われたのもあるのかもしれない。彼はそういう事をモチベーションにできるタイプの選手だ。今季はふわついた失点もあったが、気迫と責任感が戻ったように見えた。アトレティコにとって、何よりこの試合を無失点でいきたい状況においては大きな収穫である


後半のアトレティコはどこかで訪れる攻勢の時間に点を取る事。そしてやはり、失点しない事だ。



●後半
激流となった後半戦。
配置や狙いはさほど前半と変わらずに入った両チーム。
・アトレティコはCHの守備の意識がやや前方に。
・ポルトは配球の狙いがややFWの頭狙いに。
という印象で入った。
アトレティコはグリーズマンが相手の左SB付近に立つ事が多くなり、ここへのサイドチェンジで前進する機会も増えた。ジョレンテ・ルマル側からの前進。

グリーズマン

グリーズマンがターゲットになって、前進できない状況を打開する。

ところでこの試合ルマルとデ・パウルの配置でルマルが右だったのはどんな意図があったか。
僕は単純に、押し込んだ際に前3枚をルマル、クーニャ、グリーズマンの3枚にしたかったからかな、と思う。グリーズマンがほぼフリーマンのように動き回っていた(そうしないと前進が危うかった)ので実際の狙いはいまいち分からず。守備配置的には広いエリアをカバーするのが主に左側(デ・パウル側)だったので、そんなイメージだったのかな。ルイス・ディアス付近で奪った際にルマルにボールを入れて前向きになりたかった、とか。


・先制
56分にアトレティコが先制。CKで大外へ逃げていったグリーズマンの元にボールが抜けてきた。すごい嗅覚。喜ぶグリーズマンにいち早く駆け寄ったのはスアレスだった。足は大丈夫でしょうか。スアレスって何も考えてなさそうに見えるけど良い先輩感ありますよね。背中で語るというか。勝手に模範になる態度をとっていると思います。

そしてこのゴールに繋がるシーンも、上の図のようなエルモソの大きなサイドチェンジを右サイドできっちり収めたグリーズマンから始まっていた。良い準備で後半に入っていた事がわかる。ギチギチに押し込んで、ロストしたらまたカウンターを食らうであろうリスクを負いながら攻め立てて得たCK。みんなで取った1点だ。

さてリードした。不安なクローズだが。見ていく。
まだ30分近くあるが、肉体疲労か精神的な疲労か、ポルトの出足が怪しくなると同時に、簡単なビルドアップのエラーも出始める。”新生シュート入らない男”クーニャがとんでもないドリブル突破から華麗なループシュートを披露するが、ぺぺに邪魔された。
アトレティコは65分にルマルoutでコレアをin。多分5-4-1にする狙いだった。が。

・退場で大荒れ
直後の67分。スローインを邪魔した流れでカラスコがオタビオをヘッドロックして退場。大喧嘩が始まる。
正直タッチライン際は前半からお互い割と揉めていたのでこうなる可能性は十分にあったと思う。しかし綺麗なヘッドロックだった(他人事)


・ポルトも赤
で、次のプレー。1点取れば良いだけのポルトが失態。またも同サイドで揉めてウェンデルがクーニャに肘打ち一閃で一発退場。何でそうなる


・10対10に〜その後の対応の明暗〜
結果、6分弱時計は進んだ。アトレティコは仕方なく、一時的にグリーズマンがカラスコがやっていた左WBの位置に降りて5-3-1で守る。引き込んで大外は封鎖、という狙いを変えずに。むしろやる事はハッキリしているので迷いはない。マジョルカ戦で払った高い授業料の分、ここできっちりと。その後ロディの投入で、きちんと穴埋めした。

一方のポルトは、最後の最後まで退場した左SBを修正できずに終わった。もちろん点が必要な状態で、後ろを替えている余裕もなかったし、そもそもザイドゥ→ウェンデルを交代したらウェンデルが退場したのでメンツ的にも苦しかったのかもしれない。にしても、ウェンデルの退場から交代の決断まで11分を要した。この空白の時間で、アトレティコの逃げ切りは近づいていった。

最終形


最終形。
ポルトはおそらく、ヴィティーニャが右に降りてヘスス・コロナを使いながら前進。逆側のルイス・ディアスに全てを賭ける、という狙いか。
しかしルイス・ディアスがボールを持つと、この時間帯に足下・スピードに不安のあるぺぺが高い位置を取るしかなく、明らかに苦しい。結局ぺぺが上げたクロスを拾ったコレアとグリーズマンの2人でカウンター完結。決定的な2点目を奪った。
退場者が出て以降のマネジメントでは圧倒的にアトレティコが上回っていた。結局、実質1人でCBをやっていたエンベンバを大外に引きずり出してデ・パウルがボール奪取。3点目で試合を終わらせた。
守備では、10人になってからはまだガソリンの残っているコケを左に出して、デ・パウルを真ん中に配置していたアトレティコ。結果的にデ・パウルが右サイドをランニングして3点目を引き出した。何もかもが大当たりだったし、”休んでいいんだ”と判断する事なくしっかりポジトラで走り切ったデ・パウルを褒めたい。その意味でも素晴らしいゴールだった。
その後エルモソがやらかしてPKで1点献上して、試合終了


●試合結果
勝った。それが全てだ。
試合は生き物であり、一筋縄ではいかない。経験値なのか準備力なのか、シメオネのチームは10対11も10対10も普通の出来事のように過ごしてしまう。
先制点を決めたストライカーが当たり前のようにSBをやり始めるのだ。これは他のチームでも普通の事なのだろうか。"退場出たからお前SBやれ"と。それだけでこなせるものなのだろうか。僕にはちょっと理解できない
配置が変わっても人数が減っても、アトレティコはアトレティコのサッカーができる、というのは明確にチームの強みだ。途中出場のコレアは、25分間で3つのポジションを担当して、得点まで決めた。だけど、普段アトレティコを見ている人からすると、普通の事だ。シメオネのチームにはそういうところがある。
デ・パウルは、コケの隣で中盤中央の守備とは何たるか、を学び続けている。この日は90分間頼もしく守った。前半から事あるごとに相手を威嚇し続け、自らの集中力と存在感を高めていった。ロスタイムには自らのボール奪取からダメ押しゴールまで決めてみせた。
彼はルマル、ジョレンテとは異なる特徴を中盤で出し始めている。これはデ・パウルの能力もあるが、シメオネの配置、起用のマネジメントも光る。大事な試合で必要な能力を100%発揮させる事が出来たのは、この試合だけでなく開幕からここまでの選手起用の結果であった。

グループステージ敗退危機、マジョルカにホームで逆転負け。
もしかするとそういうものがアトレティコには必要だったのかもしれない。大丈夫か?と思われるような状況や、大きな逆境がないと、駄目なのかもしれない。不器用なのでね

サッカーは、世界中にある。どんな方法でもサッカーにアクセスできる時代である。だけど日本に住みながら、朝5時に起きる事にワクワクするサッカーは、アトレティコだけだ。
サッカーは人生であり、アトレティコは人生なのである。
優勝なんてしてしまったもんだから、忘れそうになっていたのかもしれない。アトレティコマドリーは、逆境のチームだ。絶望の中でこそ、光り輝くのだ。だからアトレティコは、その勝利は、こんなにも美しい。贅沢な90分であった。この日のために、こんな日のために、絶望はあったのだ。


12/7
エスタディオ・ド・ドラゴン
ポルト 1-3 アトレティコ
得点者
【ポルト】’90+6 セルジオ・オリベイラ(PK)
【アトレティコ】'56 グリーズマン '90 コレア '90+2 デ・パウル



●ピックアッププレー
本当に良く守った90分間だった。一番危なかったんじゃないかと思ったカウンター対応を取り上げる。51分の場面。

変な失い方ではないのにカウンターを食らっていたこの試合。本当に我慢の試合だった。
後半、やや相手陣内でプレーできる機会が増えていた時間帯に、コンドグビアが跳ね返したセカンドボールを拾われて、ルイス・ディアスが突進開始

画像9


チーム全体でルイス・ディアスにカウンターの先頭を走らせる準備が出来ている。タレミの守備タスクは本当に重要だ

画像10


2対2になる苦しい配置。ルマルが後方を追うが明らかに追いつかない。
ボールに間に合っているのはヴルサリコとエルモソの2人だが、タレミが上手く死角側へ逃げる、が。この逃げる動きが”一瞬遅かった”
全力で戻っていたヴルサリコはほんの一瞬、ボール、タレミ、エルモソの3つを同一視野に収めた。本当に一瞬である。映像で確認してみてほしい。ボールにチャレンジするエルモソを確認した瞬間、視界から逃げていくタレミのマークに切り替えた。

一方のエルモソは、ボールに自分が間に合うか、ヴルサリコに任せるか、こちらも一瞬だけ迷ったが、ボールへチェレンジした。
エルモソはおそらくルマルが頑張ってルイス・ディアスにかなり近い位置まで戻れていた事を確認出来た、あるいは角度的にデ・パウルからコーチングがかかっていた可能性はあるが、こっちからエルモソが突っ込めば最悪抜かれてもPA幅より外へボールを追い出せるし、内側に抜こうとすれば切り返しの時間がかかるし、ルマルがボールに触れる。とても良い判断だった。
ヴルサリコが出て行って交わされていたら絶体絶命だった。エルモソの最高の守備であった。


●ピックアップ選手
オブラク
幾度となく見せたシュートストップは流石の迫力。久しぶりに守護神の活躍を見せてゴール前に立ちはだかった

ヴルサリコ
CBとしてチームに貢献。本当によくやってくれた。特に自信のある外側の守備においては、ルイス・ディアスの突進に対してジョレンテの背後を高速にカバー。1対1の状況すら作らせない対応であった。ビルドアップでは流石の技術。熱く激しく。コレアのゴールの時、泣いているのかと思ったが頬骨を骨折していたとのこと。いや泣いてたのかもしれないけど。痛くて

コンドグビア
3CBの真ん中。スピードで劣りしんどい場面もあったが本当に90分よく我慢した。お疲れ様

エルモソ
空中戦をはじめよく頑張った。球出しで貢献するような試合にはならなかったが、集中力を最後まで保った。PK献上はご愛嬌

コケ
ハードに。熱く。自らの行動で士気を高めた。その必要はなさそうなくらいに皆熱かったけどね。CHを消しに前に出る守備も後方のサポートもいつも通り。勝ったね。おめでとう。

デ・パウル
90分間の継続性を見せた。中央封鎖の強度を保ってカウンターでも毎回敵陣深くでボールに関われていた。チーム3点目は相手をしつこく追いかけて、最後はご褒美が来た。

ルマル
保持がままならない時間帯もさすがのコントロール。ボールが出てくれば単独で抜け出せそうなシーンもいくつかあったが。マイボールの時間が短い試合ながら、らしさを発揮できた

ジョレンテ
ザイドゥとの対人がどうかと思っていたが本人はやる気満々。目の前がルイス・ディアスだった上、CBのカバーもあり守備タスクが多かったが見事に完遂。本当に頭の下がる運動量だった

カラスコ
誰も止められないドリブルで決定機演出。守備ではジョアン・マリオに振り回されてピンチを招くことも。退場はいただけないが、怪我明けの中良く頑張った

グリーズマン
ファーのポケットへ一目散にポジションし、フリーで先制点。単独カウンターで相手CBを引っ張り出してスルーパスから2点目。完璧だった。このために彼は帰ってきた。

スアレス
モチベーションが高そうで、雰囲気を持って試合に臨んだがトラブルで13分に交代。本人が一番悔しかっただろうが、戦いは続く。次こそは

クーニャ
PA内で何度も動き直す根気でボールを引き出そうと試みた。後半には単独突進からのループシュートであわやの場面を作る。ウェンデルを退場させた名演も見事。

コレア
途中出場で右大外の守備とカウンター要員として。退場が出てからはさらに守備タスクを多めに意識したが、90分に見事な単独カウンターで試合を決めた。それでこそナンバー10だ

ロディ
対人守備で良く耐えて、クローズを助けた。ただ、1対1はギャンブルで当たりを引いているだけのようにも見えて少し心配だった。ともあれこの試合では全部当たりを引けたので良かった

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?