避けられなかった完敗 17節 アトレティコvsマドリー(A) 2021.12.12

CLはCL、ラリーガはラリーガ。
さて引き続き崖っぷちの我らがアトレティコマドリーは敵地サンチャゴ・ベルナベウに乗り込むダービーマッチ。CLはお互い同時刻キックオフだったがマドリーはホームでアトレティコはアウェー。負けた時の言い訳はすでに準備されている。たぶんポルトってめっちゃ近いけど


そのマドリーさん。今季は12勝3分1敗で、すでに独走を開始。唯一負けたエスパニョール戦は仕方ないなという内容で割と諦めもついたのでは。
最終ラインからラモスとヴァランが抜けただの、中盤のローテーションがどうだの、外野が騒いでいる事はマドリーにとっては些細な事なのか?と思ってしまうくらいにめちゃくちゃ強い。ここでアトレティコが負けると年内に優勝が決まりそうな勢いさえある。
牽引するのは何と言ってもベンゼマとヴィニシウスの最強デュオ。ダイジョーブ博士の魔改造によってシュート精度が30→95くらいまで爆上がりしたヴィニシウスを誰も止められず、彼の進化によって水を得た魚のようにいよいよ訪れた全盛期を謳歌するベンゼマ。

アトレティコは、ミッドウィークにポルトを乱闘の末背負い投げで倒しての決勝トーナメント進出を決めた。先週のマジョルカ戦のアレはたぶんもう皆忘れているだろう。いつまでも凹んではいられないのだ。
とはいえ引き続き怪我人が多く、レギュラーがみんな健康体だったのは10/3のバルサ戦辺りまで遡る。だから負けてもいいわけではないが、みんな頑張ってるねって話。


●スタメン
映えあるダービーのスタメン。


・アトレティコ
オブラク
フェリペ / エルモソ / コンドグビア
コケ / デ・パウル / ジョレンテ / カラスコ
グリーズマン / コレア / クーニャ

CBのサヴィッチ、ヒメネスのいないアトレティコ。
コンドグビアがスタメンになるので配置は後ほど。グリーズマンとコレアの役割も注目
トリッピアがようやくベンチメンバーに復帰


・マドリー
クルトワ
カルバハル / ミリトン / アラバ / メンディ
カゼミーロ / クロース / モドリッチ
アセンシオ / ヴィニシウス / ベンゼマ

大方の予想通りのベストメンバー。
右WGはアセンシオをチョイス。

スタメン


●前半
マドリーの保持に対し、アトレティコはこの日は後ろ4枚で。

前半1

4-4-2配置。ワイドの対応はWGにSBが、SBにSHがそれぞれマンツー気味に付く。
ワイドの2枚2を突破されないようにしましょう、という意識で。先季の対戦とは違うアプローチに。

マドリーのボール保持は、2008W杯の年岡田ジャパンがラグビーから取り入れたという"接近・展開・連続"を"接近せずに行なっている"ように感じる。"一人で展開・連続"

前半2

モドリッチやクロースがプレスの掛からない低さまで落ちてボールを持つ。この日のアトレティコは、サイドがマンツーのような付き方をしていたので、CHが警戒して飛び出す。そして外される。1人じゃ取れないなら、FWと挟み込みに2人でいく。それでも取れない。2人でいくと、別のところに数的不利が生まれる。じゃあ、どうせ取れないなら撤退しよう。

マドリーの保持はここにポイントがあった。相手に前プレを諦めさせる。試合序盤のマドリーの作業はこれに終始した。
押し込むと、狭いスペースでベンゼマとヴィニシウスがどうにか出来る。アトレティコはドン引きさせられると、アセンシオのミドルシュートが怖い。クロスでPA内の人数が足りなければ、カゼミーロが飛び込んでくる。あらゆる方法で、アトレティコはピッチ上の居心地が悪くなっていった。


・左サイドからの前進が止まらない
特に止められなかったのはマドリーの左サイド。クロースorアラバがボールを持ってSBメンディ、WGヴィニシウスが関わるプレス回避が全く止められない。

前半3

メンディがランニングしてコレアのポジションを無力化して、開いたヴィニシウスへのパスコースを使う。ベンゼマは中央からいなくなってフェリペのマークが曖昧に


先制点を取られず0-0の時間を長く出来ていれば、違う結果を目指せたかもしれないが、主体的にボールを握ってマドリーを崩す、という戦い方は流石に厳しい今のアトレティコにとっては、早々の16分にベンゼマのボレーで先制された事は痛恨であった。


先制のシーン。

先制


コケの縦パスがモドリッチに引っかかってロスト。
カゼミーロの縦パスにベンゼマが近づきワイドへ。
ヴィニシウスが縦にボールを引き出して折り返し。ヴィニシウスの突破を恐れてか、不用意にラインを下げたアトレティコ。ポケットにポジションしたベンゼマのボレーが決まった


・アトレティコの前プレは
それにしてもプレスが掛からなかった。CBに不安があるから前方に行ききれない、など仕方ない部分は大いにあったのだろう。マドリーが上手かったのはもちろんだが、侵入を妨げるような効果的な対応を前半を通じてほとんど出来なかった。


・アトレティコの攻撃は
相手のCB2枚+カゼミーロを動かす事が出来ず、効果的なボールが前線に出てこないアトレティコ。スペースが無く、カラスコが生きるようなシーンも一切なく。仕方ないからジョレンテとコレアでどうにかしてくださいという感じにならざるを得ない。一番のチャンスは35分のグリーズマンの枠を捉えたFKだったが、クルトワが立ちはだかった。
マドリーは普段、非保持ではモドリッチが前に出て4-4-2のような配置で守るイメージがあったが、この日は4-5のブロックをしっかり作って縦パスを入れさせなかった。

保持


アトレティコの保持はプレスの外側に終始
マドリーは先に一点取ったのだから尚更、わざわざ前に出て行く必要はなくなってしまった。


●前半終了
上回れる箇所を作れず、狙った構築も出来ず。不用意なロストから早々に失点と、良いところを出せなかった。
マドリーは弱点らしいところもなく盤石の試合運び。アトレティコは後半は選手の入替もあるだろうが、どこまで圧力をかけられるのかを見ていく


●後半
グリーズマンとカラスコをoutで、フェリックスとルマルを入れた。
見ている側からしても入れ替えるならその2箇所かと思えたので順当だが、開始から替えてきた。
グリーズマンはスペースが与えられず、相手を押し込んでカラスコの突破を使う、というシーンもなかったので思い切って替えた。

マドリーも早速交代。ベンゼマ→ヨビッチを替えた。そういえばベンゼマは負傷明けだった。90分はやれない状態だったのだろうか。とてもそうは見えないところが彼の充実ぶりを表している。


アトレティコは非保持は4-4-2、というか4-4-1-1に微妙に変化。フェリックスはポジトラの起点になれる位置に立っててね、という感じ

後半


4-4のブロックの左側がルマルにエルモソ、コンドグビアと、コケの介護が必要な環境になり、早速48分にボールを回されてピンチを招いたが仕方ない部分


保持は低い位置では3-4-2-1風で前進し、ラストサードまで進むとネガトラ対策で2-3-5に近い形で構える

ネガトラ


エルモソが中盤ラインに出てきてネガトラ対策


・フェリックスが作る突破口
後半開始から3回程、フェリックスのところでシュートを打てるチャンスが作れた。つまりフェリックスの良さとはこういうところにあるのだろう。守備組織を準備されても、ブロックの内側でボールを受けられなくてもこじ開けられる、という能力は確かに異質だ。天賦の才がある。その才能の有効な生かし方が未だにわからない、というのが悩ましいが。
侵入出来ない、突破も出来ないというこの日のような試合で、とりあえずフェリックスにボールを持たせて2人くらい近い距離で関われると何となくPA内に侵入出来る、という可能性は見せた。チャンスを無から創造する事が出来る選手である。神の類だろう。

アトレティコはフェリックスが作る勢いに呼応して、全体で前線からのプレスが掛かり始める。この時間帯に同点にできるなら全てが上手くいったのだが、そこでやらせないのがマドリーの強さである。


・2点目
ここで前がかりにプレスを掛けたいアトレティコだが、背後を使われて2点目を失った。ここのプレーはピックアッププレーで紹介する。

0-2になってからアトレティコはスアレスとロディを投入。
マドリーはここから先もきっちり守備ブロックを守り続けた。

撤退

4-1-4-1で綺麗な撤退。
奪ったら得意のプレス回避で敵のいないエリアにボールを運ぶだけ、という試合展開に。そのままじわじわと試合を殺されていった。



●試合結果
ダービーマッチは痛恨の敗戦となった。1試合の未消化はあるが、これでマドリーとの勝ち点差は13。
ラリーガでの連敗は18-19シーズンの2月3日ベティス戦、2月9日マドリー戦以来の約3年ぶりとなった。

このレビューだけで"仕方ない"と何度書いただろうか。それくらいにアトレティコは満身創痍で、そして実力差は明白であった。
交代策にしても、攻撃的なカードはかなり限られており、「じゃあどうすれば勝てたのか」と聞かれても答えに困ってしまう。どうしようもなかった、と回答して良いものだろうか。駄目だと思うがこの日に関してはそう思ってしまった。

マドリーは保持してもしなくても、ビルドアップしてもカウンターでも正確で効果的であった。今現在このチームよりも良いサッカーをするチームが世界にいくつあるだろうか。試合後にシメオネが”マドリーは私が好きなプレーをしている”と言っていたが、気持ちはとてもわかる、この試合を見て同じ感想を持った。今マドリーはアトレティコの何歩も先を行っている。


・アトレティコのポジティブな要素は
アトレティコの良かったところは、良くないなりに守備組織に矛盾が少なかった事はあげておきたい。コンドグビアにしてもエルモソにしても良くやっている。スピードがないからカウンターに晒されるのが怖い、だからラインが下がってしまう、などは能力の問題であって責めるポイントではない。怒鳴っても足は速くならない。
メンディが内に侵入してくるランニングで迷わされる、などはあったが、マーク対象を離して自由にボールを出し入れされるような事はなかったし、クロースとモドリッチからボールが取れないのは別にアトレティコだけの問題ではない。世界中のクラブが彼らからボールを奪えずに困っているのだ。
そんな理由で、この試合のレビューは”仕方ない”という表現が増えた。当たり前だが"仕方ない現状そのもの"が悔しい事には変わりない。非常に悔しい敗戦だった。


先季互角に戦えたライバルにボロ負けするのは心にくるが、どうにか乗り越えていかなければいけない。


12/12
サンチャゴ・ベルナベウ
マドリー 2-0 アトレティコ
得点者
【マドリー】'16 ベンゼマ '57 アセンシオ


●ピックアッププレー
・甘かったライン間の管理
57分のマドリーの追加点をピックアップする。
簡単にやられてしまった57分の2点目。マドリーのゴールキックに前から寄せていくアトレティコ。

画像10

しかし、ヴィニシウスとアセンシオにピンを刺され、最終ラインと中盤ラインの間がガラガラに空いていた。ここに侵入したクロースへのハイボール。クロースが頭でヨビッチに落とした時点で絶望の配置である

画像11

大外のヴィニシウスを使われ、逆サイドから入ってきたアセンシオがフリーで待っていた。
このプレー、影のファインプレーはカルバハルだった。ミリトンがクロース目がけて蹴るなと判断した瞬間、自身もライン間へ侵入。そのまま走り続け、最後はPA内ニアに侵入して逆サイドのアセンシオをフリーにした。

クロースへボールが入った時点で異様に最終ラインが低く、フェリペが間に合いそうもない状況から対応しようとしたが簡単に外された。この辺りは最終ラインにフルメンバーを準備できなかった影響が出た。CBがそもそも駆けっこで劣るフェリペ、コンドグビアの組み合わせで、ヴィニシウスがタッチラインを踏んでいる状況でライン間を使われたら、ああいった対応になるのは仕方ない。何度も言うが0-0であれば同じ対応にはならなかったはずで、一点を追っているアトレティコとしては抵抗できない場面だった。


●ピックアップ選手

フェリックス
僅かな光明を見せた後半開始15分間。しかし、使い道がこれだけでは厳しい。

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