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扉の向こう

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#心

打ち上げ花火

打ち上げ花火

重たい時計を背負った小人と
軽い時計をポケットに仕舞い込んだカンガルー
それは気まぐれに
季節ごと
代わる代わる
この街にやってきて
時の長さを
自在に錯覚させた

この街の指揮者は
それぞれの心の育みにあわせて
毎日かかさず
タクトを振っていた

永遠に終わらない旅だと
嘆いていた
亀の親子は
沈みゆく夕日を見つめて
この世の定めを知った

スピードが増しているのは
人間の住む社会で
ムク

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まあるい夕日

まあるい夕日

ある日
夕日があんまり穏やかに
微笑んでいたので
自分を許してみた

すると
心の中にあった
許せない。という鎧が
1枚1枚はがれ落ち
清濁ごちゃまぜの
生身の肉体は
羽根を広げ
安堵と慈しみが
身体中を巡った
そうして
自分を縛りつけていた
ジャッチの旗が
みるみる小さくなって
一輪の花になった

橙色のまあるい夕日に
折り合いのつけ方を
包み隠さず
打ち明けた

許さないでいた
月日の悲しみも

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海

海を見ていると
心のわだかまりが消えていく
ここに存在していることを
無条件に肯定してくれているようで
ふっと心がはしゃぐのだ

いつからだろう
ここからはぐれてしまうことを
恐れるようになったのは

太陽をオレンジ色に塗ったら
よく見てみなさい
太陽はそんな色ですか!と
叱れた

大多数の正解が
教室の片隅で萎縮している
あの子を
息苦しくさせていた

周りが笑っていたら
一生懸命笑おう
みんな

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「しなやかにゆらめいて」

「しなやかにゆらめいて」

その心の枝の先から
こぼれた雫
あふれた液体
それは
今日まであなたが
見ないようにしてきた
あなた自身です

あなたのサイレン
あなたのチクチク
あなたのズキズキ
刺さったトゲと
振動と

時折あなたは
消化しきれない
尖った小石を
かき集めて
ジャリジャリ
ガリガリ
裸足で歩いて
そうやって
自らの痛みを
わかったつもりになって
同じところを
ぐるぐる回って
そうやって
一進一退
地上の上を歩

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「風の遣い」

「風の遣い」

君は
幸せを運んでくるために
生まれてきたんだね

幾年も歩き続けて
やっとわかったよ

時にもがき苦しんで
時に笑って泣いて
やっとわかったんだ

空はどこまでも突き抜けて
海は遥か彼方へ続いて行く

今では当たり前のように
ぼくの隣にきみがいて
晴れの日も
雨の日も
同じ空の下
ふたつの心は
思い思いに
うたっている

天使なんて
何処にもいやしない!
なんてニヒルな煙草に
酔っていたら
幸せ

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屈託のない心

屈託のない心

心が笑っていた
心が泣いていた
なんの屈託もなく
ひたすら素直に

心が嬉々としていた
心が悲しんでいた
なんのためらいもなく
ひたすら真っ直ぐに

溢れ出た感情は
愛に満ち満ちて

ことばより先に
心が感知して
愛という
捉えどころのない
問いに
僅かに頷いた
瞬間をみた

架空と現実の狭間で
行き来する
フィクションも
心の書庫で
時折目を覚まして
ノックするけれど

ほんの数秒の
きみの笑顔

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