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キャリアのモヤモヤを突破した学びと家族の後押し<藤野裕道・後編>


人生に波はあるが、今振り返ると全てが自分にとってプラスの出来事!(藤野さん談)

相談に応えられない自分に落胆

――もともと心理関連のことに興味があったんですか。
全くなかったです。広島出身、京都で大学時代を過ごし、名古屋で就職しました。就職したのは百貨店。医療やメンタルヘルスとも無縁の職場でしたね。売場に立つところから、予算の管理、販売促進とさまざまな仕事を経験し、充実していました。

そんな会社員生活の中で労働組合の活動をして、書記長まで勤めたんですが、組合員(社員)の相談に応えられなかったんです。さまざなトラブルや悩みに対して全く打つ手がなくて…。何もできない自分が不甲斐ないと感じました。それでメンタルヘルスについて学んでみようと思いました。

――勉強家ですね!
確かに、もともと勉強は嫌いじゃないですね。それで日本メンタルヘルス協会で勉強してみたら、衝撃を受けました。教えてくださった先生も魅力的でしたし、これまでに知らなかったことばかりで。何より「心」を学ぶことで、直接人を幸せにできる可能性があることに強く惹かれました。

――ようやく、“メンタルヘルスの世界”と出会ったわけですね。でもスクーリングだけで、それ一本を仕事にしようとはなかなか思い切れないですよね。
学んでいるときは、具体的に独立を思い描いていたわけではありません。ただ自分の中で新しい視点や知識が増えていくのが、うれしかったぐらいです。

一方で、会社員としての展望が持てなくなっていた時期でした。私の在籍した百貨店は試験によって昇進していくのですが、次の試験で昇進を目指す気持ちになれませんでした。31歳。会社のこれからの仕事に興味や熱意を持てなくなっていたんです。それならまずは国家資格の精神保健福祉士を取って、プロを名乗れるくらい勉強しようと思いました。

契約社員から個人事業へソフトランディング

――おお、また勉強!国家資格の勉強って大変ですよね?
私の正直な考えを会社に話したら、ありがたい計らいで、契約社員にしてもらえたんです。働き方を変えて、残業していた時間を勉強に当てられるようになりました。突然退職して勉強だけ、というのは得策ではないですよね。その結果、2年後に資格を取得できました。

――でも、個人ですんなりと仕事に結びつくタイプの資格ではないのでは?
契約社員でありながら、スキルを活かした社内の研修などを担当させてもらい、4年後に独立した後も、そのままその仕事を任せてもらえました。契約社員時代に、少しずつ外部の仕事もいただけるようになり、独立が後押しされたと言った方が実態に近いかもしれません。最初から独立や起業の野心があったわけではなく、興味関心の変化や学びの先に、独立のタイミングが来た、という感じです。

だから本当にラッキーだなと思うし、理解して応援してくれた前職の会社にありがたいとも思うし、こんな形でフリーランスを選ぶことは少ないだろうと思います。そもそも個人で、企業向けにメンタルヘルスのさまざまなコンサルティングやサービスを提供している事業者は、少ないと思います。

自分と家族の生き方を肯定できるキャリア

名古屋まつりで信長に!!!

――とはいえ、会社員の立場を辞めるときは不安はありませんでしたか?男性だと“嫁ブロック”=家族からの反対とか、よく聞きますが…。
どっちかというと逆ですね。当時もう結婚していたんですが、妻が会社員としてしっかり稼いでいたので、生活はどうにかなるだろうと。妻も応援してくれました。

実は独立の前後に妻の病気が発覚して、結構真剣に生きるということを考えなおしたんです。夫婦で人生に向き合ったら、本当にやりたいことをやるべきだと思ったし、働き方やお金についても、考え方が変わりました。だから、夫婦ともごく自然に新しい挑戦に進んで行けたのかもしれません。

――色んな意味で羨ましい…。素敵です(涙)。今後の展望はありますか。
法人化して、自分と並んで歩んでくれるような人材を育てたいです。規模を大きくしたいというのではなく、覚悟を持ってメンタルケアの仕事をしたいという人の後ろ盾になりたいと思うんです。心理の仕事は、人間力がそのまま生かせる仕事なので、私とは違う個性を持った人が、私にはできないやり方で、多くの人の「心」をサポートできたらいいな、と。副業では成長のチャンスが少ないし、かといってこういった事業を展開する企業はあまりないので、その受け皿になりたいと思いますね。

自分が何らかの理由で働けなくなったり、仕事がなくなってしまう可能性はいつでもあるので、それはいまだに不安です。でもそれは働く人、皆一緒ですよね。不安はあれど、自分のやりがいや成長を感じる仕事ができている充実感の方が大きいですね。“人間”を相手にする仕事は答えがないので、難しくて、厳しくて、面白くて、幸せです。


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