どうして愛は、こんなに不格好なんだろう。　　又吉直樹「劇場」

　人を好きになるのは、きっと切実な欲求を私達が抱えているからだと思う。
性欲や子孫を残したいという本能よりもっと切実な、誰かと一緒にいたいという思い。
たとえば手をつないで歩く時、
たとえば同じ毛布にくるまって眠りに就く時、
たとえばふたりふざけあって過ごす時、
買って帰ったたこ焼きを分け合ったり、
「ここが一番安全な場所だよ！」と言われながら抱き締められた時、
その手の感触に、肌のぬくもりに、一緒に過ごす時間に、頬張るたこ焼きに、髪の匂いにその切実な思いは満たされ、幸福に変わるのだ。
私達はきっと、探している。
この世界のどこかにいる、“もう半分”を。
でもそれが、いびつな者同士がくっついてしまった場合、
待っているのはきっと―――