第3世代 育成
リビング。
「あれ?
俺といくつ違うんだっけ?」
「僕ですか?
今年で27歳ですから…」
「うそ?!
まだ27なの?
俺と20も違うんかい!」
「そうですよ」
「あれ?
ひと回りじゃなかった?」
「先輩、残念です。
1周半してますね」
「別に改めて、
言わなくてもいいんだよ」
「年号も違いますし」
「追い打ちをかけるな!」
「先輩。
また昭和の面白話、
教えて下さいよ」
「お前、ちょっと昭和を、
馬鹿にしてるだろ?」
「してませんって。
ほんとに面白いじゃないですか。
前回の何でしたっけ?
あの人形…
キャベツの赤ちゃん?」
「キャベツ畑人形だよ!
ちゃんと覚えろよ。
俺が子供の頃、
婆ちゃんちにあったって話だろ」
「そう!それです!
どうして赤ちゃんが、
キャベツ畑から生まれるなんて発想に、
なるんでしょうね?」
「まあ、アメリカだからな。
制作者が親に、
そう教えられて育ったらしい」
「コウノトリが運んでくると、
同じですかね」
「それはいい例えだな。
コウノトリ説はドイツ発祥らしいし。
というか国が違えば、
価値観も考え方も、
変わるってことだ。
お前、生首育成ゲームって知ってる?」
「何すか、その名前からして、
物騒なゲーム!」
「やっぱり知らないか。
韓国のゲームなんだけど、
日本でもちょっと流行ったんだよ」
「それは、どんなゲームですか?」
「簡単に言うと、
植木鉢に生えてる生首を、
観葉植物のように育てるゲームだな」
「こわっ!
想像しただけで狂気ですけど!」
「可愛がってるのか、
面白がってるかはわからんが、
会社でやってるやつ結構いたなあ」
「何が流行るか、わからないですね」
「日本だって、シーマン流行ったろ?」
「何ですか、それ?」
「これも知らないのか~。
シーマン2もあるんだぞ」
「1を知らなければ、
2も知りませんよ」
「まあそうだな」
「それは何です?
ゲームですか?」
「そう。
これもゲームで、
人面魚を育てるゲームなんだ」
「たびたび、すいません。
人面魚って何ですか?」
「そこから?
このジェネレーションギャップ、
キツイわ~。
人面魚ってのはどこぞの県の、
お寺か神社の池に、
ちょうど額の辺りに、
顔っぽい模様がある錦鯉がいたんだよ」
「こんにちわー!の人ですか?」
「まさのりじゃないよ!
池の中にあれがいたら怖いだろ!
顔の模様のある鯉だよ!」
「そっちも怖いです」
「まあ、まあな。
ネットで検索してみ」
「わかりました…人面魚ですね…
怖っ!!
顔が劇画タッチじゃないですか!」
「そうなんだよ。
それを見るために、
人がわんさか押し寄せたらしいんだ」
「人ってわかりませんね」
「それでだ。
その人面魚を育てるゲームってのが、
その人面魚ブームの約10年後に、
発売されたんだよ」
「物好きですね」
「そうだな。
そしてまたこのシーマンが変なのは、
大きくなると魚じゃなくなるんだ」
「?
言ってる意味がわかりませんけど」
「最初は魚なんだけど育つと、
爬虫類になったりするんだよ」
「進化の木みたいですね」
「よく知ってるな。
そうなんだよ。
魚から両生類。
両生類が爬虫類みたいな感じに、
進化するように作られてんだよ」
「ちょっと興味が湧いてきました」
「やるとハマる人はハマるんだよ。
何にも起きない日もあるんだけど、
まずシーマンとのお喋りが楽しんだ」
「え?!
シーマンって喋るんですか?!」
「あれ?言ってなかった?
説明したつもりで話してたけど」
「初耳です。
人面魚が喋るって、
怖さMAXじゃないですか!
まさのりの額に、
タカシの顔があるくらい!」
「錦鯉をイジるんじゃないよ!
でも顔はそんな怖くないんだ。
キモカワっていうのかな?
キモカワわかる?」
「気持ち悪いけど、
可愛い要素があるってことですよね」
「そうそう。
シーマンは劇画調の人面魚と違って、
何ていうか…まぬけ面なんだよ」
「はげてるんですか?」
「まさのりから離れろ!
間抜け面ってのは、
締まりがないような顔のことだよ。
ようはおっさん顔なの。
すんげえ、ふてぶてしい顔してんだよ。
検索してみ」
「シーマンですね…うわっ!
顔デカっ!
できそこないの人魚じゃないですか!
これ!」
「それが喋るんだ。
こっちが言った言葉を理解して、
返事をしてくるんだ…
また言い方もふてぶてしくてなあ」
「その時代にそんな高度なAIが、
もうあったんですね」
「ちょっと違うかな。
AIとは違う手法で、
人工知能っぽく見せてたが正しいかな。
だから答えられなかったり、
返事しない言葉もあったんだよ」
「なるほど。
AIを使わなくても、
会話してる感じは作り出せるんですね。
学習しました」
「よし。
じゃあ今日はこれくらいにしておこう。
え~と、セーブと」
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お疲れ様でした。