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【ふしぎ旅】貝喰の池

 瀧澤山善寳寺は山形県鶴岡市にある曹洞宗の寺院である。

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 その歴史は古く、およそ1200年前の平安時代までさかのぼることができ、龍王殿、五重塔など、様々な文化財を有している。

 この寺の由来として、次のような話が残っている。

 平安時代中期、天台宗の妙達上人は、龍華寺という草庵を開いた。これが善寳寺の前身であると言われる。
 ある時、妙達上人のところに、龍が現れた。
 龍は「故あって龍の身となったが『法華経』の功徳を受けたい」という。妙達上人をそれを聞き『法華経』を読誦した。
 龍はそれを聞き、願いが叶ったと、「貝喰の池」へと消えていった
 その後、1309年、善寳寺開祖の峨山禅師が、龍華寺跡で坐禅をしていると龍が現れたという。
 禅師が「三帰戒」を授けると龍は貝喰池に消えたと伝えられている。
 さらに峨山禅師より七代後、太年禅師が1447年、龍華寺を復興し名を善寳寺と改めた。
その時にまた、二体の龍が現れ、戒道名を欲した。
太年禅師が名を与えると
 「我、八大龍王の一人なり、ともなえるは第三の龍女なり。妙達上人、峨山禅師、太年禅師と、様々な功徳を受け、非常に喜ばしい。未来永劫に渡り、この寺を守護しよう」と言って貝喰の池へと消えていった。
 太年禅師は、その後、龍王殿を建立、また奥の院の貝喰の池に龍神堂を建て、龍神様をお祀りし、今日に至る。

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何度も現れ、寺の守り神となった龍神様が身を置いているという貝喰の池は、本堂より10分ほど山道を歩いたところにある。
 山のふもとにヒッソリとしている、その池は神秘的な様相で、確かに龍が潜んでいると言われても納得しそうだ。

 もっとも、現在では、この池を訪れる人は、龍神様のご利益にあやかりたいというよりも別の目的の者が多い。

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 それは、この池に住む鯉である。
 この鯉、1990年に一躍有名になった人面魚である。
 と言っても、模様が人の顔のように見えるというものだが、それにしても珍しい。

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 おりしも、都市伝説で人面犬がブームになっていた頃、人面犬とは違い、こちらは実際に見ることが出来るのだから、一躍メディアで大きく扱われたのを覚えている。
 それから30年たった現在、鯉がその当時のものかどうかは分からないが、今でも人面魚は、この貝喰の池におり、それ目当てでくる者が多いのだ。

 鯉は滝を登って龍となる。まさしく、龍神伝説があるこの池にふさわしい存在と言えよう。

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