シェア
ふたしき
2021年11月23日 00:03
「ごめん。俺、好きな人いるから」「そうなんだ……じゃあ、仕方ない……よね」「それに、君とは合わないと思うんだ。その——世界観が」「なにそれ……」 唖然とした表情の女子。これ以上かける言葉もないと思って、無言で立ち去った。なるべく早く、その場から離れたかったから。 世界観が合わないというのは、別に言い訳のための抽象的表現というわけではない。 幼い頃から何故か、俺には世界が歪んで見えた。
2021年11月20日 10:54
傘をひらけばいつも雨。 それも土砂降り。 傘をさそうがささまいが、どのみちびしょ濡れ。 だから僕は傘を使わない。 雨が降るなら降ればいい。たとえそれが止まない雨だとしても。「あんたまたずぶ濡れじゃないの! 傘を使いなさいって言ってるじゃない!」 お母さんが喚く。「仕方ないよ。傘の中も雨なんだから」「そんなわけないでしょ! いい加減うそはやめなさい!」 僕はぐしょぐしょになった
2021年11月15日 21:32
「それにしても、随分と遅い到着じゃないか。ウーフィ」 燭台公は腰に手をあて、宿題を忘れた生徒を咎める教師のように狼を見下す。骸骨少年は恐る恐る、目の前の燭台頭に声をかけた。「あの、あなたが燭台公ですか? ぼく、風船みたいな女の人にあなたに会うように言われて。ぼく、道に——」 「なんだって? 君が少年を連れてきたわけじゃないのか」「道に迷ったんです。ここに来れば……貴方に会えばどうすればいい