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歌集を出して欲しいネット歌人シリーズ10 小泉夜雨

こんにちは、匤成です。嫌な雨が続きますね。皆さんいかがお過ごしでしょうか? 今日、ご紹介する記念すべき10人目のネット歌人は小泉夜雨 ( こずみ やう )さんです。( ツイッターURL )

実はアカウントをよく見るまで、”こいずみ”さんだとばかり思っていました。夜雨も”よさめ”かなぁ? そういう言葉は知らないけれど、それはそれで素敵だなと。小泉さんの以前のアイコンが「芝生に寝転がっている女性」で、明るい歌が多かったので、勝手にそんなイメージを抱いていました。そんな小泉さんの特徴は、独り言だと思います。

魅力その1.明るい「ぽつねん」

下に挙げるのは、最近の歌です。

題詠「砂」
海の向こうにも海がある 訣別は砂をはらって歩きだすこと

4句目以外の部分にポジティブな印象があって、全体的に前向きな感じがします。「砂をはら」う行為は、自分にはもう関係がない、諦めたということを意味しています。作中主体が見ている海とは別に、相手には相手の行きたい海がある。一字空けで隔てられた2つの文はそれぞれ正しい。その一字空けによって、2人の関係にできてしまった”明確な隔たり”がいっそう強調されているように感じました。

題詠「海老」
せわしない世界おやすみ そういえば海老はまばたきするのかしらね

これは小泉さんご自身、2020年上半期ベスト4首に選んでおられます。おやすみ前の読み聞かせのような口調に、二句とは一見関係ない下の句の意外性。自分が海老のように丸まったから、突然に思い出したのでしょうか。面白いと思いました。

魅力その2. 寂しい「ぽつねん」

題詠「椅子」
やはらかに混ざるノイズと週末の雨の予報を聴いてゐる椅子

家人か近所の音がしているけど、ノイズとあるのであまり聞きたくない音、不穏な音なのかもしれません。そこに雨の予報の追い打ち。私は、主体が椅子を後ろ向きにしてまたがり、気怠そうに座っている場面を思い浮かべましたが、あるいは飲み物を取りにいって戻ってきて、椅子が聞いていたであろう音と天気予報。注視してみると平仮名の部分は、丸みを帯びている旧かなを使っています。

不穏な状況をあまり深刻にさせることなく、寂しいよと言ってみる「ぽつねん」といった感じがあります。本当に「ぽつねん」としているわけではなくて、明るく振る舞って隠しているイメージがします。

題詠「兄」
帰らない兄を埋葬するやうにすべての本に埃降り積む

亡き兄とも読めるし、この部屋にはもう帰ってこない、結婚、就職という形で実家から巣立ったのかもしれません。”お兄ちゃん”という1つの立場から、誰かの夫、社会人という違う立場ができた男性の、妹としての寂しさ、そこにある本に降り積む埃のような思い出たちを静かにしまう。兄に対するちょっとした怒りも垣間見ることができました。

小泉さんは恋歌も魅力的です。ライフスタイルな歌だけではなく、恋歌ももっと読みたいなと思いました。ぜひ皆さんもフォローしてみてください。匤成でした。



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