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【HOKUSAI】ライト層にも届くとっつきやすい時代劇。

あんまり時代劇って好みじゃないんですけど、主演のふたりの演技が観たくて足を運びました。

柳楽くんは誕生日が1ヶ月も違わないので勝手に親近感がわいてるんです。眼力が半端なくて、ちょっとねっとりしゃべる感じが癖になりますよね。

田中泯さんは【メゾン・ド・ヒミコ】と【鉄コン筋クリート】位しかみたことがありませんが威圧感がハンパない。

ネズミが立ちションしながら「こいつとはしょんべんするだけの仲になっちまったなぁ」的なセリフを言うんですが、老いというものに対してすごく恐怖を感じて強く記憶に残っていました。


絵を描くということ


たまたまこの作品を観る少し前にデッサンのワークショップに行ってきたんです。

普段仕事では手作業でものづくりをしてるんですけど、瞬間的にパパッと仕上げていく感じなんです。逆に絵画って、どんどん重ねて重ねて1つのものをじっくり作り上げていく感覚なのですごく新鮮でした。

新鮮プラスめっっっちゃ疲れた。単なるデッサンでもしんどいのに、自分の作品を作るとなるともっともっときついんだろうなって。

そう感じた後だったので個人的にはすごくいいタイミングで観ることができました。

そんな経験を通した上で見ても、この映画の中では画家たるものって部分がきちんと描かれていたように思います。

描くことでのみ自分を表現できるからこそ、何が起きても魂を削ってでも絵を描き続ける。その覚悟や情熱をふたりの演技が説得力をもって表現してくれています。

特に響いたのは描きたいものを描くんだという北斎のスタンス。
色んな理論が生まれ、膨大なデータが解析できる今、新しいアイデアを考える時に市場のトレンドやニーズを重視してしまいがちです。ですが、案外このシンプルに自分がやりたい事をやるという軸も魅力的なものを作り上げる上で必要なのかもしれません。


良い意味でも悪い意味でもライトな映画



さて、具体的な中身についてですが…。
今回のストーリー、史実とは異なる所がちらほらあるようです。歴史がすごく好きな方からすれば違和感があるかも知れないですが、この適度なフィクション具合がすごく観やすくしてくれているように感じます。

セリフひとつとっても適度に現代風で、一瞬立ち止まって考える必要なくすんなり頭に入ってきます。

こういういったひと手間・工夫のお陰でとっつきやすい時代劇にしてくれているのだと感じました。
主演のふたり以外にも阿部寛や永山瑛太etc.豪華なメンバーなので、幅広い人に観てもらいたいという狙いもあるのだと思います。


もうひとつ感じたのはめちゃめちゃ演出すかしてるなぁ、と。

ラストシーンしかり、種彦死後に娘と江戸を逃れる道中しかり。海外の画家にも影響を与えた葛飾北斎の映画ってのでジャパニーズクールムービー的路線を目指しているのかもしれませんね。
でも嫌味だったりスベってたりしては無いかな?って印象です。


そこまで尖ったものではないからこそ残念ながら当たり障りのない出来になっているので、☆3.0/5.0ってとこでしょうか。でも観て損する作品じゃありませんよ!田中さんの雨に打たれるシーン、柳楽くんの海でのシーン、それぞれふたりの良さが存分に味わえる作品になっています。

串だんごなんか食べながらお茶すすってたい感じです。ぜひどうでしょう??

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