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雑記やエッセイ

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日々暮らしの中で感じたことを書いています。完全に個人的な日記だったりメモだったり。個人の感想に近いです。
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#雑記

父と私、そして娘

父と私、そして娘

そういえば、私の父もそうだったのだ。今の自分がいるのは、あの父がいたからではなかったか。

つい先日、NHKの朝の連続テレビ小説『虎に翼』の中で主人公の虎子の父が病床で娘に過去の失態を次々と暴露し家族に謝るという、切なくも面白いエピソードがあった。

「こんな情けない父さんで悪かった」という父。

それに対し、伊藤沙莉演じる娘の虎子は苦虫を噛み潰したような顔をし続けるも、最終的にはこう言うのだ。

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新しいテーブル と向田邦子の名エッセイ

新しいテーブル と向田邦子の名エッセイ

夫と結婚して良かったと思うことの一つに、ものを選ぶ価値基準がほとんどにおいて似ているというのがある。好きなものが似通っていると言うよりも、よほど気に入ったものでない限り不便でも買わない、買う時には金額は気にせず20年先も使いたいきちんとしたものを選択するところだ。つい最近結婚5年目にしてようやく納得のいくダイニングテーブルを見つけて注文をした。今は建築士でもある夫が大掛かりなDIYで仕上げた無垢材

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永福町で過ごした日々の記憶

永福町で過ごした日々の記憶

今から約10年前、東急井の頭線の永福町駅から徒歩数分の場所で一人暮らしをしていたことがある。

渋谷にある広告代理店に勤務していた二十代後半の頃のことだ。その前は池袋に住んでいたが、通勤の利便性となんとなく縁起のいい名前の駅名に惹かれてその地を引っ越し先に選んだ。

駅前の商店街を抜けた先には「東京のへそ」という別名を持つらしい大宮八幡宮、その奥には和田堀公園があり時々健康のためにランニングをした

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10/18の日記 失って手に入るもの

10/18の日記 失って手に入るもの

今日は朝から野暮用で車で1人病院に行く。本当は写真の成城石井のピザトーストが食べたいのだけれど、最近はグラノーラにヨーグルトをかけるのにはまっていて(手軽だから)今日もそれを食べてから家を出る。
麻酔科医に3年前の手術のときはどうでした?と聞かれて初めて「そうかそんなこともあったっけ」と気がついた。当時も身内にしかそのことは言っていなかったけれど、コロナ禍に突入したばかりの2020年の冬に婦人科系

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秋の晴れの日に、1年前の日記を読む

秋の晴れの日に、1年前の日記を読む

久しぶりに一年前の日記を読み返してみると、久しぶりの社会復帰(その頃しばらく仕事をすることから離れていたのだ)に期待と不安を感じている自分の言葉があってとても驚いた。

仕事はうまく行くのだろうかだとか新しい環境で周囲に馴染めるかだとかこれまでのように映画鑑賞や読書ができなくなってまた自分を見失うのではだとかそんなようなことである。

一年が経ち、今の私が当時の自分に言葉をかけるのならば、今はあの

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春の涙とホットコーヒー

春の涙とホットコーヒー

コーヒーの香りは穏やかで、外の空気は甘いのに、私の気分は苦かった。

適応能力だけはあった若き頃の私はそれなりに反抗心を燃やしながらも、この窮屈な社会には溶け込む事ができた。
それでも30歳を迎える頃にはあらゆることに疲れ切ってしまっていた。知らないうちに自分自身も見失ってしまい体調を壊してしまったこともある。

そんなことだって私にとってはもう遠い昔のことである。過去の自分はいつも外国の旅で捨て

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よく晴れた秋の日の朝に、アイスコーヒーと共に

よく晴れた秋の日の朝に、アイスコーヒーと共に

長かった夏が過ぎていつのまにか秋に突入していた。これを書いている今は秋晴れの10月の土曜日の朝の9時。

とてもよく晴れていて、窓からは太陽が燦々と部屋に降り注いでくるし、空気はさほど冷たくもなく半袖で過ごせそうな陽気だ。

いい加減温かいニットなども着たい気分であるが、そうなったらなったで夏が恋しくなりそうだ。

だって、私は大好きなアイスコーヒーが1番美味しい夏が、季節の中で1番好きだから。今

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3年で、ようやく乗り越えられる気がしてきた

3年で、ようやく乗り越えられる気がしてきた

人は3年ぐらいあればだいたいのことは乗り越えられる。

そう思うようになったのは、紛れもなく今の私が肌で実感しているからだ。

たとえ長い期間、間違ったことばかりに邁進してしまい、挫折して多くのことを失ってしまったとしても、「どうにかしたい」とさえ強く考えていれば、案外なんとかなるものだ。

つい先日、3年の結婚記念日を迎えた時に、私は毎年と同じシャンパンを飲みながら、目の前の夫の顔をみて、そんな

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変わらない渋谷

変わらない渋谷

「誰かをフォローするために生まれてきたんじゃないよ。」

2020年12月、書店で目に止まったその文字に思わず足を止めて雑誌に手を伸ばした。

懐かしい雑誌名に、昔と全然変わらない紙の手触り。パラパラめくるだけで分かるコンテンツのボリューム感と今の東京カルチャーの気配を感じるデザイン。

2006年に休刊したマガジンハウス社の雑誌「Relax」の1号限定の復刊号だった。当時1周年を迎えた渋谷パルコ

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かつて子供だった私の20代の時のこと

かつて子供だった私の20代の時のこと

知らず知らずのうちに本音が言えなくなり、好きなことを堂々と好きと言えずにはにかんでしまい、本当はあまり上手く行っていないのに大丈夫だと言っていたり、他人にむかついたり怒れたりすることも表にせずに冷静に自分で「自分をご機嫌に」(この言葉はとても嫌いなんだけど)することが正解だと思っていた。そのくせこちらにあからさまに不機嫌をぶつけてくる相手に遠慮して怒らせまいと気を使うという矛盾的な行為は率先してや

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春の涙とハーブティ

春の涙とハーブティ

春の風はやわらかで、甘い香りがしたのに、私の気分は苦かった。

泣いた理由はわかっていた。
それは明らかに私自身の思いつきではじまったことなのだ。

朝、普段はほとんどみることのなくなっFacebookを開いたからだ。

友人の投稿のコメント欄に、思い出したくない人物の顔を見てしまった。

長年の夢、かつて暮らした国に家族で住み暮らしている。若くして会社を立ち上げ成功し外国へ移住した。努力が運と才

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【2022.2.17の日記】暇なんかないわ、大切なことをするのに忙しくて

【2022.2.17の日記】暇なんかないわ、大切なことをするのに忙しくて

自分の生活やこれまでやってきたことに対して色々と区切りをつける必要があると感じたのはちょうど去年の今頃のことだった。

私は、大学卒業後から途切れなく、約14年間ほど近くフルタイムで何よりも上昇思考を持って働き続けてきた。(転職は何度かしているがこれまでほぼ途切れはなかったのだ。)学生の頃から、「自分は自分で人生を勝ち取るのだ」と思って生きてきた。人と同じでなくてもいいから、自分で納得のいく仕事を

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28歳冬、 渋谷の夜

28歳冬、 渋谷の夜

「あれ?そっちの方が可愛い。さっきまでついてた赤い口紅は男ウケしないから絶対にやめた方がいいよ。思ってたよりも俺の好みの顔かも。」

向かいの席に座っているだいたい30歳ぐらいの、おそらく童顔を隠すためにヒゲを蓄えている妙に白い顔をした男が、猫なで声の10代と思しき女の肩を抱きながら、私の顔をじっと見て言った。

私は男の発言を無視して真顔のまま心の中で舌打ちをし、レモンサワーを一気に喉に流し込ん

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なんでもない幸福な日の記憶

なんでもない幸福な日の記憶

ふとした時に蘇る幸福な記憶がいくつかある。小学校6年生になったばかりの4月のよく晴れた日、中耳炎で学校をやすみ1人ベッドの中で外国の料理番組と外国の画家の絵画番組を夢中になって観た一日。その眠れない夜、リビングに降りて観たテレビドラマのロング・バケーション。大学受験のため母と上京して3泊した兄の池袋のワンルームの狭くて魅力的な都会の部屋。夜に3人で小さなテーブルの上で食べたデパ地下の惣菜を中心とし

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