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浮遊する

どこに向かっているのか、何を求めているのか、解らないままふわりふわりと宙に浮く。

先日伺ったiiba galleryでの辻有紀さんの個展。辻さんを知ったのは、素敵なお宅でモビールの姿をSNSで見かけたのがきっかけ。のんびりと時間の流れなど気にもせず、ただそこだけのなにものでもない空気を醸し出していた。

働いていた時は、galleryとか美術館とかは私からは程遠く、縁遠いものだと思っていた。アートとか芸術とかよく分からないし、そういう独特の雰囲気があると勝手に創り出して、なんとなく足を踏み入れにくいような気がしていた。


私はもともとそういう所がある。
最初から勝手に線引きして、ここは違うかなと思うと素通りする。いわゆる食わず嫌いってやつだ。
食べた時(ここでいうその場所に行ってみた時)、ほら〜やっぱり違ったじゃん…て思いたくないから最初から踏み出してみることすらしないのだ。せっかくの時間を残念な気持ちや不安な気持ちで過ごしたくないし、それをするくらいなら現状維持の安心する気持ちでいたい。臆病だし心配性。そんなの大袈裟だと言う人もいるかもしれない。でも実際そうなのだから仕方がない。

galleryに訪れるなんて過去の私が知ったら本当に驚くだろう。体調を崩して癒しを求めているだけだと思われたらそれまでだけど、実際には休職している間にも新しい出会いや気づきがあったからだ。

最初の扉を開ける一歩は自分が思っているよりもずっとずっと簡単だった。誰かにぽんっと背中を押してもらえたような、そんな軽やかな一歩だった。どの方も優しく、そして温かく穏やかな方たちばかり。

galleryでの時間もまた、温かく穏やかな空気が流れていた。北欧のものらしき深いグリーンのソファに腰掛けて、ゆったりと浮遊するモビールを眺める。初めて体感する不思議な感覚だった。それは、羨ましくもどこか儚げで、でもしっかりと芯のあるそんな姿に私の目には映った。

ふわりふわりと浮かぶモビールは、自由なようでいてきらりと光る天蚕糸でしっかりと繋がれていた。


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