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#人生のおかしみと哀しみ
苺の漬物だけは無理だった社食の思い出
本社はどこですか? と尋ねる社員の群れ
これは罠だと叫ぶ課長を見つめるZoom越しに
苺の漬物だけは無理だった社食の思い出
新人の頭の上で銀のタライが揺れている
町で領収書を配ってるお姉さんたち
アポイントの抽選に外れて留守番する
開かないノートPCとゴミ箱の瞬間接着剤
会議室にテディベアを並べる係
エレベーター表示がバグってみんなで見惚れてる
そこに無ければ無いですねを朝礼で唱和
会議時間を
吊り革での実況はおやめください
きょうも階段から転がり落ちる
駅員が全員うつむいてる
線路で釣りをしてる電車が来ない
赤色灯を光らせたおじさんがひとり
シベリアから飛んできたスカーフに付いた血
セブンの店員さんがみんな青い
口先だけの鳩のこと信じてる
下水から大音響のYOASOBI
クラクションが鳴り止まない町を出る
いま片付けますからと言ったタクシー運転手
「求む」やる気のない方
厚介は逡巡していた。思ってもなかった求人を発見したからだ。
厚介の特徴は「やる気のないこと」である。世間一般ではやる気のなさはあまり評判がよくない。
けれども厚介は意に介してないのである。こんなに世の中にやる気が溢れているのだ。一人ぐらいやる気のない人間がいてもいいんじゃないか。
むしろ、そういう人間がいたほうがバランスが保てるってものだ。それぐらいに考えている。
以前の職場でも彼は、あま
トモナガさんのお仕事
トモナガさんの仕事場は山手線の中だった。
といっても、スリや痴漢などではない。そういうのは、もちろん犯罪であって仕事とは呼べない。
じゃあ電車の運転士? それとも鉄道警察隊か何か? どれもちがう。ほとんどの人は、彼の仕事をしらない。
その日も、トモナガさんは五反田駅のホームにいた。
彼は、とある社章を胸に着けた男をマークして、 男が8両目の4番ドア付近に乗ったのを確かめると自分も隣のドアか
夜の入り口でサボテンは
「暗くなるのが早くなりましたね」
打ち合わせからの帰り道。まだ明るい時間だったので、いつもは通らない公園の脇道に入ろうとしたところでサボテンに話しかけられた。
しまった、と思った。日没前の明るさが残る時間はサボテンの活動時間なのだ。
サボテンは知人にでも偶然会ったかのように話しかけてきて、不意をつかれた僕は、うっかり「ええ」と返事をしてしまった。
「もうすぐ立冬ですからね」
サボテンはす