春風と曲線
この世界は少しだけ曲線を描いていて
いつも君が少しだけカーブの先にいる。
君は春風を髪に受けながらスカートを翻して歩いてく。
自転車の二人組が追い越しても、おばあさんを散歩させた犬が立ち止って
見つめても、宅配の水を載せたワゴンから虹色の水が噴水のように
降り注いでも君は歩く。
パラパラまんがの街を君は歩いてく。ページをめくる気まぐれ。
勢いよく飛ばされそうな日々。
僕はそんな君のあとをずっと追いかけるように歩く。
何度目の春。いつも新しい春。春風に手を振る君。
目に映るものはいつも楽しそうで淋しそうで、割れたビスケットのお祭り。
終点へリピートする電車。飛び立つ路面電車。
すべてが少しだけ曲線を描いていて、僕は永遠に君に追い付けるから。
忘れ物、取りに戻るよ。春風が教えてくれた公園。君がブランコで泳ぐ明日。水飛沫。光る影。
この世界の曲線をずっと覚えていたくて。