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2030年、投資信託の残高はどうなる?

2024年1月、新NISA制度がスタートしました。

投資信託協会の公表データによれば、2024年4月末現在の株式投信(除くETF)の純資産総額は122兆円。2023年12月末現在の106兆円から、わずか4ヵ月で15%も増加したことになります。

もちろん、マーケットが上昇した効果も大きかったのですが、新NISAで資金流入が増加した効果も非常に大きなものでした。

本Noteでは、「2030年の投資信託の残高はどうなっていくのか」、ずばり予想してみたいと思います。


政府の「本気度」は、むしろ将来を不安にさせる・・・

2022年4月、政府は「資産所得倍増プラン」を決定しました。

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/pdf/dabiplan2022.pdf

同プランでは「5年間で、NISA 総口座数を 1,700 万から 3,400 万へ倍増させる」という目標を掲げています。また、「5年間で、NISA 買付額を28 兆円から 56 兆円に倍増させる」とも記されており、政府の意気込みが感じられます。

資産所得倍増プランについて(金融庁資料より)

そして、スタートした新NISA制度。
年間投信枠は最大120万円から360万円に拡大、非課税保有期間も無期限になるなど、大幅な拡充が行われました。

6年前、「つみたてNISA」がスタートしたときは、当時の安倍総理と森金融庁長官のコンビが財務省を説得したと言われています。それでも、上限40万円までしか認められなかったことを考えると、新NISAがいかに思い切った策であるかがわかります。

金融庁だけでなく、厚生労働省も負けてはいません。
日本経済新聞(2024年5月23日)によると、「iDeCoの限度額引上げ」が6月に公表される「骨太の方針」に盛り込まれるとのことです。

こうした資産形成にかかる制度が充実することはすばらしいのですが、充実すればするほど、将来の年金制度に不安が募るのは私だけではないのではないでしょうか。

しっかりと「自分年金」を準備していくことが大切ですね。

今後、投資信託の残高はどうなっていくのか

では、今後投資信託の残高はどのなっていくのでしょうか?
2030年の投信残高を予想してみました。

ずばり、300兆円です。

冒頭でもお示しした通り、2024年4月末現在の株式投信(除くETF)の純資産総額は122兆円です。約6年で投信残高が約2.5倍近くになるという大胆な予想になります。

予想の根拠をお示しします。

❶家計金融資産に占める投信の割合(4.4%→10%)

日本のNISAは、英国のISAを参考にしたと言われています。
英国では、ISAの導入(2009年)以降、個人金融資産に占める株式・投資信託の割合が大幅に増加しました。

新NISAの足元の勢いを考慮すると、個人金融資産に占める投資信託の割合はユーロ圏(10.1%)の割合にまで上昇する可能性は十分にあるのではないでしょうか。

資金循環の日米欧比較(日本銀行)

家計金融資産が、今後も平均5%で増加し続けると仮定すると、2030年には3,000兆円になります。この10%(300兆円)が投資信託の残高になると予想します。

❷NISAの普及率は「キャズム」を超えた!

「キャズム理論」とは、簡単に説明すると、ある商品の普及率が市場全体の16%を超えることができれば、その後その商品は大きく普及する可能性が高まるといったものです。

▼キャズム理論の説明はこちらがわかりやすい!

下図の「アーリーマジョリティ」の人々は「多くの人が使っていて安心できる商品を使い、他者に後れを取らない」ことを望む層と言われています。

では、足元の新NISAの普及率は何パーセントでしょうか?
新NISAスタート直前の2023年12月末のNISA契約者は2,136万人、これを日本国民1.24億人で割ると、約17%となります。新NISAの契約者が増加していることを踏まえると、キャズムを超えた可能性が高いです。

今後さらに普及が期待される新NISAですが、足元で増加しているのは銀行ではなくネット証券です。

「金融財政事情」の調べによると、2024年までの3ヵ月間で、ネット証券5社はNISA口座を約16.2%増加させたのに対し、大手銀行6行のNISA口座は1.8%の増加にとどまっています。

銀行のNISA口座は増えないのか・・・
このテーマは別の機会にレポートします。

❸「金融リテラシー教育」の拡大もプラス材料

2022年4月より、高校において資産形成に関する授業が必修化されました。
また、国だけでなく、地方自治体も「金融リテラシー教育」に力を入れ始めました。

福岡県では、県立高校の生徒を対象に約300回もの出張授業を行う企業の募集を行い、地元金融機関等が応募したようです。

こうした努力の積み重ねにより、20代からコツコツ積立をはじめる人々が増えると考えられます。

リスクシナリオは金融所得課税の拡大(約20%→約30%)

NISAは、「儲け」に対して税金がかからない制度でしたね。
NISAを使わない場合、通常約20%の税率が適用されます。
つまり、株価等が値上がりして10万円利益が出た場合、約2万円税金がかかります。

実は、この20%の税率、30%の引き上げようという議論が行われています。
政府が掲げる「資産所得倍増プラン」の目標が達成された暁には、この引上げが行われる可能性があります。
その場合、富裕層などの投資意欲が減退してしまうリスクがあります。

おわりに

今回は、2030年の投資信託の残高を予想しました。
ずばり、300兆円。

投資信託は、さらなる成長が期待される分野です。
2024年は「貯蓄から資産形成へ」本格的に向かいはじめたターニングポイントの年だったと振り返られる可能性が高いと考えています。

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