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長期経営計画のすすめ はじめに

これから『長期経営計画のすすめ』と題して連載していきます。はじめに、なぜ今、長期経営計画の策定をすすめるのか、その背景から記述していきます。



1.長期的な未来を見通す

私は2000年代初頭と比較し、2020年代に入り長期経営計画が策定しやすくなったと考えています。

私が長期経営計画をつくる上で難しいと感じていることは、企業を取り巻く外部環境を長期的に予測することです。市場規模などは調査会社のレポートなどで大枠を把握できるのですが、それは延長線上での予測が多いなぁという印象です。顧客の価値観の変化や代替製品やサービスの登場、新たな技術の実用化や急激な経済環境の変化など、それらを予測することは至難の業です。

しかし今、世界的な規模で多くのビジネスに影響を与える長期的テーマ、つまりメガトレンドが3つあり、それを見据えながら長期経営計画が策定できると私は考えています。


①SDGs

SDGs(持続可能な開発目標:Sustainable Development Goals)とは、2015年9月の国連サミットで採択された持続可能でよりよい世界を目指すための2030年までの国際目標です。

異常気象などの気候変動が顕著な例ですが、これまで世界の企業が経済的便益を追求してきた結果、社会的便益が損なわれ、世界の持続可能性が困難になることが予測されています。今後は経済的便益と社会的便益を両立させることが重要であり、その取り組みに挑戦することでステークホルダーから支持され、企業成長することが可能になってきています。

SDGsは長期経営計画の策定において未来を見通す有効なテーマの一つとなるでしょう。


②AI(人工知能)

AIとはArtificial Intelligenceを略した言葉で「人工知能」を意味し、人間の言葉の理解や認識、推論などの知的行動をコンピュータに行わせる技術を指します。

自動車産業では安全運転の高度化や自動運転で活用され、ヘルスケア産業では診断の高度化や病気の予知に活用されています。AIはこれからも長期的に進化を続け多くの課題解決に役立つでしょう。雇用の減少やリスク管理など多くの問題も抱えるAIですが、その問題を解決していきながら活用していくことが企業経営に求められます。

AIもまた長期経営計画の策定において未来を見通す有効なテーマの一つとなるでしょう。


③人口動態

世界人口は今後も増加傾向にあり2060年には約100億人になることが見込まれています。アフリカや東南アジアの人口は増加傾向にあります。反面、欧州や中国は緩やかに人口減少に向かうことが予想され、なかでも日本は世界に先んじて少子高齢化社会に突入しており、人口は2048年に1億人を下回ることが見込まれています。

人口構成では世界の生産年齢人口(15歳~64歳)の増加率は、1967年に2.1%であったものの2013年に1.2%に減少、これからは1%を下回ることが見込まれています。日本の生産年齢人口は1995年を8716万人をピークに減少しており、2050年には5275万人に減少すると見込まれています。総人口に対する生産年齢人口の割合では1995年の69.8%から減少し、2050年には51.8%と見込まれています。

人口動態は「すでに起こった未来」として予測しやすく、特にこれから2050年にかけてはこれまでとは異なる変化をもたらすため、長期経営計画の策定において未来を見通す有効なテーマの一つとなるでしょう。


ここまで3つのメガトレンドを紹介してきましたが、近年はグローバルレベルでの感染症の拡大や地政学リスクなど想定外と言われるようなことを経験し、その結果、企業経営においてどのような影響が発生し、どのように対応すべきかを計画できるようになりました。

私はこのように長期的な大きな流れを見通せる今こそ、長期経営計画が策定しやすいと考えています。長期的な目線で他社に先駆けて機会を掴み、脅威に対処することで競争優位を築き、継続的な企業成長が実現すると考えます。


2.自己紹介

長期経営計画の策定や運用には、2001年から勤めたコンサルティング会社時代、2007年から就任した情報通信サービス会社の社長時代、2017年から現在も勤めているコンサルティング会社時代に取り組んできました。コンサルタントとしてクライアントの策定を支援したり、社長や経営企画として自ら実務者として策定し運用してきました。5年から10年間での計画策定と、同時に継続的なモニタリングや毎年のローリングを実施してきました。

長期経営計画は策定することはもちろんのこと、運用においても多くの労力と時間、コストを費やす取り組みです。私がこれまで成功や失敗を重ねながらどのように取り組んできたのか、できる限り実務的に記述していこうと考えています。


3.読んでほしい方々

私は中小企業の経営者、大企業の経営企画、大企業や中小企業を支援するコンサルタントを経験してきました。そんな私の経験を踏まえて連載していきますので、これから長期経営計画を策定しようと思っている、策定しようか迷っている中小企業の経営者の方や、長期経営計画の策定を推進する大企業・中小企業に勤める経営企画、事業企画の方々を読者として想定し記述していきます。

今のところ、下記のような目次を予定しており、1〜2週間に1本のペースで、連載していこうと思います。目次や連載頻度はきっと変わると思いますが、ぜひ楽しみに読んでいただけると嬉しいです。

【目次(案)】

Ⅰ 方針
1.  目的を決める ←次回
2.  期間・更新を決める
3.  体制を決める
4.  スケジュールを決める
5.  アウトラインを決める
Column 事例を調査する

Ⅱ 企業戦略
1.  現状のビジョン・ミッション・バリューを確認する
2.  過去の全社業績を分析する
3.  現在の事業ポートフォリオを可視化する
4.  経営資源を可視化する
5.  メガトレンドを調査する
6.  今後のビジョン・ミッション・バリューを決める
7.  企業ドメインを決める
8.  目指す事業ポートフォリオを決める
9.  成長戦略を決める
10. 新規事業・M&A戦略を決める
11.  一次業績計画を策定する
12.  一次投資枠を設定する
13.  全社一次要員計画を策定する
14. TOPマネジメントを決定する
15.  企業戦略を事業戦略に展開する
Column 事業承継に向けた長期経営計画

Ⅲ 事業戦略
1.  過去の事業業績を分析する
2.  現在の製品ポートフォリオを可視化する
3.  外部環境を分析する
4.  企業戦略を理解する
5.  ミッション・バリューの見直しを検討する
6.  事業ドメインを決める
7.  目指す製品ポートフォリオを決める
8.  成長戦略を決める
9.  売上計画を精緻化する
10. 要員計画を精緻化する
11. 投資計画を精緻化する
12. 損益計画を精緻化する
13. ロードマップ・KPIを決める
14. 事業戦略を企業戦略へフィードバックする
Column 経営計画の先行研究

 Ⅳ 計画完成
1.  売上計画を確定させる
2.  投資計画を確定させる
3.  要員計画を確定させる
4.  採用計画を確定させる
5.  組織計画を確定させる
6.  人材育成計画を決める
7.  新規事業・M&A計画を決める
8.  リスク管理計画を決める
9.  IT投資計画を決める
10.  財務三表計画を決める
11.  ロードマップ・KPIを決める
12.  モニタリング計画を決める
13.  コミュニケーションを開始する
Column 社員がワクワクする長期経営計画

最後に私の著書と副業で経営している会社の紹介をさせてください。


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