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挨拶訪問や会食は不要か?

先日、ある企業の経営者様から、営業活動についてお話を聞く機会がありました。ウィズコロナの環境も踏まえた、今後の時間の使い方に関して、示唆的なお話だと感じました。下記が概要です。

・コロナ禍で主力事業の売上が昨年度比30%減という厳しい状況が続いている。
・その状況下で、ある大手メーカー(同社様とは違う都道府県の所在地)に、自社としては初の取引契約が結べたなど、明るい材料も出てきた。
・同大手メーカーの契約は、ある営業部員の営業活動の賜物。以前から接点のあった同大手メーカーの営業担当者に対し、自社の営業部員が出張等で近くに行った時に立ち寄り、時々会食して近況の話をしていた。それを繰り返しながら、自社の技術に興味を持っていただいたのが原動力。
・経費節減の観点で、社員には会食や出張費用はなるべく控えるように言ってきたが、この事例でそうも言えなくなった。

他者との面会や対話は、目的も目標もないものは論外として、以下の3つに整理されるでしょう。

1.目的あり・目標あり:協業関係を維持する・拡張するなどの目的が明確で、かつ来期の取引条件について具体的に合意する、新規案件に必要な要素のヒアリングを終えるなど、その面会・対話でたどり着きたい具体的な到達点が明確なもの。

2.目的あり・目標なし:情報収集する、関係性を深めるなどの目的はあるが、その面会・対話で何をどう合意するか、どのステップまで進めるかなどの明確な到達点が決まっていないもの。

3.目的なし・目標あり:その面会・対話で何をどう進めて、終了時にどうなっているかの明確な到達点が決まっているが、そもそも何のために行っているかがわからないもの。

1.は例えば、話すべき具体的な内容が決まっている商談での訪問でしょう。
3.は例えば、「その日のメンバーの予定を確認する」「周知しておきたい情報を共有する」など、何を行って終わった時どうなっているべきかの到達点は決まっているものの、それが本当に必要なものなのかどうか疑問な定例会や朝礼などです。「この進め方と内容なら、会議せずともグループウェアに書き込めばそれですむんじゃない?」というイメージです。この場合は、改めて何のためにそれを行うのか目的の明確化と、それに伴って議事進行を見直すなどを行うとよいでしょう。もし、どう見直しても必要と思える目的が設定できないなら、それは廃止したほうがよい場だということになるでしょう。

2.の典型は、具体的な商談の用件はないが時々立ち寄る挨拶訪問、集まって飲み食べする会食、ゴルフなどでしょう。冒頭で取り上げた企業様の会食の例は、まさにここに当てはまります。

菅首相が就任後、通信事業や少子化対策のテーマなどで矢継ぎ早に方針を打ち出し、話題となっています。政策についてはいろいろな意見があると思いますし、その是非はここでは取り上げませんが、確かなこととして言えそうのは「様々な角度から情報収集、検証し、自身の信念に基づいた仮説が方針の裏付けになっている」ことです。このことが可能なのは、以前から準備をしてきたからでしょう。その準備の大きな要素となり得ているのが、以前から習慣としてきた専門家との会食にあるように見受けられます。

これらも、上記で2.に当てはまると言えるでしょう。2.の面会や対話は、それが意味のあるものなら中長期で蓄積すると大きな力となります。また、短期間で成果が出るとは限りません。首相就任が決まってから急に専門家と会い始めても、遅いでしょう。冒頭の企業様も、長年2.の蓄積があったからこそ、大手メーカーのアカウント開設につながったわけです。

ウィズコロナの環境下では、この2.に該当する、ぶらりと立ち寄る訪問や会食などが、やりにくい状況が続きます。ほぼすべての商談がオンラインで可能という話もありますが、2.のような機能は生み出しにくいものです。ソーシャルディスタンスなどに気を付けながら従来通り対面の2.を活発に行うのか、オンラインで2.が可能な環境設定をするのか、各社が試行錯誤で答えは模索中の状況だと思います。

今後、2.の面会や対話の機能をどのように構築できるのか、中長期の事業展開・人材力の観点から、重要な課題だと言えるでしょう。

<まとめ>
目標はないが目的のある面会や対話は、中長期の競争力の源泉となり得る。


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