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管理職の多様性(2)

先日、ある企業様の管理職研修に参画し、その中で社長講和をお聞きする機会がありました。同研修に参加していた同社管理職の皆さん向けに、社長が伝えたいメッセージをお話するという趣旨でした。

同社様の管理職向け社長講和には、以前も数回同席したことがあります。過去の講和と今回の講和で、どのような言葉(ワード)の変化があるか、注目しながら聞いていました。

今回よく聞いたワードが、「多様性」でした。
講話の冒頭で最初に出たワードも、「多様性」でした。
データをとったわけではありませんが、明らかに過去の講和では聞かなかった頻度で、お話の中に「多様性」が出てきました。

社長のお考えとしては、以下の通りです。

・自社の現状では特定顧客への依存度が高く、売上の何割もその企業に依存している。これからの経営の安定化とさらなる会社の発展を考えると、顧客を広げていく必要がある。

・ある事業領域の専業でこれまでやってきたが、同事業領域は間違いなく縮小する。同事業領域で育てた技術を応用し、数年前から新事業に取り組み始めた。これが成果を上げてきているが、まだまだ不十分。会社の維持発展のために、これまで以上のスピードで多角化が必要。

・これらのことを推進するには、新しい発想が必要。新しい発想には、多様な人材が必要。従来はあまり多様化されておらず、一様な人材の登用という感じだった。これからは、今まで以上に国籍も超えて多様な人材を活用していく。

・よって人事制度も変えた。これまではポストが限られ、そのポストに一度昇進すると降職がない硬直化した仕組みとなっていた。ポストを増やして昇進・降職も柔軟に行えるようにした。このことで人材登用の見極めハードルを下げ、多様な人材を登用しやすいようにした。

今回同研修に参加した管理職人材のうち、約2割が女性の方でした。数年前までゼロでした。昨年1割程度でした。いわゆる女性管理職登用も、上記の方針に沿って進んでいることがわかります。

先日の投稿「文言を選ぶ」では、聞き手に訴えたいことについて、言葉を選び頻度高く話すことについて考えましたが、まさにそのことが当てはまる講話内容だと感じたわけです。

そして、多様な人材を登用するために、人事制度の改修という仕組みづくりも行っています。

先日の投稿「管理職の多様性」では、女性管理職の登用比率目標といった形から入るのも、場合によっては有効ではないかということを考えました。そうした形を設定するだけではなく、それを実現させるための具体的な取り組みが必要です。

同社様の場合は、次のような事象が起こっていました。

・一度昇進したら降格させる文化がない。よって、昇進の見極めには慎重になる。
・自社では、その事業の特徴から、ほとんどの部門で事業所に毎日出社することが必要。転勤や配置転換も奨励している。会社としては、女性の登用も男性同様ポジティブに考えているが、(今の世の中の現状から)女性の場合どうしてもライフイベントの事情によって、管理職昇進後に「やはりできない」というリスクが高くなる。
・よって、結果的に一定の役職以上は男性ばかりになっていた。

これを、以下のような流れに変えたわけです。また、海外にも拠点があり、これまで以上に外国人活用も積極的に進めています。

・役職の階層を増やすことで従来の役職者より責任範囲が少し狭い役職を新設していった。これは大きな段差の階段の途中に小さな段差を差し込むイメージで、キャリアステップを小刻みに推進できる効果もある。
・「任せてみて、できなかったら元に戻す」という運用も加えた。
・以前より積極的に(リスクを減らして)役職登用できるようになり、女性がその対象者に含まれることが増えてきた。

「なるべく階層数を減らして、組織のピラミッドを低く平らに」というのが、今叫ばれている組織の一般論です。上記は、ある意味それに逆行する動きに見えます。しかし、同社様なりの方針があって取り組んでいることであり、その結果もよいほうに向かっているというわけです。

・自社の置かれた環境を把握して、自社なりの課題を設定する。
・設定した課題を達成するために、適切な施策を立てて実行する。
・そのことを方針として、適切なメッセージで社内に浸透させる。

同講和からは、こういったマネジメントの要諦を垣間見た感じがしました。

<まとめ>
的を射た方針は、世間のトレンドに逆行することもありえる。


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