自己資本比率の重要性

先日、本コラムにて「財務規律の重要性」というタイトルで、財務面での短期的安全性と中長期的安全性を維持した上で新規投資やM&Aを行うことの重要性を取り上げました。手元流動性比率や流動比率、自己資本比率等で自社の財務規律を定め、その規律を維持する意義について考えた内容でした。
https://note.com/fujimotomasao/n/n63a2cb907777

昨日の新聞記事で、このことに通じる内容を見かけました。
10月27日の日経新聞で「攻めるための財務目標」という記事です。日本電産の永守重信会長の考え方を取り上げた内容でした。同記事では、「バランスシート(貸借対照表)に目標を持つ」ことの重要性について触れています。

永守氏は、自社の成長ステージにて、日立製作所や松下電器産業(現パナソニック)などの企業が、かつて自社の各局面と同じ規模だった時にどんなバランスシートだったかを参考にしていたそうです。すなわち、それらの企業をモデルとしながら、自社のバランスシートの理想を考えていたと紹介されています。

売上高や利益額の目標はどの経営者も立てたがりますが、バランスシートの目標は立てない人が多いものです。バランスシートの目標を立てるということは、冒頭で触れた財務規律を定めることに通じます。

そして、日経新聞の最近のインタビューで永守氏は、重視する財務指標として自己資本比率を挙げたそうです。自己資本比率=純資産÷総資産です。返済義務のない資金調達によって構成される純資産が、すべての資産のうちどのぐらいの割合を占めているかを表すものです。同社の自己資本比率は50%前後で安定して推移しています。同社は、数々のM&Aにも取り組みながら、その一方で自己資本比率をぶれずに一定に保っている。これがバランスシートに目標を持つということなのでしょう。

法人企業統計によると、金融を除く全産業の自己資本比率は現在、43%台だそうです。この数値は、20年前に比べて20ポイントも上がっているそうです。長らく続いた景気拡張による利益を内部留保として積み上げてきた結果でしょう。日本企業は全体的に、稼ぎを投資に回せていないとして批判されることも散見されましたが、コロナ禍で評価が一転しました。米国と比べると産業全体の雇用者数等でまだ落ち着いた動きで推移できているのも、ひとつは自己資本比率を高めていたことにその要因を見て取ることができると思います。

同社は、手がけたM&Aをことごとく成功させてきた実績があります。その同社経営者による「バランスシートに目標を持つ」という示唆には、学ぶべきものが多いと言えるでしょう。

<まとめ>
バランスシート(貸借対照表)に目標を持つ。

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