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雇用形態の制約が消える?

先週の投稿では、今後の就業環境について考えました。時間と場所の制約が減り、個人による裁量、選択、自己管理が求められていくことであろうについて取り上げました。
今日は、雇用形態をテーマに考えてみます。

雇用における、雇う側(企業)と雇われる側(個人)の関係性について、改めて整理を試みてみます。
企業の視点としては、自社の事業に関わる人材を下記のように分類できるでしょう。

・役員(経営と一体の立場)
・正社員
・非正社員
・業務委託契約者
・協力会社社員 ・・・など

一方、個人の視点としては、下記の通りです。

・無期限・無限定契約・1社専属
・有期限・有限定契約・時間ベース
・有期限・有限定契約・成果物ベース ・・・など

これまでは、個人が正社員という仕事を得るためには、無期限・無限定契約・1社専属という方法しかありませんでした。無期限・無限定という働き方が難しい場合は、期限や業務内容が限定される働き方となっていました。何らかのスキルが高い人材は、フリーランサーや起業家として成果物ベースで複数社と契約しキャリ開発していけます。しかし、そのような状態にない人材には時間ベースによる契約社員・アルバイトといった方法しかなく、キャリア開発しにくい状況でした。

企業の側も同様に、スキルや自社理念との合致度の高い人材であっても、無期限・無限定の形態が難しい場合には手放さなければなりませんでした。また、一度退職した人材は組織から「裏切り者」とレッテルを張られたり、あるいは個人の側も後ろめたさを感じたりで、元の職場とは協業することも難しい場合がほとんどでした(リクルート社のように、ずいぶん前から例外的だった会社もあったものの、少数派でした)。

しかし、しばらく前から働き方改革の動きと共に、変化してきています。
正社員でも、無期限・1社専属でも限定付きの契約が広がってきました。地域限定や職務限定などの、限定正社員です。正社員を志向する人材にとっての、新たな選択肢と言えます。

1月15日の日経新聞で、「電通、元社員230人とタッグ」という記事が掲載されました。早期退職した約230人に業務を委託する仕組みを作ったということです。アルムナイ(卒業生)ネットワークによる交流組織は米国などで発達していましたが、日本では馴染みがありませんでした。それが、ここにきて同記事のような動きが活発化しています。「カムバック制度」など再入社を制度化している企業は、既に大企業の2割を超えているようです。退職後に引き続き元勤務先と協業関係が続くのが、一般的になりつつあります。

他にも最近、例えば下記の情報を新聞紙上で見かけました。

・ギグワーカー(独立業務請負人:インターネットを通じて単発の仕事を請け負う人など)は、賃金が低くても仕事満足度が高い。

・企業の状況やニーズに応じて、適切な専門家をスポットでマッチングさせるビザスクのサービスに登録する専門家は、3年で倍増し10万人を超えた。

・IHIは国内の正社員約8千人の副業を解禁する。素材や重工といった大手製造業が副業を全面的に解禁するのは珍しい。1月に新制度を設け、希望者の募集を始めた。部署や職種、勤続年数などに関係なく応募できる。1週間の所定労働時間のうち半分の20時間以上、IHIで働くことを条件とする。社内での労働時間の減少に伴い、給与や手当は減る。

今後は、上記「企業の視点」「個人の視点」による要素の掛け合わせが、多様化に向かうことが想定されます。すなわち、従来であれば、正社員には「無期限・無限定契約・1社専属」という掛け合わせしかなかったのが、今後は、有期限・有限定契約・非専属という掛け合わせもあり得るわけです。そして、個人が複数の企業と契約を結ぶこともますます一般的になり、アルムナイ人材と改めて出戻り契約することもありえます。企業としては、どんな戦略に基づいてどんな人材をどんな雇用形態で調達するのか、従来以上に柔軟な発想で自社流のやり方を定義する必要がありそうです。

個人の側も、これまで以上に能動的に自身のキャリア構築に努め、「正社員or非正社員」という雇用形態の二元論にとらわれず、自身に合った方法を模索していくことが求められそうです。

その上で、従来の「無期限・無限定契約・1社専属」という正社員制度が悪いわけでもありません。「日本でいちばん大切にしたい会社」にも選ばれ、終身雇用・年功主義を標榜している伊那食品工業では、新卒の入社倍率は 60 倍を超えると聞きます。従来の正社員制度を志向する若者も多いということでしょう。自社の理念・ビジョンの実現に合致していれば、従来の正社員制度も引き続き有効になり得ます。雇用形態も、「個社のビジョン」「個人のビジョン」により紐づく選定を目指していくべきだということでしょう。

<まとめ>
企業の側も個人の側も、多様な方法論の中から自社に合った雇用形態を能動的に選ぶ社会環境になっていく。


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