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管理職の多様性(3)

12月25日の日経新聞で、「2021年市場この数字(中)51%、いまだ女性取締役ゼロ」というタイトルの記事が掲載されました。同記事の一部を抜粋してみます。

~~主要上場企業のうち女性取締役が一人もいない企業は2021年度で51%に上る。外国人の取締役を登用する企業も少ない。企業経営に多様な視点を取り入れることは競争力に直結するとの考えから、取り組みを加速させる欧米勢と比べ見劣りする。

デロイトトーマツグループと三井住友信託銀行が上場企業970社を対象に実施した調査によると、21年度において取締役に女性・外国人とも登用していない企業は48%だった。女性取締役がゼロとなる企業は51%だ。昨年調査(902社)ではそれぞれ57%、60%だった。改善しているが、半数が日本人男性のみで運営されている。

6月改訂のコーポレートガバナンス・コードでは、「女性・外国人・中途採用者の管理職への登用などの多様性の確保の考え方、目標、状況を公表すべき」とした。

現状では女性取締役がゼロとなっている永谷園ホールディングスは、女性の管理職への登用を25年3月末までに15%にする目標を掲げた。すでに2人の女性取締役を登用する双日は、30年度に向けた課長職と課長職候補世代における女性比率目標を明示した。外国人の登用は言語などの面でハードルはあるが、サントリー食品インターナショナルはアジアと欧州事業のトップ2人を外国人取締役として迎え入れた。

取締役会の活動について調査、評価する「実効性評価」を行うみずほ信託銀行の森央成・株式戦略コンサルティング部参事役は、「取締役の顔ぶれが多様になった企業では、議論が活発になるなど変化がある」と話す。

日本企業の中には取締役の顔ぶれを大きく変えることへの抵抗は根強い。「会社をよく理解した上で議論できる人材は育っていないし、外部からの採用も競争が激しく難しい」(中堅製造業の幹部)との声も漏れる。候補者の育成を早急に進め、多様性ある経営を企業成長に結びつけていくことが求められる。~~

以前の投稿でも、女性や外国人のマネジメント人材を増やすことの意義について取り上げました。社会の要請にこたえるとみなされることによる会社のブランディング強化と、多様な視点を事業活動に活かすことによる意思決定の精度向上の観点でした。

女性の方や外国人をやみくもにマネジメント人材にしさえすればよい、というものでもないでしょう。自然に登用した結果、多様な属性の人材の比率が高まるのが理想です。しかし、自然に任せていたら登用が進まないのであれば、目標数値を設定してある意味強制的に登用していくことで、徐々に中身が伴うのを期待のするのもよいと考えます。北欧などを中心に、議員選挙で候補者や議席の一定割合を男女に割り当てるクオータ制はそれなりに効果がある、と指摘されている通りです。

そのうえで、大切なポイントとなるのが、「成果創出を求めること」です。期待する役割・機能には役員間で共通することと、役員ごとに異なることがあると思います。それらから各役員に何を成果として求めるのかを定義し、登用のプロセスは形から入ることになったとしても、一定期間評価したうえで定義された成果に適わなかったら交代させる視点は必要でしょう。議員の場合は、次の選挙がその機会に当たります。

私の仕事の関連でも、「女性活躍」の要請を受けての女性管理職の登用の話を時々聞きます。その際、これといった期待役割・機能の定義がなく、「女性管理職の数を増やしたい」がそのまま求める成果の定義と化してしまっている例があります。これだと、「目標が目的化」してしまい、どこまでいってもガバナンスの改革にはならないでしょう。

登用のいきさつ次第では、成果を生み出すまでの時間軸の長さをある程度緩やかにみることや、求める成果の段階的な設定と引き上げなどの調整はありだと思います。しかし、あくまで評価は信賞必罰であるべきです。パフォーマンスを見ながら、必要に応じて人材の入れ替えをしていくべきです。

<まとめ>
登用のいきさつは問わないとして、成果は問う。


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