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笛田サオリ(さめざめ)
2021年11月10日 23:28
あの人と一緒にいるとき私はいつもそうだった。言葉を選んで、表情も選んで、まるであの人が望む私を作ろうとしていた。あの時はそれが当たり前で麻痺していたんだ。2月29日から始まった呪いの四年間その呪いってやつは時に天国の景色に化ける。色とりどりのお花菜畑で私は幸せそうにあの人と笑っていたつもりいたけど、他人から見たら血の色の刺々しいコンクリートの地獄であの人さえもいない場所で一人で泣きなが
2021年10月2日 22:23
この人の遺伝子を残したいって思う人ほどいつも片想いでせめて遺伝子だけでも私にくださいって思う人ほど毎月ちゃんとあれはやってくる今回も殺しちゃったねパンツを下ろして座った便座の上で何度思っただろう遺伝子ばかりに拘ってたらいつの間にかかなり大人になっててSNSで知り合いが幸せそうに綴る結婚生活を眺めるだけでいたあの人もこの人もみんな普通にできてるのにどうしていつだって私は普通に
2021年9月27日 23:34
すべてがきれいさっぱり終わってしまえば人生一大だった恋愛も大したことがなかったと気づく私にとってあの人はそんな存在だったけどあの人にとって私は、人生一大なんて大それたものでもなかったことなんて自惚れなくても分かっているあれはなんだったんだろう物理的に一緒にいた景色も少しずつ色は剥げて、形は歪んで全く同じものなんて存在しないのに私の心だけはあの頃と全く同じなんて、それはそれは
2021年9月22日 21:13
ただただ暑い夏の日日が当たりが良すぎる部屋は昼間電気をつけなくても過ごせる。真っ黒い私たちにも忠実に太陽はこの部屋を照らしてくれていたから何かを勘違いをしていたのかもしれない。いつも自分の家の冷蔵庫にアイスを常備しているあの人が「アイスが食べたい。」と口にする。うちの冷蔵庫にはアイスがない。家を出るのも嫌なくらい暑いけど、アイスを買いに行こう。クーラーの涼しさに守られていた私たちはまる
2021年9月20日 20:00
死んだってB級歴史書にも載らない人物このままずっと生きていたって誰かにすぐさま捨てられるポスティングチラシだよあんたはオンリーワンは王道誰も真似できない顔も血も人間も思想も違うのだからどこで死んでも何の歴史書にも載らないのならいつ死んだって自由だよ掛け捨ての保険料とMacBookとiPhoneのローンは今生きるために必要なものあの人がいたときこんな私、存在してい
2021年9月17日 21:39
あの人がこびり付いて心からも体からも離れてくれないので新しい恋をすることを決めたんだ。頑固な汚れがこびり付いたフライパン、いつかは買い替えるでしょ。大切なフライパンだけどそのフライパンで料理しても焦げ付いて少し苦くて切ない気持ちになるから新しいフライパンに買い替えようって。でも気づいてしまった。新しい誰かと唇を重ねた夜「あれ、なんか違う。」そう思った。別に嫌いじゃないけど。でも何か違