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一問一答!建築のキホン④

このnoteでは、『月刊不動産流通』の過去の記事を紹介しています。

今回は、「一問一答!建築のキホン」
建物の構造、関連法規の基礎知識を、(株)ユニ総合計画の秋山英樹氏がQ&A方式で分かりやすく解説するコーナーです。

『月刊不動産流通2019年5月号』より、「売却依頼を受けた既存住宅の屋根に太陽光発電パネルがあります。注意すべきポイントは?」を紹介します。

Q 売却依頼を受けた既存住宅の屋根に太陽光発電パネルがあります。注意すべきポイントは?

A 太陽光発電パネルは、一見付加価値になりそうですが、蓄電システ
ムを新たに用意する必要性や関連機器の耐用年数など、リスクも
あることを説明しておかなければなりません。

発電した電気の買い取り保証は10年

 2009年にスタートした、住宅用太陽光発電の固定買い取り制度(FIT)。発電した電気の買い取り金額は当初1Kw当たり48円だったものが、毎年下がり続け、19年4月からは24~26円/Kwになり、系統電源から普通に電気を購入するのとあまり変わらなくなりました。また、設置に係る政府の補助金制度も
14年に廃止されたため、FIT導入当初のような太陽光発電の流行的な導入は見られません。

 また、買い取り期間は10年に設定されています。例えば、仲介する物件太陽光発電パネルが設置後5年経過していれば、以後5年間は買い取り保証がつきます。しかし、その後、買い取り自体は続くと予想していますが、買い取り価格は系統電力を購入する場合の電気料金よりも大幅に安くなるのではないでしょうか。売却するより自分で使った方がお得になるため、「自家消費」がトレンドとなるでしょう。

 なお、この原稿の執筆時点(2019年3月)で買い取り期間が終了した物件はありません。住宅業界では制度開始時に大量に導入された太陽光発電設備が一斉に売電期間の満了を迎える「2019年問題」が注目されています。その数は50万件超ともいわれ、当時の新築でも築10年、そろそろそうした住宅が流通市場に登場してもおかしくありません。

自家消費される場合の太陽光発電システム

 昼間に太陽光で発電した電力を夜間に自家使用するためには、電気を貯めておく設備が必要です。通常の太陽光発電システムだけでは、発電した電気
を貯めることができないので、蓄電池が必須となります。ただし、蓄電池は
高額になるため、EV(電気自動車)のバッテリーを活用する方向でも検討されています。住宅から自動車、自動車から住宅への給電(V2H)を想定し、住宅産業と自動車産業が協力体制を整えています。

太陽光発電パネルは一生ものではない

 一般的に、太陽光発電パネルには10~15年のメーカー保証がありますが、発電性能は設置後20年ほどから低下していきます。発電性能を考慮しなけれ
ば、パネルそのものはアルミの枠と強化ガラスで覆われているため数十年程
度の耐久性はあるでしょう。しかし、太陽光発電パネルを取り付ける屋根と
の接続部分や、屋根そのものの耐久年数がパネル自体より短いことがあるの
で注意が必要です。

 日本の住宅で一般的に使用されるスレート屋根(粘土板岩を使用した、薄
い板状の屋根材を使ったもの)は耐用年数が20~30年程度、瓦葺き屋根は耐
用年数60年といわれています。いずれにしても、屋根にはいつか本格的なリ
フォームが必要ですから、それに伴い太陽光発電パネルも撤去することにな
るでしょう。

 また、太陽光発電の関連機器に係るメンテナンスコストにも留意が必要で
す。発電した直流電力を交流電力に変換し、家庭用の電気機器などで利用で
きるようにする「パワーコンディショナー」は設置後10~15年ほどで交換が
必要で、20~30万円程度の交換費用が発生します。

◇  ◇  ◇

 このように、太陽光発電パネルが付いている物件だからといって良い面ば
かりではありません。FITの買い取り期間満了の時期や、関連機器の交換時期などを判断する上でも、対象の既存住宅に太陽光発電設備が「いつ導入されたか」が重要です。諸条件を総合的に見極めて、メリット・デメリット
を考える必要があります。

 今後、太陽光発電パネルがついた物件を仲介する機会も増えると思われま
すので、長所短所を説明できるようにしておくことで顧客からの信頼を得ることができるでしょう。

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