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雨のなか、娘と「しょーもない話」をした。

#20240712-432

2024年7月12日(金)
 ノコ(娘小5)はよく持ち帰り忘れをする。
 やりたくない気持ちがそうさせるのか、宿題に使うものを持ち帰らないことが多い。
 宿題は基本、漢字ドリルとノート、計算ドリルとノート、自主学習ノート、音読カードだ。それさえランドセルに入れればなんとかなる。

 ――知ってるママに宿題の写真撮ってもらってさ、送ってもらえばいいじゃん。
 ――違う日にやればいいから、今日はやんなくても大丈夫。

 慌てることなく、そうのたまう。
 宿題の画像もお互い様で送り合う関係ならまだいいが、一方的かつ頻繁となると難しい。困った場面でも人を頼れることはいいが、ノコの場合「どうせ送ってもらえばいいし、荷物は軽いほうがいいし」となる。
 たまった宿題を後日するにしても、量が増えれば増えるほどノコはそれだけでうんざりして、投げやりになる。
 いいことがない
 そのため、我が家は宿題を持ち帰り忘れた場合、小学校へ取りに行く
 ノコが「面倒くさい」「嫌だ」「時間がもったない」と癇癪かんしゃくを起こしてもそこは譲らない。そのためにまず帰宅したら、連絡帳を出し、宿題がすべてそろっているか確認させる。
 足りなければ、即「取ってらっしゃい」と送り出す。
 それを続けていたら、持ち帰り忘れが激減した
 前回の持ち帰り忘れから、38日間(1ヶ月以上!)きちんと宿題を持ち帰っている。
 あと少しで1学期も終わる。
 このまま乗り切れるかと思いきや、まぁ、大抵そういうもんなのだ。ゴールが見えても油断してはいけない。

 「あ、計算ドリル忘れた
 ノコがつぶやいた。ドリルノートに問題の記載があればよかったが、今日の宿題はドリルがないと問題すらわからない。
 「取ってらっしゃい」
 私はすぐさまいう。あいにく、今日は雨だ。自転車でサッと行って、サッと帰ってくるわけにはいかない。
 「ヤダッ!」
 ノコが叫んだ。
 「ヤダッ、ヤダッ、ヤダッ!!!」
 床に引っ繰り返り、手足をバタバタさせる。小学5年生の体格でそれをやっても、残念ながら可愛げは微塵もない。
 「早く行かないと学校閉まっちゃうよ」
 私は学校へ電話を入れる。娘が宿題を忘れたので今から取りに行くこと、その際に職員室に声を掛けるので、対応と見守りをお願いする。
 ノコが下校したときは小降りだった雨が強くなってきた。
 日がのびたとはいえ、雨天時の夕方は薄暗い。住宅街をくねくねといく通学路は人通りがないだろう。
 「ほら、ママも一緒に行ってあげるから
 甘いな、と思いつつも晴天時に自転車で行くのとは違う。
 「行かないからね! ママだけ行けばいいじゃん!
 自分の宿題なのによくそんな台詞セリフが吐けるものだと呆れ過ぎて、反対に感心してしまう。
 「ほら、行くよ」
 「ヤダからね!」
 「トイレ、行かなくて平気?」
 「さっき、行ったし!」
 行くのが当然の態度でスタスタと玄関に向かえば、文句をいいながらもノコはついてくる。

 「雨の日の学校って怖いじゃん」
 「じゃあ、ママも教室までついて行きます」
 計算ドリルを入れるために持ったバッグにスリッパを入れる。
 「レインブーツのほうがいいよ。ママはそうするよ」
 足元が濡れることが大嫌いな私は悩むことなくレインブーツを履く。
 「ヤダし。うざいし」
 「はい、傘持って。雨、降ってるってば」
 「あー、本当ヤダ。なんで私まで行かなくちゃいけないわけ!」
 「それはママの台詞です。なんでママまで行かなくちゃいけないわけ? あなたの宿題なのに」

 傘を広げ、ふたり並んで通学路を行く。
 学校での絵本の読み聞かせ、PTA、授業参観などの学校行事。小学校まで1人、またはむーくん(夫)と行くことはあってもノコと2人は久し振りだ。
 「あのね、ここでね、このあいだ○○君がね、棒拾ってさ」
 「○○君って何年生?」
 「うーんと、△△の弟だから確か・・・・・・2年生」
 「そんでね、ここのところでね、足首をグギッとやった」
 「○○君が?」
 「ううん、私が。なんで○○君が出てくんだよッ!」
 棒を拾った話はもう終わったのか。
 私にとってはどうでもいい話が続く上に、話を広げようにもどんどん話題が転がっていき、追いつけない。
 それでも。
 こんな意味のわからない話でもノコは私に伝えたいのだろう。話したいのだろう。
 雨が降っている。
 通学路を行く人は見事にいない。
 ここまでだれもいないのなら、むしろ安全かもしれない。なんて思ってしまう。
 だが、それは一緒に来たからわかったこと。家でノコに持たせたGPSを見つめて気をもんでいるよりいい。
 そして、近い未来。
 私はこの時間を懐かしむのかもしれない、とふと思う。ノコと「しょーもない話」をした。そんな時間がたまらなく恋しくなる日が来るのかもしれない。
 わかんないけど。
 雨は人を感傷的にさせる。

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