「今の私が不幸せじゃん」といわれ、言葉に詰まる。
#20240623-423
2024年6月23日(日)
ノコ(娘小5)が通っている学習塾には、毎日取り組む計算問題がある。
1日1ページ、基本3分。問題に慣れないあいだは、3分と制限しなくてもいいが、最終的には3分以内で解くのが目標だ。
小数点の割算に入ってから、ノコは「面倒くさい」とやりたがらず、だいぶたまってきた。
全問正解はなかなかないが、大抵引き算を間違えていて、立てた商は合っている。この商の見当をつけるのがノコには億劫なようだ。
さすがに次の学習塾までにためた分を消化したほうがいい。ノコと相談した上で、ここ数日は1日3~4ページとした。1ページでも文句たらたらなのだから、3~4ページとなったら、ノコの癇癪玉にはピキピキとひびが入り、破裂寸前だ。
本日、珍しく予定のない日曜日。
このたまった計算問題さえ済ませれば、あとは自由気ままに過ごせる。
最近のノコが好む休日の過ごし方は、のんべんだらりと漫画を読みまくり、TVを上限時間いっぱいまで見まくることだ。
「ママママ、ちょっとだけTV見てからでもいい?」
チャレンジャーで、わかっているくせに一応尋いてくる。
「ダーメーよ。ノコさんが『今日だけ特別』がわかればいいけど、1回許すと毎回そうできると思っちゃうんだもん。さぁ、さっさと済ませちゃって」
「えええええええ。面倒くさい、やりたくない。明日でいいじゃん」
「明日は月曜日。学校あります。塾の計算問題のほかに、学校の宿題もあるよ。余計しんどいでしょ」
ソファーにうつ伏せになったまま、ノコが乱暴に手足をバタバタさせる。
「ほぉら、はじめないと終わらないよ」
私は洗濯カゴを持ち上げる。
「ママは、ベランダで洗濯物を干してきまーす」
そばにいると、ノコは苛立ちを私にぶつける。
近くにいないほうが双方にとっていい。
漫画やドラマであっても、ノコは殺人事件がからむものは怖いと見たがらなかった。小学5年生になって、ようやく「名探偵コナン」のアニメを見、漫画を読めるようになった。
「名探偵コナン」は私も好きで、実家暮らしのあいだは新刊が出る度に買っていた。巻が増えるにつれ、置き場所がなくなり、集めるのを中断した。いつかまたそろえたいと、結婚した際に持ってきた。
目下、その「名探偵コナン」をノコが虎視眈々と狙っている。
「じゃあ、コナン読ませてくれたらやる」
なぜ、自分がすべきことなのに堂々と交渉してくるのだろう。
それでも、お楽しみはあったほうがノコにも張り合いが出る。
「それなら、1ページ解いたら、コナンを3冊読んでもいいよ」
3分で解ける1ページに、漫画3冊。大判振る舞いだ。
「コナン3冊読んだら、1ページやる」
ノコはお楽しみを先にしたら、やる気が出るタイプではない。もう1冊、もう1冊と駄々をこねだす。
「お楽しみはやるべきことをした後です。ためた分を学校の宿題がない今日のうちに済ませちゃえば、明日からは1日1ページで済むんだよ。未来のノコさんに感謝されちゃうよ」
笑顔でいうと、ノコはギロリと私を睨めつける。
「今の私が不幸せじゃん。それでも、ママはいいっていうわけ!」
後まわしにせず、未来の負荷を軽くする。
さて、これが通じない場合、どうしたらいいのだろう。
今の頑張りを「不幸」といってしまうこと。そして、この後が楽になる快適さを想像できないこと。
「不幸せ」を「未来の自分のため」と変換することを提案しても、ノコは「不幸せ」は「不幸せ」だといい張る。
ノコを唇を尖らせたまま、計算問題を1ページ解いては漫画3冊を読むサイクルを4回繰り返した。
新刊が出る度にコツコツ買いそろえていた当時を思えば、1日のうちに12冊も読めるなんて、私からしたら十分幸せだと思う。
でも、ノコには通じない。
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