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知ってか知らでか、予定がある日に限って行き渋る。

#20231024-268

2023年10月24日(火)
 むーくん(夫)に強くいわれたこともあり、ここ4日間、朝食を食べていたノコ(娘小4)が今朝は起きてこない。
 声を掛けると目は開けるのだが、身を起こす様子がない。
 額に手を当て、顔を見、具合が悪いのか探るがそうではないらしい。
 「朝ごはん、用意していいの?」
 ベッド脇のカーテンを開けながら尋ねると、首を振る。
 「食べないの?」
 視線を明後日のほうへ投げ、うんもすんもない。

 食べないにしてもさすがに身支度はせねばならない。
 「学校に間に合わなくなるよ」
 私の声を聞きたくないとばかりに、ノコはベッドの上で丸くなる。
 「……遅れていく
 今日は近所の方とはじめてランチをすることになっている。お互い、年齢は違えど子どもがいる身なので、突然の子どもの体調不良によるキャンセルはありうること前提での約束だ。当日のキャンセルで気まずくなることはないが、私のお喋り相手はむーくんとノコだけといっていい。同性の大人と話す機会なんて、滅多にない。
 このまま欠席ならランチは中止だ。
 ノコが言葉通り遅刻しても登校するなら、待ち合わせ時刻を遅らせてもらうか。
 「なんか……お腹痛い」
 その方とランチをする話はノコにしていない。もしかしたら、楽しみでそわそわしていただろうか。
 どんなふうに痛いのかと問えばノコは首を傾げ、病院に行こうかといえば「ヤダ」という。
 「ちょっと横になってれば大丈夫。9時になったら行く

 おそらく体調は悪くない。
 「わかった。でも、熱だけは測ろうね」
 そういってノコに体温計を渡す。
 36度2分。

 ランチはキャンセルも考慮に入れ、今は焦るのをやめよう。
 登校班と学校に連絡を入れ、淡々と家事をする。朝食は食べないというのだから、身支度だけだ。9時に学校に着く時刻までしばし待とう。

 「ノコさーん、9時に学校ならそろそろ起きないと!」
 ノコの部屋のドアを開けると、ノコがバッと枕の下に何か隠した。確認しなくてもわかる。漫画か本しかない。
 見れば、なぜか額に運動会に使うはちまきを巻いている。やまいはちまきのつもりだろうか。いや、ノコが病はちまきを知っているとは思えない。
 「休む? 病院行く? 学校行く?」
 突っ込みたくなるが、はちまきは見なかったことにし、できるだけなんでもなさそうに問う。
 「……学校行く」
 「それでは、お嬢様、お着替えをお手伝いいたしましょうか」
 そういって、うやうやしく手をさしのべると、ノコは馬車からおりるお姫様のようにベッドから降り立った。
 体調不良でないのなら、機嫌よく登校するに限る。
 ノコを着替えさせ、「あら、可愛い!」といいながら顔拭き、手早く髪を結う。
 ちょっとでもグズグズしたら、気分が変わりかねない。
 「さぁさぁさぁ!」
 ノコのランドセルを自転車のカゴに入れ、二人で歩いて学校へ向かう。
 通学路に咲く花の話をし、学校で誰それがどうしたという話を聞く。
 陽射しに暑さはあるが、日陰はひんやりとする。住宅街の細い道をくねくねと曲がって歩く。ノコはランドセルを背負わずに済むのが嬉しいのか、足取り軽く、タッタカタッタカと道の先へ駆けて行ってはまた私の元へ戻ってくる。
 平日の昼日中の静けさは明るいもやのようにまばゆい。

 「今って、2時間目かなぁ」
 ノコが校門を開けてくれる。職員玄関で登校を告げ、ノコの靴箱まで同行する。
 自分のクラスの靴箱に目を走らせたノコは、誰と誰が休みだと上履きが残っている子の名前を連ねる。
 「じゃあね。行ってらっしゃい」
 私たちのほか、誰もいない昇降口でノコをぎゅうと抱き締める。
 「朝ごはん食べてないんだから、お昼まで水筒のお水を少しずつ飲んでね。空っぽのお腹で給食を食べたら、お腹がビックリするからね」
 いっても多分ノコはやらない。
 わかっていてもいってしまう。
 ノコの姿が廊下の先を曲がってしっかり見えなくなってから、私は校門へ向かう。
 往路はノコに合わせて自転車を押して歩いたが、復路は乗って帰ろう。
 まだ約束の時刻に間に合う。
 ランチだ、ランチ! 母にも息抜きは必要だ。

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