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同じ船に乗る人だから。

#20231002-246

2023年10月2日(月)
喧嘩……しない、かな
苦笑いを浮かべ、小首を傾げながらいう。
いや、本当は「喧嘩したことないよ!」とはっきりキッパリいいたい。
親しい相手ならそう返せるのだが、そうでない場合はどうも語尾を濁してしまう。

なぜなら、世の中には「喧嘩するほど仲がいい」という言葉があるからだ。

なぜなら、喧嘩をしないということは、夫婦でありながら本音をぶつけていないと思われるからだ。

喧嘩しなくても本音はいえるし、本音をいっても喧嘩にならない。
言葉を選び、口調に気を付け、押し付けず、強引に同意を求めなければ、もめることはない。こういった配慮をすることを遠慮だと受け取られることがある。遠慮ではないのだ。いいたいことはいっている。言葉や口調に気を配るのは、我慢ではない。気遣いのない言葉を発したくないという私の性質だ。
そう説明しても疑わしそうな目を向けられることが多いので、家の外ではいいにくい。

夫であるむーくん結婚して11年
私は結婚して、ようやく主体的に生きていると感じられるようになった。
私の両親は私を支配したり、制限したりすることは少なかったが――時代的にごく一般的な「こうあるべき」はあったが――親は親、子は子という線引きがはっきりしていた。もちろん親と子の関係は変えることはできないが、成人しても大人扱いされることがなかった。
親にとって、いくつになっても子は子なので仕方がないが、なかなか対等に話し合えないのがもどかしかった。

結婚したら、パートナーとは「対等」でありたい
いろんなことをたくさんたくさん話し合って、パートナーのことを知りたい。
1人で暮らすより心地のよい時間を持ちたい。
たわいもないお喋りで和みたい。

年下のむーくんに結婚前提でつきあいたいといわれたとき、私がいったのは生理が重いということだった。
男兄弟しかいないむーくんは生理の辛さを知らないかもしれない。
同性でも軽い人には理解されにくいし、重い人同士でも同じ悩みを抱えているわけではない。毎月毎月のことだが、何十年経ってもしんどさは慣れない。ただ少しだけ楽になる手立てが増え、何日過ぎればどうなるという見通しが立つくらいだ。
はじめは気を配り、心配しても毎月のことだとだんだんおざなりになる。でも、こちらは律儀に毎月苦しいのだ。生理のない男性に理解を求めるのは難しいのはわかるが、せめて毎月その期間はいたわってほしいと伝えた。
40歳目前という年齢と生理の重さから、婦人科医から妊娠しづらいかもしれないことは告げられていた。そのこともむーくんに話した。私より若いむーくんが結婚や子どもについてどう考えているかその時点では知らなかったが、この2つのことはいわねば、と思った。
私は当時のことをしっかり覚えているのだが、当のむーくんはどうも怪しい。

それでも、むーくんは生理に苦しむ私を無下むげにしたことはなかったし、不妊治療をはじめたときも極力――仕事の都合上、毎回は無理だったが、一緒に通院した。
私たち夫婦は里親でもある。
里親登録をする際にもたくさんの話し合いを重ねた。その後、里子を紹介され、交流をし、正式委託され、現在に至る。
性格もある程度見える大人になってから出会い、好きだ惚れたでかれあって一緒になった夫婦と違い、里子はまだまだ成長過程。かわいいときもあれば、ヤダヤダといい張るときもある。その理由が本人すらわからないので、尊重はすれど対等とはいかない。
どうしたらいいのか、夫婦での話し合いは大人二人のときより増えた。

むーくんは言葉が多い人ではない。
多くは語らないが、私との話し合いからは逃げない
仕事で疲れているときもあると思う。私との話し合いはややこしいことも多い。
まだ11年かもしれないが、里子のノコ(娘小4)が来てからは、大人二人ののんきな暮らしとは違う。話し合いも大半はノコについての答えの出ないものだ。
毎日トラブルが発生し、心のもやもやはたんまり。
話し合えるむーくんは、この子育ての荒波のなか、一緒に帆を張り、舵を取る。
どこへ向かうかはわからない。
わからないが、むーくんと乗ったのだから、この船はきっと明るいほうへ進む。

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