やさしさの受けとり方/はじめての献血。
向けられた優しさが、どれだけ温かくても、
受け取れないことがある。
初めての献血で、そんなことを知りました。
ずっと、献血に行ってみたいと思っていた。
献血に行きたい?なんで?と思う人もいるかもしれません。
深い理由はなくて、
自分の血液型を知りたいから。
献血に行ったことがないから、行ってみたい。
ただそれだけでした。
特に血液型は、そろそろ知っておいてもいいんじゃないかと思ったのです。
行くなら今日だと思い立ち、人生初の献血に挑戦してきました。
おそるおそる献血ルームに入った私に、
スタッフの方が「はじめてですか?」と声をかけてくれました。
個人情報の登録やら体重測定やら、言われるがまま進めていきます。
献血にも種類があり、私の場合だと成分献血ができるとのこと。
一通り説明や問診が終わると、いよいよ献血です。
献血の部屋に通されると、歯医者さんにあるようなイスが並んでいました。
部屋の中央を挟んで5台ずつ。
歯医者さんと違うのは、大きなライトの代わりにテレビが設置されていることでしょうか。
イスに座ると、背もたれを倒される。針を刺される。
献血が始まりました。
ここまでは、何事もなく進みました。
問題は、ここからでした。
開始後、しばらく経った時のことです。
急にお腹に気持ち悪さを感じました。
やばいかも、と思った途端にどんどん不快感が増し、血の気が引いていく。
不安になって、気分が悪いことを看護師さんに伝える。
すると、即座に献血を止めてくれました。
イスが動き、足が頭よりも高くなるように傾く。
乗り物酔いみたいな気持ち悪さが過ぎるのを、ただ待っていました。
成分献血は、
血を抜く
→抜いた血から必要な成分だけを回収
→血を戻す。
の順番らしい。
私は血を戻す前に不調になったため、成分を提供できたのかよくわかりません。
すぐに気持ち悪さは収まったものの、
代わりに、もうしわけなさ、情けなさが一気にやってきました。
献血に来たのに、何も提供していない。
そんな、もうしわけなさ。
ジュースやお菓子をいただき、体調不良の対応までしてもらった。
それなのに、肝心の献血ができないとなると、
ただただ、献血ルームの人の仕事を増やしただけに思えてしかたありませんでした。
なにしてんだろ私。
ずるずると、気が落ちていくのを感じました。
そして、優しさを素直に受け取れなくなりました。
もうしわけない、という気持ちでいっぱいになってしまったからでしょうか。
気遣われる度、口から出るのは「すみません」
看護師さんの顔を、見れなくなりました。
「気分はどう?」と聞かれるたび、
「大丈夫です」と答えました。
大丈夫なのかよくわからないまま、強がりの気持ちからそう答えていました。
その後計った血圧は、少し低いままだったから、
大丈夫ではなかったのだと思います。
誰も、献血を途中でやめてしまった私を責めていない。
対応してくれた方は、
献血が始まる前も、途中でやめてしまった後も、
変わらずにずっと優しく接してくれましたた。
それなのに、
自分で自分を責めて、
もうしわけなさを勝手に感じて、
周りからの優しさを受け付けなくなって。
なんとも救いがたい状態だなあと思いました。
もうしわけないって気持ちは、
謙虚さのようでいて、意外と扱いが難しいのかもしれません。
今思うと、こんなときこそ深呼吸で心を落ち着かせられたらよかった。
誰も私を責めてはいないし、
初めての献血で緊張していたから仕方ないと。
勝手に作り出したもうしわけなさを、少しでも減らせればよかったと思います。
ただ、初めて優しさを受け付けない経験をしたので、思い至りませんでした。
というわけで、
・血液型を知る
・献血に行く
という目標は達成したものの、
献血自体は不完全な形で終わってしまいました。
ずっと対応してくれてた看護師さんが
「大丈夫と、自信が持てたら2回目においで。
不安があるとどうしても気持ち悪くなっちゃうから」
と言ってくれました。
どこまでも優しい。
帰り際、気持ちが落ち着いてくると、ようやくその優しさを受け取れるようになりました。
すみませんではなく、ありがとうございますと言えるようになったのです。
「謝るのではなく感謝を伝える」
昔読んでいた漫画にも、同じシーンがあったなあと思い出しました。
小学生の頃から、なぜだか強く心に残っていたシーンです。
もうしわけないって気持ちでいっぱいになると、優しさを受け取れない。
そんな状況があると知りました。
もし今後、同じ状況になったら、できることは、
・自分を責めない。
・深呼吸
・すみませんをありがとうに変える
(もうしわけないを感謝に変える)
こんなところでしょうか。
もし、同じような経験があって、
こんな風に対応してるよって教えてくれたら、とっても嬉しいです。
以上、はじめての献血でした。
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