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#空気感

インターネットで効率的に好きな本と出会えるこの世界で、なぜ本屋に行くのか

TEXT by MOMOKA YAMAGUCHI

読み終わった本を本棚に収めるとき
2、3歩引いて本棚全体を眺めてみる。

分野も色もバラバラの本たち、
その一つ一つに私と本との物語がある。

時には本屋や図書館で、時には雑誌記事の紹介で、
時には友人知人からの勧めで…
最近ではショッピングサイトから本を購入することも多い。

とくに購入履歴を参考にしたお勧めは便利だ。
昔は少々的外れな傾向の本

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いくつもの生、愛、痛、死を乗り越え、
私たちは「人生の冬」を迎える「冬の日誌(ポール・オースター著)」

いくつもの生、愛、痛、死を乗り越え、 私たちは「人生の冬」を迎える「冬の日誌(ポール・オースター著)」

TEXT by MOMOKA YAMAGUCHI

ポール・オースター(著)/ 柴田元幸(訳)
「冬の日誌」あらすじ
繊細な言葉たちによって綴られる「呼吸の現象学」
アメリカ文学を代表する作家の6歳から64歳までの人生を「現在のポール」の視点から振り返る本。本人が「呼吸の現象学」というとおり五感から得られたデータと当時の感情を彼の繊細な言葉たちがリンクさせることで、私たちは彼の人生を「読む」のでは

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鳥の視点からヨーロッパのまちを旅する絵本「旅の絵本」

TEXT BY MOMOKA YAMAGUCHI

 「旅の絵本」は、作者・安野 光雅(あんの みつまさ)がヨーロッパでの旅で見てきた市(まち)の人々の営みを描いた絵本だ。
 絵は全て鳥の視点から市を見下ろすように描かれており、飛行機が着陸する前の徐々に高度が下がるにつれて鮮明に写っていく景色の変化からインスピレーションを受けているそうだ。

 水彩で彩られた世界は、一人の旅人が小舟を漕ぎ北欧の陸

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「モンテロッソとピンクの壁」が伝える生き甲斐と自由とは?

「モンテロッソとピンクの壁」が伝える生き甲斐と自由とは?

TEXT by MOMOKA YAMAGUCHI

江國香織(著)/ 荒井良二(絵)
「モンテロッソとピンクの壁」あらすじ
 うす茶色の毛並みをした猫・ハスカップは楽天的な性格。港のそばの西洋館で婦人と暮らしていた。彼女はいつでも寝ているので周囲の人間から怠惰な猫と思われていたが、寝る度に「ピンクの壁の夢」を見ては、「行かなくちゃ」という強い思いに駆られていた。
 ある日、夢の中の住人に「ピンクの

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