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幸福日和 #024「同じことに向き合い続ける」

例えば、
一冊の本を決めて、
それを何度も何度も読み返してみる。

一つの楽曲を聴くために、
何度も同じコンサート会場に
通うのも面白いかもしれませんね。

一つのことと向き合い続けると、
今までの深さとは、
ちょっと違う深さで
物事を見ることができます。

そこには新しい発見があるものです。


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僕は過去に同じものを見続けるということで、
不思議な経験をしたことがあります。

ドイツへ旅へ行った時のこと。

街の一角にある古いギャラリーで、
ある絵画作品と出会ったんです。

夕日を描いた美しい絵画でしたが、
深みのあるその黒みを帯びた赤色に
不思議な印象を受けたんですね。

どうしても気になって、
僕は、その街に滞在していた一週間、
何度もそのギャラリーに足を運びました。

何回、同じギャラリーに行き、
その絵画の前で足を止めて眺めたでしょうか。

その街を去る前日のことでした。

絵画の「不思議な魅力」の理由に気がついたんです。
その赤色は、作家自身の血液で書かれたものだと。

その作家は病とともに制作に向き合い、
その作品を書き上げた数日後に
亡くなったそうです。

おそらく、僕はその絵画を一度だけ見ていただけなら、
「ただの夕日」の絵画と簡単に片付けて、
その街を去っていたかもしれません。

同じものを見続けることで気がついた、
今でも忘れられない経験でした。


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同じことを繰り返すことは、
今ではマイナスのイメージで使われることが
多いのかもしれません。

ですが、何度もそのように
思いを持って繰り返し向き合ってみると、
そこで初めて見えてくることがあるんですね。

人との関わりを重ねていく中で、
相手が心を開いてくれるように。
同じものと何度でも向き合うことで、
その本質がこちらに向いてくる。

物や情報で氾濫する今の時代。
何もかもがインスタントな日常。

豊かに生きていくために
大切にしたい姿勢だと思うんです。

最後までお読みいただきありがとうございます。毎日時間を積み重ねながら、この場所から多くの人の毎日に影響を与えるものを発信できたらと。みなさんの良き日々を願って。