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インドと露と英とターバンの話し

今まで何度か、世界の対露関係の位置づけについてふれた。日本を含む、先進国に暮らす一般市民は露が孤立させられている印象を持つかもしれないが、実際には真逆で先進国(特にEU)が日に日に苦しくなっていることにも近々気づくだろう。余談になるが、帝国データバンクが先日発表した調査結果によると:『露・ウクライナ情勢により原材料や商品・サービスの仕入数量の確保に『影響を受けている』企業は50.4%。他方、原材料や商品などの価格高騰の面で『影響を受けている』企業は66.3%となった。
原材料や商品・サービスの仕入数量の確保または価格高騰に直面している企業で実施もしくは検討している対策について、「原材料や商品価格上昇分の販売価格への転嫁」が最も多かった。次いで、「代替品への切り替え」が続いた』。
今回はインドから見た露と西洋(具体的には英)の位置づけの象徴と感じたエピソードを紹介したい。ライト版で、手短に。 

プーチン大統領の訪印

プーチン大統領の最後の訪印は確か、昨年の12月(具体的には2021年12月6日)にあった。プーチン大統領にとって、コロナ後の外国首脳との面談としてこれが2回目(一回目はバイデンとのスイス会談)。それもそのはず。露印は昔から、天然資源、対中地政学的バランス、一般市民間交流の3点を中心に関係を構築し、強化してきている。直近の数字を見ると、露印貿易規模が2020年の92.6億米ドルから120億米ドルを超えた。両国とって、比率・順位の観点からまだまだ低くても、成長率は無視できない。プーチン大統領の上述の訪印時に両首脳が露印関係を「特別優先的・戦略的関係」と称し、2022年に入って露の特別軍事作戦開始された後も、米の脅迫にも拘わらず、インドは対露制裁に参加せず、寧ろ露との貿易拡大を図っているのも然り、両国通貨での取引への切り替えも真剣に考えている様だ(局地的に、タタ・スチールの様に制裁の影響で露の石炭購入を停止せざるを得ない事例もあるが)。

2021年12月訪印中のプーチン露大統領とインドのモディ首相

ジョンソン首相の訪印

先月(具体的には2022年4月21∼22日)、ジョンソン英首相は訪印。ころはジョンソン首相の就任後初の訪印となった。インドとの貿易協定の締結とインド・太平洋安全保障に関する協議が主たる目的とされているこの訪問は、インドの独立75周年が祝われているタイミングに合わせられているのも中々興味深いところではあるが、少なくとも事後の声明を見る限り各々の重点(温度差)が良く見える。全項目を出すと長いので一例だけ。例えば、英の声明でウクライナ関連部分は90文字だったのに対し、インドのそれが41文字と英の半分未満。またインドの声明(英文)ウクライナ―ロシア紛争(Ukrarine-Russia conflict)と記載されており、つまりインドはこの紛争は露が始めたものではないと見ている訳だ。
他にもジョンソン首相は(彼らしく)また批判を呼ぶような行為を犯してしまった。もしかすると、ジョンソン首相から見て、現地の重機メーカーJCB社の工場を視察する途中に、展示されているブルドーザーに乗り、そこからメディアに向かって手を振っただけだったのかもしれない(そんなはずは全くないが)。ただ、このJCB製ブルドーザーがその数日前にデリー州政府から発注を受け、今後(主にムスリムが済む)宅地の撤去作業に使われることとなっているというインド国内でも波紋が広がっている事案があった。

ターバン撒かれるヒトと撒かれないヒト

冒頭に言及したエピソードに移る前に、プーチン大統領とジョンソン首相の訪印タイミングと目的、期間等が全く異なっていることは重々理解した上で、敢えてこのエピソードに着目したことを強調したい。即ち、ジョンソン首相が訪印中にグジャラート・バイオテクノロジー大学を訪問したときに白いターバンを頭に巻かれたのだ。数ある色の中で白とはと思い調べてみると、やはり葬儀等で使われる色の様だ(シーク教ナームラリ派を除く)。ちなみに祝い事には、ピンクや薄橙色が使われるとのこと。それと、詳しい人に言わせると(当方に直接確認出来ておらず、言葉を信じているだけ)、ターバンの形は、ヴァイシャ(インドヴァルナ制度で第3の庶民階級)が被るものと同じ様だ。貿易協定を結びに来ている異国の首相だが、ヴァイシャ(商人)扱いされたとでもいうのだろうか。

2022年4月訪印中のジョンソン英首相

一方のプーチン大統領はどうだ?何も被ることは無かった。インドの受入側も被せようともしなかった。上記同様、カースト制度で解釈すると、頭に何も被らないのはバラモンつまりインドヴァルナ制度の頂点に位置する階級の人たちなのだ。当然憶測も入っているが、このシンボリズムと昨今のインドの外交が一致している様に見える(気のせいか?)。インドも大きくて複雑な国なので一概に言えないのは確かだ。

P.S.

訪印中にジョンソン英首相は、チャルカ回し(糸を作る道具、糸車)の体験会にも参加。これは、インドの英からの独立運動を象徴する(マハトマ・ガンディーから残る)シンボルだというのも面白いところだ。何か意味があるのか。あるとしたらどんな意味なのか。。。

チャルカを前に読書中のマハトマ・ガンディー

今日はここまで。

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