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3つの映画から読み解く、「フランスの今」

【photo】🇫🇷プロヴァンス地方の、マルセイユ。フィルムで撮った写真です。

最近、Netflixのフランス語の映画やドラマを観ることにハマっています。

最初はフランス語の勉強に、って思ったのですが、だんだんと映画からはフランスの社会や文化を読み取れることに気がつきました。

そこで、最近観た3つの作品から感じたことをシェアしたいと思います!
もし、皆さんがフランス語を学んでいたり、フランスに興味があるのであれば、読んでみてください☺️(Netflix:月額800円〜ご利用出来ます)

①二人のトマ、旅に出る "Le voyage Au Groenland"

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親友同士のトマと、トマが、ヨーロッパ大陸の北東に位置する大きな島国、グリーンランドに出かける話。
パリに住む、売れない俳優の二人はお互い異なる性格の持ち主。だからこそ、共通点を見つけて仲良くしてきた間柄ですが、母なる自然を前に自分たちをさらけ出し、強くなっていきます。

この映画、映像が素晴らしく美しいだけでなく、現地のグリーンランドの俳優や子役たちが話す、グリーンランドの言語や、フランスという異国の土地の人たちとの交流が実に見事に描かれています。

静かに進むので若干単調に感じる方もいるかもしれませんが、「人は一人で生きられるのか?」というメッセージを常に突きつけられます。見終わったあとのすがすがしさと言ったらもう!最近観た映画では、ダントツに好きでした。

ちなみに、素晴らしい演技力を見せたトマ達ですが、本名もトマ同士
どうりで、息ぴったりなわけです♡

ーーーーーー✳︎フランス社会を反映するもの(ネタバレ含む)✳︎ーーーーー

この映画のポイントとなるのは、やはり二人が売れない俳優という設定でしょう。彼らは、収入が少ないためにフランス政府からの援助も受けています。フランスで現在問題になっている「20代の高い失業率」。日本以上に学歴社会といわれるフランスは、新卒での就職が難しいです。会社は即戦力になる人材が欲しいので、中途採用が基本。では、どこで下積みをするかというと、インターン(Stage=スタージュ)です。いわゆるインターンなので、無給だったり、お手伝い料金が払われるだけのとこも。さらに倍率は高く、会社にそのまま採用されたら「ラッキー」だそうです。
もちろん、トマ達は自ら選択して俳優になったので問題ないのですが、こうした社会的背景に圧迫される若者たちを主人公にした映画は、「キラキラしたフランス」以外の側面も教えてくれます。

②家族に乾杯 "C'est quoi cette Famille?"

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2作目は、複雑な家族構成の中で育つ子供達が主人公!
フランス題は「なんじゃこの家族?‼︎」です。
その名前の通り、結婚と離婚を繰り返す親達の間に生まれた、母親違い、父親違いで繋がる7人の子供達。「愛が無くなったら終わり」という具合で、とても直感的で、素直な恋愛観を持つ大人の裏で苦しむ子供達ですが、写真から見てもわかるように彼らは、そんな環境の中でも自らの生きる道を見つけていきます。

フランスの結婚観や、子育てについて私が書いた記事=「フランス留学で《父親になる苦しみ》を知った、明るい話」に通じる映画だと思います。

ーーーーーー✳︎フランス社会を反映するもの(ネタバレ含む)ーーーーーー

子供と大人の境界線について考えさせられました。
映画の中で子供達は、親に「なぜそうしたいのか」論理的な説明をしていました。選ぶ言葉も、口調も非常にしっかりしていて、大人が「私の子供だろうか」と驚くほど。
親は、自分の子供をいつまでも子供扱いしてしまいがちですが、実際は子供は知らない間に成長しているものですよね。
でもこれは、フランスの教育方法にも起因していそうです。

私がフランス生活で驚いたことの1つに、赤ちゃんや子供に簡単な言葉を使っていなかったことがあります。
子供と話す時って、ついワンオクターブ上げてしまいがちですが、現地では大人と同じ様に子供に話しかけていました。

アルザスに旅行に行ったとき、山登りをしたのですが真後ろにいたのは、パパと4歳の息子。パパは自分の経験を話して、子供に「どう思う?」って仕切りにコメントを求めていました。「こうだから」ではなく、「自分はこうした」「あなただったらどうする?」と言った具合で…息子さんも負けじと答えていました。(後から4歳って聞いて驚愕しましたよね笑)

これは、人間関係に関しても言えると思います。
親と子供は対等、人間と人間は対等…と。
私も、「〇〇の日本人の友達」ではなく、「CHICA」として接してくれる人にたくさん出会い、それ以降肩書きが気にならなくなりました。今では私も、「友達の彼氏」じゃなくて、その人として見る様になれました。
そうすることで、ぐっと人との距離が縮まります。

③ヴァンパイア・イン・パリ "Vampires"


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話題の問題作!って言いたくなるくらい、最近どハマりしたSérie(フランス語でドラマ:セリー)です。
ヴァンパイア系は、トワイライト以来でこちらはまぁまぁグロテスクだったので見続けられるか不安でしたが、目を塞ぎながらも楽しんで観ることが出来ました。それぞれの役者の持ち味が素晴らしく表現されていますが、実はまだかけだし、という俳優も多く見ごたえがあります。

ヴァンパイアの血筋を持つ女子高生ドイナが自分の力に気がつき、葛藤していくお話しです。高校生という多感な時期に、自分の体が変化していくことに戸惑いを隠せないドイナと、それを取り巻く年の離れた兄妹同級生。私はヴァンパイアにこそならなかったけど、そう言った心や体の変化に困惑した時期があります。間接的な描き方ですが、それぞれのシーンに込められたメッセージ性は強く、社会問題のメタファー的要素も散りばめられているので、見ていて飽きないです。観る価値ありです。

ドイナは女の子ですが、男子に負けじ劣らない強さを発揮していて、正直男の子にも見えてしまうほど。いかにも女子向けな映画とは違うので、男性にも見て欲しいです☺️

(シリーズ1が6話まであり、まだシーズン2は公開されていません😭)

ーーーーーー✳︎フランス社会を反映するもの(ネタバレ含む)ーーーーーー

移民について

映画内では、社会の中に適用出来ず闇の中で暮らすヴァンパイアの様子が描かれていましたが、私にはフランス社会が抱える他民族国家としての悩みを、映し出しているように感じ取りました。

仏国籍がなく違法に滞在している人(フランスでの滞在許可証持っていない人)をsans-papier(ソンパピエ)と言います。

主人公のドイナもそのうちの一人。フランスでは国籍があると、このようなCNIS(Carte nationale d’identité sécurisée)と呼ばれるアイデンティティカードをもらえますが、彼女は持っていませんでした。フランスの開かれた教育制度の元、高校には通っていましたが、先生から「カードがないと卒業試験は受けられない」と言われ違法にカードを作ってもらいます。

そして、カードを受け取った瞬間の表情や、カメラの回し方が印象的でした。「一人のフランス国民として認められた」という喜びが表現されていたと思います。その時、ヴァンパイアになってしまうかもしれないけど、これで社会に認められたんだという安心感を手にしている様でした。

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(フランスのアイデンティティカードは身長まで書きます…!)


では、どのようにしてフランスが他民族国家になったのか。
フランスは第2次世界大戦以降の、急激な人口減少をきっかけに、スペイン・ポルトガル・マグレブ(主にアルジェリア)から労働力のために移民を大量に受け入れを行いました(栄光の30年と呼ばれる45年〜75年)。
しかし、74年のオイルショックに伴う経済悪化に加え、国に定住し始めた移民の人々との問題が浮き彫りになり始め…

76年には、約20万円の支援金を保証する代わりに帰国してもらうという政策を打ち出しましたが、効果は薄かったそうです。そりゃそうですよね。新しい地で家族を作った人も多いでしょうし、彼らはすでにフランスに住むことを基本としていたので。
こうして、フランスで生まれた2世、3世も増えてきてその後の政策で厳しく取り締まられたものの、家族との合流は認められていたので、さらに諸外国から人々が集まってくる形になったのです。

この件については、2015年以降の同時多発テロも相まり、フランスでは本当にデリケートな話題です。宗教も人種も異なる人々が、一国の国家権力の中で生きていくことの課題は尽きませんが、今後も考えていきたいトピックの1つです。

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長々とお付合い頂き、ありがとうございます!
こららの3作品を観られたかたは是非感想をお聞きしたいので、
コメント欄で教えてください✨




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