見出し画像

フランス/パリを深く味わう本10選

学生時代に5回フランスへ渡り、ことあるごとに「フランスに住みたい」と言っている私が「フランス、パリってこんなところ」と差し出したくなる本を10冊選びました。

普通のガイドブックや紹介本とは一味ちがったフランスを知りたい方、今までとは違った角度からフランスを眺めてみたい方はぜひ。

**

① パリでメシを食う。 川内有緒

グルメ本ではありません。タイトルどおりメシを食うためにパリで生計をたてている日本人10人を、著者の川内さんが「聞き書き」スタイルで書いた本。本人たちから「メシを食いながら」聞いた話が書かれています。

パリってモードやパティシエの修行で住む街なんじゃないの?お金持ちの芸能人が住む街なんじゃないの?と思っている人に読んでほしい1冊。

私の人生のバイブルでもあり、何百回読んだか分からない手元にある本は、付箋だらけです。


② パリの国連で夢を食う。 川内有緒


①と同じ著者ですが、こちらは川内さんご本人が5年半、国連で働かれながら生活したパリを書いた本。国連職員としても、それ以前のお仕事でも、個人としても、世界中の国を見てきた川内さんだからこそ「パリ大好き♡」とはならないところが、とても読み応えがあります。

パリに関係なく、人生迷子かも?と思ったときに読みたい本。私も、旅の途中、入社式、転職活動中などに読み返しました。

③ 巴里の空の下オムレツのにおいは流れる 石井好子

時は戦後、今とちがって女性ひとりでパリへ渡るということが珍しかった時代。日本のシャンソン界の歴史に名を刻む石井好子さんの50年代パリでの暮らしが、目の前にふわっと現れるような文章です。

豪華なフランス料理ではなく、下宿先のマダムの料理や石井さんの背伸びをしない素朴な自炊生活。

パリでは確かにドレスアップしてミシュランレストランにも行きたいですが、キッチン付きホテルやアパルトマンに泊まってマルシェで食材や総菜を買って料理を楽しむ体験も、ぜひ。なんせ泣くほど料理が嫌いだった私も、料理が好きになりましたから。

④ 移動祝祭日 アーネスト・ヘミングウェイ

「もし幸運にも、若者の頃、パリで暮らすことができたなら、その後の人生をどこですごそうとも、パリはついてくる。パリは移動祝祭日だからだ。」


有名すぎる書き出し。アメリカからパリへ、1920年代に原稿を書きながら貧しく、でも幸せに過ごしたヘミングウェイのエッセイです。

「移動祝祭日」という言葉は見事にパリを表しており、この本と出会ったときは感動してしまいました。

今と変わらない通りの名前や地名、現存するカフェも出てくるので夢中になって時間旅行ができる一冊。

➄ 悲しみよこんにちは サガン

パリだけがフランスじゃない。ということで、南フランスでのバカンスの情景が浮かぶ一冊をご紹介。

以前「フランスに倣ってバカンス風に過ごしてみた結果」にも書いたとおり、フランスのバカンス文化は有名で、多くのフランス人はバカンス命。

この本でも南仏でのバカンスの様子、そして日本ではサラッとは流せないような複雑な人間模様とその捉え方が17歳の主人公目線で語られています。

フランス的(だと思っている)な大変美しい表現がたくさん出てきます。

〈砂は時間みたいに逃げていく〉と思ったり、〈それは安易な考えだ〉と思ったり、〈安易な考えは楽しい〉と思ったりした。なんといっても夏だった。


冒頭の文章は、フランスでは有名すぎる一節。

ものうさと甘さが胸から離れないこの見知らぬ感情に、悲しみという重々しくも美しい名前をつけるのを、わたしはためらう。

⑥ 南仏プロヴァンスの12ヵ月 ピーター・メイル


南仏は「黄金の太陽輝くリゾート」としてブランド化している側面もありますが、最も「暮らし」らしい、素朴な幸せもそこらじゅうに散らばっています。

本書は、イギリス人夫婦のプロヴァンスへの移住エッセイ。重たい石のテーブルは素敵なのに全然家まで運べないし、業者は電話しても2週間も1か月も来ないし…生きる幸せってこういうことだった、と思い出せる一冊です。

⑦ ぼくのともだち エマニュエル・ボーヴ

全然キラキラしていないパリの影を覗くのにおすすめの一冊。

家賃が払えない、周囲と上手く関係が築けない、どう生きたらいいのか分からない……あれ?これ、現代社会の東京?という錯覚に陥ります。

⑧ ナナ    エミール・ゾラ


この本を入れるかは悩みました。生々しく、毒々しく、強烈な一冊ですが、とても有名な古典です。

第二帝政期のパリで、高級娼婦として生きるナナの全盛と破滅。今でこそ豪華絢爛なオペラ座やテアトルも、元々は血生臭い人間ドラマが日々繰り広げられている壮絶な場でもありました。 

実際にパリでオペラ座を見学しながら、煌びやかさの中には影や泥が隠されているんだな、なんて思い浮かべたい本です。

⑨ お菓子でたどるフランス史 池上俊一 

フランス、そしてヨーロッパにおいてスイーツは単に「女性が喜ぶもの」「自分へのご褒美」「贈り物」とは言い表し難いもの。

そこにはフランスという国だけでは語れない、スペインやイタリアといったご近所さんたちを巻き込み、巻き込まれながら繰り広げられた歴史とドラマがあります。

「キャーこのマカロンおいしい!」なんてかわいくはしゃげないけど、フランスのスイーツを味わいたい、という方にぜひ。

⑩八十日間世界一周    ジューヌ・ヴェルヌ


ヴェルヌはフランスのブルターニュ地方、ナントの作家。(ちなみにナントはフランス人が住みたい街ナンバー1に選ばれたこともあるほど、素敵な海辺の街。)

ナントの街と海が、彼にイギリス海峡、ヨーロッパ、そして世界を思い描かせたのでしょう。

ナントに限らず、フランスにいると「世界の縮図」の中にいるような錯覚に陥ることがしばしばあります。歴史的な建築物がそうさせているのか、世界中の観光客や移民が混ざった人種のるつぼがそうさせているのか。

本の中では本当に世界一周の旅に出ているのですが、フランスにいると世界一周した気になれるんじゃないかな、と思うほど世界中の人や文化が身近にフッと現れる瞬間が何度もあります。


**

以上、10冊を挙げてみました。なんとなく「お洒落でお高いイメージ」の国フランスから、一つでも新しい発見があったら嬉しいです。

自分が何故フランスが好きなのか一言で言い表すのはとても難しいですが、これからも縦に横に奥が深いフランスと向き合っていきたいと思います。



この記事が参加している募集

読んでいただきありがとうございました😊 素敵な一日になりますように!