見出し画像

本日の本請け(2023.9月)

毎月、本となるべくそれに合ったおやつ・飲み物を「本請け」として摂取して羅列しております。

『麦本三歩の好きなもの 第二集』住野よる(幻冬社文庫)

オーディオブックで聴きました。
ちょっとドジでとぼけたところもある「麦本三歩」という大学図書館で働く女の子の、何気ない日常。固有名詞は出てこずに、登場人物たちは「怖い先輩」「おかしな先輩」などと呼ばれていてそれがどこか、私たちの身の周りにいる人に置き換えられるような、不思議な感じがします。

釧路のお土産、たんちょうボーロ。なんか三歩っぽいなと(笑)

「麦本三歩は蟹が好き」が好きでした。

このお話のなかで、男性に引っかかる発言をされたというシチュエーションがありましたが、実際にそういうのにあたるときってあるし、でもやっぱり流しちゃうかもなあと思いました。

なんというか、引っかかるけど、そこで真剣な顔して失礼だ、と指摘して空気壊すやつだな〜となるのもちょっと、どうなんだろう、でももやもやはする、みたいな。

空気を壊しはしなかったものの、そこに反応する、いやしてしまう、かな、三歩が愛しくなりました。そして、見ている人っているよな、と。
「怖い先輩」とのやりとりもよかった。続きがありそうで、楽しみ。

かわいいのでぜひアップで。みんな顔が違う

『桜の森の満開の下』坂口安吾(青空文庫)

文豪クリームソーダなるものを見つけてしまい、東京でちょうど用事があり、行ってきました。

カバーにもなるマットと、しおりがもらえる

どれにしようか迷ったのですが、読んだことない作家だった坂口安吾にすることにして、読了してから行きました。

桜の木の下にいると落ち着かない気持ちになる、山に住む野盗の話。

タイトルはよく聞いていましたが、こういう話だったのかー、となりました。

読み終わった今も、タイトル不思議だなと思う。満開の桜の森の下、でなく、桜の木の満開の下、でもなく、下で、とかでもなく。「の」を3回繰り返す勇気。

『新装版 魔女の宅急便 3 キキともうひとりの魔女』角野栄子(角川文庫)

1と2を聴いて少し時間が空いてしまったのですが、ふと3を聴こうと思い、ダウンロード。

もう9月末で、秋だなと思ってアップルパイ

今回はキキの前にもうひとりの魔女、ケケが現れます。
年下の女の子なのに、彼女にペースを乱されっぱなしのキキ。
大好きな街での楽しい毎日のはずなのに、自分を見失ってしまうことが多くなります。

古傷が疼くというか、キキの毎日は現実の中高生の日常とはかけ離れているはずなのに、ああ、自分を見失ってしまう感じ、わかる。死にたい、というのにとても近い気持ちだけど死にたいではなくて、消えてしまいたい!って気持ち。

胸がきゅーとなりました。
ケケの言葉はどこかぎくりと刺さります。
ちゃんとした子でないと不安なんだ、とか、勉強をしてるっていうと安心するんだよね、とか。
聴いてる間、早くケケいなくなってくれないかなあ、という気がしていたのですが最後には彼女のことも抱きしめたい気持ちになりました。

あと個人的に、映画の魔女の宅急便も好きだけれど、あの映画の中での魔法が使えなくなった、空を飛べなくなった描写について、インターネットでいろいろ言われているのを見たときになんとなく違和感があって……。
最後のコキリさんの手紙で、今でも変わらず魔女をやっている、という言葉があってなんだかほっとしました。
変化があっても、キキはキキ、と言われている気がしてよかったな……と思ったのでした。

『鉄鼠の檻』京極夏彦(講談社文庫)

百鬼夜行シリーズの新刊が9月に出る!ということで、先月から京極夏彦マラソンをしております。シリーズの4作目。

このときにはまだまだ暑い!という時期で、コーヒーフロート

古本屋としての仕事でやってきた京極堂と、誘われて旅行に来た関口。
禅を科学実験する取材でやってきた、敦子と鳥口。
新たに「〜なのです」という口調が特徴的な骨董屋の今川が登場、また、シリーズ一作目で出てきた人物も登場します。

前作までの流れを汲んでいるところが多く、やはり一気に読み返してよかったなあ。
解決編は一気に読めてしまいました。
禅の問答など、若い頃よりは理解して読めた、と思いたい。
京極堂が常信と話していたときの、「伝統的宗教は現在、現代社会との共存を模索しています」「ぼやぼやしているとあなた方宗教者が担うべき部分を他のーー何かとんでもないモノに奪われてしまう可能性がある」という言葉に、うーん、奪われてしまったのかもなあ、と思ってしまった。

『絡新婦の理』京極夏彦(講談社文庫)

シリーズ5作目。

まだまだまだ暑いので、冷たいもの多めで

以前に読んだときよりもかなり刺さったかもしれない。

刑事・木場の追う「目潰し魔」の事件と、そして女学生・美由紀の語る房総半島にある聖ベルナール女学院で起こる不可解な出来事が交わっていき、やがて織作家という地元の有力者一族を舞台とした物語へと展開していきます。
それぞれの理、フェミニズムや戦後の売買春について。
女性のキャラクターたちがそれぞれ際立っていて印象的です。

 金持ちは成功者だし、成功者は偉い、資本主義の自由競争社会に於てそれは当然だ──と云ってしまえばそれまでだが、こればかりは資本主義の所為ばかりには出来ぬ。
 なぜなら経済力以外にもそうした階級主義的な──順位をつけて差別するような意識は多くあるからである。それはあらゆる場所で日常的につき纏う。例えば、美しいものと醜いものでは美しい方が勝っているとか、賢いと馬鹿では賢い方が良いだろうとか、世間の人は無闇矢鱈と順位をつけたがる。その上で、上位は下位を見下して、下位は上位を見上げて、当然のように暮しているのだ。
 ランクをつけると云うことはそもそも無意味且つ下品なことである。そうしたことを平然と受け入れるのは愚かだし、それで一喜一憂することは更に愚かなのだと、伊佐間は思う。
 そこでふと気づく。それを愚かだと思っている自分は、愚かな階級信奉者を見下してはいないか。

『絡新婦の理』京極夏彦

このあたりの伊佐間の思考が興味深かった。これから作中は高度経済成長期だけれど、伊佐間は経済力以外でのランク付けにも目を向けて考えているし、「階級信奉者」を見下しているかもしれない自分、というのまで考えているのは伊佐間らしい。

『塗仏の宴 宴の支度』京極夏彦(講談社文庫)

14日の発売日までに既刊読了が目標だったのですが、間に合わないのでは、とにわかに慌てていた頃合い。

やけにコーヒーに絡んだものばかりだ。黒っぽいイメージがあったのか

話がどんどんとふくらんでいき、ぞくぞくしました。

『塗仏の宴 宴の始末』京極夏彦(講談社文庫)

どの本も真相編はあっという間に読める気がする。

かぼちゃプリンと、たまにはコーヒー以外にしようとアイスティー

読んだはずなのにオチを覚えていなくて、ハラハラしてページをめくってしまいました。

バラバラな出来事が収斂していく様はお見事でした。

信用するってのはな、相手に期待することじゃないんだぞ。俺の息子だからこうあって欲しいとか、こうでなくちゃいかんとか、うちの子に限ってそんなことはしないとか、そう云うのは信用とは云わない。信用ってのはお前、相手に求めるモノじゃねえだろう

宴の始末

家族の物語でもあったな、というのがここ読んでいて沁みました。「家族とは継続するもの」、というのも。一度で済む解決より、継続って難しいよね。

世間の馬鹿どもはな、長いスパンで物事を考えることが出来ないのだ。そのうえ無反省だ。食い物が、環境が、文化が生き物としての人を変える。肉体こそ精神だと云う単純な理屈が解らぬ連中が、世界を壊す。愉しいじゃないか。自然界に存在し得ない音を聴き、自然界に存在し得ない色を視て、自然界に存在し得ない物を食って、その後で人がどうなるか。遠からず子は親を殺し親は子を食う世の中になるぞ

宴の始末

ここ読んでいてびくっとしてしまった。

『陰摩羅鬼の瑕』京極夏彦(講談社文庫)

『塗仏の宴』とは逆にオチは覚えていたのでさらりと読めました。

アイスミントティー。暑い日に外の席で読みました

家族、私と私の外の世界。
このへんはシリーズ通してよく出てくるモチーフ、という気がします。

朝ドラの「らんまん」が好きなのですが、実在の人物をモデルにしたときのドラマだと「史実では実は〜だった」という記事をよく見ます。
行いについて良い・悪い、という意見を見かけたりしてどれにもそうかもと思ったりもします。

「仮令全く同じ言説であっても、時と場合によっては全然別の解釈が出来るのだと云うことを忘れてはいけない。正しい正しくないと云うのは、その思想なり言説がどんな器に入っているかで変わってしまう、と云うことだ」

『陰摩羅鬼の瑕』京極夏彦

この部分を読んでいて、ん?と思うことでもどんな器に入っているか、意識したいな、という気持ちになりました。

『邪魅の雫』京極夏彦(講談社文庫)

14日、新刊の発売日に読み終わって、やったぞ〜!という達成感と共にゴールテープを切りました。百鬼夜行マラソン、完。思わず電子書籍の並んだ画像を作って並べてにやにやしてしまいました。いや〜、読んだなあ。

圧巻!
自宅であんみつを食べながらラストスパート

一度読んだとき、あまり印象に残っていなかったのですが、特に最後にかけて、以前とは違うように感じました。こう、普通の初見の読書が窓を開けて景色を見ようとしている感じなら、再読は薄いレースのカーテンから向こう側がちらちらと覗きながら光景を見ようとしている感じ。見える景色は同じのはずなのに、いざ窓を開けてみるといつか見た光景とは違うものが広がっている。再読っていうのはこういうのが面白い。

『陰摩羅鬼』や『邪魅』は、事件の後の後始末、その後どうなったのかの描写が少なくなった気がしていたのですが……確か、最初に読んだときもそのへんを残念に思った気が……今回、新刊を読みつつ『百器徒然袋』などを読んでいると、そのあたりの後日談の話がポロポロ出てきて、なるほど、こちらで書いていたから本編ではあまり出てこなかったのだな、とわかりました。

『鵼の碑』京極夏彦(講談社)

満を持して、新刊へ。
もし、新刊見て興味持って読みたいけどこれだけ読んで大丈夫なのか、など考えているという方こちらのポストを見て判断していただけるよいのでは。

神保町で休憩がてら。榎木津ビルディングはこの町にあるのか……と考えていました

ペースが乗ってくるまではややかかったのですが、蘊蓄部分もシリーズ再読したからかわかる単語も多く、読み返してよかった〜!と思いました。

ここから多少、ネタバレをいたします。

キャラクターたちは相変わらずで、17年ぶり、なんてことは感じさせず楽しませてもらいました。
ですが、外側で17年経っているゆえの書きぶりのところもあって、それはそれですっと読める要因でもあった気がします。

「陰謀論」の話など妖怪が機能しなくなった上の弊害、「多様性」にも言及されているのが面白かった。舞台設定が戦後直後でもやっぱりそれが現在へと続いていることを感じました。

京極さんのインタビューを先に読んでいたのもあり、読みやすかったのもあります。

新キャラの緑川が好きでした。

「凄く会いたい人が居て、別に連絡が取れないこともなくて、そんなに無理しなくても会えると云う状況なのに、何故か──そうしないのね。会いたくないんじゃないんだけど、寧ろ迚も会いたいんだけども、何もしないの」

「鵼の碑」

ここの部分、とてもわかるなあと思って読んでいました。

東京に行く用事に際して、神保町へと赴きました。榎木津ビルディングがあるのかも、なんて思いながら歩きました。

また、鬼子母神にもお参りしてきました。

まだ暑いときにあたりを散策したので、なかなか風情がある聖地巡礼となりました。
いつか日光も行ってみたい。

また、旅の間に寄った書店で「ねこまたごよみ」というキャラクターやグッズを見つけてしまい、思わず購入してしまったのですが、この絵を描かれている方が表紙を描かれているそうで驚きました。

ポストカードと画集を買いました

『百器徒然袋 雨』京極夏彦(講談社文庫)

榎木津が主人公の短編集。

雨宿りで入ったカフェにて

語り手は図面引きの青年。他のキャラと同じく榎木津にずっとまともに名前を呼ばれないのですが、最後の演出がニクいです。

『百器徒然袋 風』京極夏彦(講談社文庫)

榎木津が主人公の短編集、2冊目。

豪徳寺のお土産たちと

実は、豪徳寺という招き猫で有名なお寺が出てくると知って、こちらにも立ち寄りました。

招き猫、めちゃくちゃいました

『邪魅の雫』のラストの味わいがかなり、これを読んでいると違うなと思いました。
かつては本編しか読んでいなかったので、もったいないことしたなと。

本編と違って、ノリがかなり軽く楽しく読めました。

クッキーは、豪徳寺の近くで暑くて一度休憩したお店のもの。かわいさにやられて買っちゃったのですが、ホロホロしたクッキーとやわらかいクッキーといろいろ楽しめておいしかった!

付記

ネットを見ていて、ブックショルダーなるものを見つけました。

最近スマホショルダーを使っていたのですが、ここに本か、Kindleを入れられたら最高なのにな、と思っていたところだったので、欲しい〜!と思って、購入してしまいました。スマホと、小銭等が入って、読みたいと思ったときに開ける。隙あらば本が読める。最高です。

欲しい色があって、通販かな〜と思っていたら、東京に行ったときに取り扱いをしているお店に寄ることができたのでそこで購入しました。本屋さんの本のラインナップも素敵で、もっとゆっくり見たかった……!リベンジしたいです。

また、こちらの動画で見て影響を受けて、今月から読書記録をNotionで付けています。

読書記録はずっと読書メーターでつけていたのですが、以前は全期間のグラフがみょん!って伸びるところを見るのが楽しみだったのに、できなくなっちゃってテンション下がってしまって……。あと著者グラフが正確じゃない(読んだ冊数が少ない人は無視される)のが不満なんです。満遍なく読んでいるのかどうかを目で見たい。その他はその他でちゃんと円グラフ内に入れてほしい。今でもつけてはいるんですが、新しいことをやってみたかったので。

メインがiPadなのでアプリ使用のためちょっと四苦八苦しながらデータをつけています。いつまで続くかな。

こんな感じ

この記事が参加している募集

至福のスイーツ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?