戦略プランナーが新入社員に教えること③:「考えること」は「知ること」
For youで執行役員CMOをしている筧(@kakehi_)です。2022年2月より、戦略プランナーとしてのnote記事を書くことがノルマになりましたので、がんばっていきたいと思います(この記事が3つめ)
15年ほどの経験ですが、広告プランニングとは非常に幅が広く、そして属人性が高くなっており、人に教えるのが難しい領域だと思っています。
そして、センスというとよくないのですが、まさしくセンス的なものも感じるときはあります。
こちらのnoteにはストラテジックプランニングと呼ばれる、コミュニケーション戦略を考えることについて書いていくのですが、センスではない部分について語っていきたいと思っています。スタンスとしては「仮に自分に新入社員がついたときに教えること」をできるだけ言語化していきます。
ただし、マーケティングの基礎知識は、世の中にある名著を読んだほうが明らかによいので、そのような知識は本を読んでください。本に大事なことは全て書いてあるのに本を読まない人が多いのが広告業界であったりもします。読書大事です。
なので、このnoteの連載のテーマは「マーケティングの教科書には載っていない、スキルとスタンスの間くらいの大事なこと」です。
適当に書いていくとあとで困るので、いったん年間計画を立ててみました。下記の内容を書いていこうと思います。
第1回の記事はこちら「考えること」は「分けること」
第2回の記事はこちら「考えること」は「書くこと」
今回は第3回の記事になりますがテーマは
「考えること」は「知ること」です。
僕が若い時の話
電通入社して業務に少しずつ慣れると、その先には「キャンペーンのアイデアを出す」ことが増えていきます。
楽しい仕事なので一生懸命考えますが、いろいろアイデアを出していってもなかなかいいアイデアが出せませんでした。
そこで自分がやるようにしたのは「誰よりも広告事例・キャンペーン事例を知ること」。
具体的にその時にやったのは「RSSリーダー(最近あまり聞きませんね)に、広告系のブログやニュースサイトを片っ端から登録し、最新事例を見る」ことを毎日しました。
すると、いいアイデアとは言えないものの、使えそうなアイデアや、参考になるアイデアは出せるようになりました。
若い時には経験もスキルもないのですが、事例のような知識を増やすことはできる。これだけの努力でまわりの誰よりも詳しくなることが可能で、このころの僕はまわりの誰よりも事例を知っていたと思います。
この話の重要なところはそこではなく、「知識のないところからアイデアを考えるのは難しい」ことで、この記事を読んでいるあなたが天才であれば可能かもしれませんが99%以上の人は天才ではありません。
新しいインプットを得て、そこから着想し、考えることしかないのです。
しかも、世の中で天才だとか、すごいと呼ばれる人は、膨大なインプットをしています(ほんと優秀なひとほど引き出しが多い)
ですので、アイデアが出ない、考えられないという方は、まずインプット。自分の努力で知識を増やす。意識的に情報を詰め込んでいくとよいと思っています。
広告における提案の流れ
インプットが大事なのですが、ではどのようにインプットをするべきか。
目の前の仕事にどう活用できるか、から考える必要があります。
私の中で広告の提案の流れはこのようになっていますが、広告領域の仕事以外でも汎用性の高い流れだと思います。
分析は(ある程度)網羅的におこない、そこから解決しなければいけない課題を明確にする。その課題を解決するための提案コンセプトはひとことで。具体提案は提案コンセプトに紐づいて、細かく具体的な施策を説明していきます。
TVCMのようなマスキャンペーンでも、デジタルキャンペーンでも、そして広告の仕事でなかったとしても、同じような流れで考えることができるものだと思っています。
なぜなら、人は情報量が多いと理解することができません。何が課題で、何をするべきか、がひとことでわかるようにしなければいけないのです。
この図に基づくと、左側の分析の精度を高めるためには、商品や市場や競合、ターゲットのことを知らないといけませんし、右側の精度を高めるためにはそれを解決する方法を知らないといけません。
ここで重要なのは2点。
1点目は、中長期インプットと、短期的インプットがあり、前者は自分が強めたい領域を決めて常日頃インプットしていくもの、後者は目の前の仕事のためにインプットするもので、その二つを分けて認識しておいたほうが良いこと。
2点目は中長期インプットにも、分析で使ったり、具体施策で使ったりすることができ、意識的にインプットを分解して理解しておく必要があるということ。
です。
インプットの仕方
では具体的なインプット方法についてどうすればよいか。3つに分けて説明します。
①短期インプット
②中長期インプット
③自分が得意になりたい領域を決める
①短期インプットは「素早く俯瞰し、深く潜る」
上側の短期インプットについて。
左上の市場理解についてはユーザーベース社のSPEEDAなどの市場を俯瞰して理解するためのサービスを活用することが効率がよいでしょう。また解釈が必要であれば業界本・専門書を数冊読むことがよいかもしれません。
私が重視しているのはターゲット理解のためのユーザーヒアリングで、実態としてどのように現在のユーザーが感じているのか、使っているのかを聞いたり、狙いたいターゲット層がどう思っているかを深く聞くことが多いです。デプス調査としてはMarketing Demo社のリサーチDemo!がリーズナブルに実施できるのでおすすめです。
また、右上のストーリー理解、機能理解については、コーポレート資料や商品説明資料に載せてある情報だけではなく、その背景にあるストーリーや想いを経営者や開発者、営業の方から聞くことが重要だと思っています。
そこに顧客のインサイトが多く含まれているからなのですが、それ以外にも理由があり、提案は実施することが重要と考えた時に「本気で思っていることしか人はやりたくない」から。
必ずしも、経営者や開発者が持っている想いがそのままターゲットに評価されるわけではないですが、人が動かないといけないと考えるとその話を聞きながら、実施したい、と思うことを提案する必要があります。
②中長期インプットは、「特定領域に絞り、体系化する」
続いて下側の中長期インプット方法について。
左下のトレンド理解については、ニュースやSNSを見ることや、話題のスポットなどにいって実体験をしておくことが重要です。読むだけよりも一回の体験は膨大な経験値となります。
右下の事例理解については、アウトプットの手段を持つためですが、こちらに関しては、具体的な事例を分析することと、書籍を読むことをおすすめします。
広告プランナーだとしてもさまざまな手法があり、マーケターであればさらに手法が広がります。目の前にある課題を解決するために最善な方法は何なのかを考えるためには、どのような手段があり、それはそれぞれどのようや役割・効果となるのかを理解するために知識が体系化された書籍を読むのです。
③自分が得意になりたい領域を決める
では、この中長期インプットについてですが、世の中には膨大な情報があり、どのような領域の情報を集めるのを決めなければいけません。
若い社員と会話していて、どの領域に強くなりたいのかという話をよくしますが、このように職能と職域で分けて整理してみることがいいと思っています。
まず、職能と職域で線をひきます。
職域は、自分が得意な業種を業種も含めて並べていきます。昔のように終身雇用の考え方であればよいのですが、転職するのが当たり前と考えると、他の業種も含めて俯瞰できるとよいです。
私の場合はBtoBやBtoCのクライアントを幅広く経験したことと、最近はスタートアップのクライアントが多いため、真ん中にスタートアップと置いています。
次に職能です。自分がやることできるスキルと思ってもらればいいですが、ざっくりでよいかなと思います。これを明確に書くことは難しいので、自分ができることと、広げたいスキルを書いてみるということでよいかなと思います。
その二つを掛け合わせて、掛け合わせてみると、自分がどのような職域(業種)で、どんなことができるのか(職能)を可視化することができます。
そこから職能を広げていくのか、職域を広げていくのかを選んでいくことで、自分のキャリアを広げていきます。
私の場合には、上流設計が強く、BtoB,BtoC両方とも大丈夫ですが相対的にスタートアップが強いなどが明確になります。また、今はSNS領域を学んでいるので、このような三角形で下に広げようということが可視化されます。
インプットの習慣変化=体質改革
ここまで情報のインプットの話をしていましたが、インプットについては単発でやってもあまり意味はないと思っています。
人間の体は3ヶ月で全ての細胞は入れ替わると言われますが、自分の体・脳を通る情報を意識的に変えて3ヶ月立てば、自分の中の情報の質も大きく変わるのではないでしょうか。これをほぼ体質改革だと思っていて、意識的に変化させられるとよいですね。
この記事では「考えること」は「知ること」について書きましたが、来月は「考えること」は「両立させること」について書こうと思っております。
私のTwitterのインプットリストをまとめました
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