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#281【ゲスト/ライター】ライティングという仕事の極意

このnoteは2021年12月10日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。


原稿を書き進めるための裏ワザ――単行本執筆はフルマラソン

今井:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティを務める今井佐和です。「好きな仕事が途切れない売れっ子ライターが心掛けていること」ということで、昨日に引き続き本日も素敵なスペシャルゲストをお呼びしています。ブックライターの林美穂さんと、フォレスト出版編集部の杉浦さんです。どうぞよろしくお願いいたします。
 
林・杉浦:よろしくお願いいたします。
 
今井:さっそくなんですけども、たくさん質問をしていきたいと思います。売れっ子の林美穂さんということなんですけれども、原稿執筆する際に、心掛けていることっていうのはありますか?
 
林:そうですね。実際に書くときは、先にもう完成してメールでテキストを送って編集さんがすごく喜んでくれたとか、もうその本ができて書店に並んでいるとか、アマゾンのランキングで1位を取っているとか、そういうようなイメージを必ずしてから、書き出すっていうことをしています(笑)。
 
今井:イメトレと言うか、もう出来上がった後のうれしい未来を思い描いてから書くっていうことですか? オリンピック選手みたいですね!
 
林:オリンピック選手みたいな(笑)。イメージトレーニング的な。
 
今井:やっぱりそうやって書くと、書き味が変わってきたりするものですか?
 
林:うまくいくって決まっているんだっていうふうに、思い込んでいるだけなんですけれど、それでも始めの一枚目、二枚目が出てこないときってあるんですよね。そういうときはちょっと奥の手と言うか、仲のいいお友達とか、親切で優しいお友達とかを思い出して、その人に読んでもらうつもりで書いたりとか。誰か決めるんです、ターゲットを。その本に合いそうな、その本を必要としてくれている知り合いで、「うんうん」って喜んで読んでくれそうな人を想像して、その子が喜んでくれる、その子のために、って思って書くと、文章が出てきたりするので、最後までずっとはその子をイメージしていなかったりするんですけど(笑)、とっかかりとして、そういうことをイメージしたりとかしますね。
 
今井:私も何かを書くっていうお仕事があるんですけど、そのアイデアはいただいたなって今、思いました。そういうふうに想像したら、はじめの一行とかが出てきやすい気がします。
 
林:そうなんですよ。ものによっては優しく説くと言うか、話しかけるほうがいいとか、いろいろあるじゃないですか。それがやりやすいんですよね。言葉が出てきやすい。誰かを設定してみるっていうのは、ちょっとお勧めかもしれないですね。
 
今井:ありがとうございます。他に何か心がけていらっしゃることってありますか?
 
林:結局のところ、どのお仕事もそうだと思うんですけど、体力勝負で、健康第一っていうところはやっぱり何のお仕事でもあるじゃないですか。一冊書くってなると、スケジュールとか締め切りとか、そういうことにも左右されますけど、一冊、200ページぐらいをそのことだけに集中して何日も書くっていうので、体力勝負なんですよね。いつもフルマラソンをしているって思うんですね、単行本書くときって。一方、雑誌とかの1万字ぐらいまでの短めの記事は短距離走って感じなので、瞬発力が大事なので、取材したらそのインタビュー対象の方のエネルギーをもらって、その瞬発力で書くっていう感じなんですけど、私は今は単行本が多いので、体を整えるっていうことは結構やっていて、大事だなと思っています。
 
杉浦:美穂さんは、アーユルヴェーダの本を書かれていますし、食に気を使われたりとか、バレエをされていたりとか、すごく生活を整えていらっしゃるなあっていう印象があって、ペースがきちんとされているから、お仕事相手として、すごく安心して依頼ができるんですよ。締め切りを守るとか、ちゃんと決められたスケジュール通りにやってくださって、本当にこちらとしてもありがたくて。著者さんもすごいんですけど、書籍っていうものをつくっている立場からすると、きちんと締め切りまでに原稿を上げてくださるライターさんだったりとか、最後までリクエストに応じてくださるデザイナーさんとか、印刷入れる直前まで修正を対応してくれるDTPのオペレーターの方とか、そういうちょっと裏方の方たちのほうが、私は著者さんよりもチーム感があって、いつもありがたく思っています。なので、著者さんからすると、修正1つにどれぐらいの人たちの手が動いて、スケジュールにしても、調整が入っているかって、見えないものなので、伝わらないんですけど。だからしょうがないっちゃ、しょうがないんですけど、私は正直、そういうデザイナーさんとかライターさんとかのほうがいつもありがたいなと思いながら仕事をしています。
 
今井:確かに一般の読者側からすると、著者さんの名前しか本には出てこないので、今お話を聞いて、一冊の本の裏にはライターさんだったり、デザイナーさんだったり、本当にいろんな方がいらっしゃるんだなと、ちょっとこれから本を読むときに、その方々も想像しながら読みたいななんて、今……。
 
杉浦:ぜひ、クレジットを見てみてください。

化粧品会社勤務からライティングの世界へ

今井:はい。クレジットを見て、「ありがたやー」って拝んでから読みたいと思います。で、ちょっと気になっていたんですけど、美穂さんは最初からライターとして活躍されていたんですか?
 
林:いえいえ。違いますね。子どものときから洋楽が大好きで、携わることをしたかったんですよ。ただ私たちが就職活動をするときはレコード会社っていうのは、もうバブルが弾けた後で、募集等が一切なかったんですね。それで、それじゃあしょうがないっていう感じでいたんですけど、どうしても何かやりたいって思って、当時の音楽雑誌、洋楽雑誌ってよく募集があったんです。「ライター募集」とか、「コンサートに行って、レビューを書きませんか?」みたいな。それに応募したりとかして、そうしたら運よく拾ってくれる雑誌の編集の方とかがいて、その方からお仕事をもらったりとかして、音楽ライターをしていたんですね。ただ、それはこそこそやっていたって言うか(笑)。学校を出てからは、化粧品会社とかに入って、普通に正社員で働いていて、音楽ライターはこそこそやっていたんですよ。
 
今井:大学時代から始めて、一般の会社に入ってからもこそこそと、書くことが好きって言うよりも音楽が好きっていうところのライティングっていう感じだったんですね?
 
林:そのとおりです。音楽の雑誌社に入りたいとかっていうのは、そのときはあんまり思ってなくて、書くこととか、本をつくるとか、そういうのって、そばに仲間ができてくると、見ていておもしろいなって思うようになって、それでダメ元で出版社を受けて転職したんですね。それで、普通の一般の出版社にお勤めをしていました。そこでは記者で採用されていたので、結構有名な小説家の方とか、そういう方に取材をしたりとかして、著者インタビューみたいなのをたくさんやらせてもらったり、あとは家庭のお掃除とか、そういうようなライフスタイルの記事をつくるとかをやっていたんですけど、やっぱり音楽がやりたいみたいなふうに思ってしまって、仲間には「そういう機会があったら、声かけてください」っていつも言っていたんですね。そしたら、そういう機会が本当にやってきまして、30ちょっとだったんですけど、ここでやるしかない、これでやらなかったら一生後悔するって思って、何の保障もないんですけど、音楽雑誌を新刊で立ち上げるっていうのに飛び込んだんですね。ただ案の定、ちょうどインターネット全盛と言うか、そういう音楽の媒体の全てがWEBに移行しているときで、どんどん音楽雑誌もなくなっていくし、今まで新譜が出ると、宣伝で広告費を出してくれていたクライアントさんが、出してくれなくなるとか、そういうこともどんどん起こるし、ファンの方、読者さん自身も、洋楽が好きなんて言うと、自分でイギリスの音楽雑誌にアクセスすれば情報を取れるし……。そうなってくると、日本国内で音楽雑誌っていうものがどんどん衰退していくのって目に見えてわかるし、実際そういうふうになってきて、だいたい2~3年、3年はやっていないんですけど、廃刊になっちゃったんですね。ただ、音楽の仕事をやって楽しかったですけど、ずっと続けていくものでもないし、自分の中で子どものときからの想いみたいなのが消化できたっていう、ここで区切りかなっていうのがあったので、他のことをやったほうがいいかなっていうのもあり。あと、すごく激務だったから、体を壊しちゃったりして。
 
今井:そうなんですね。
 
林:そうなんですよ。一回、声が出なくなっちゃったみたいな経験があったんですね。
 
今井:声が出なくなるまで。
 
林:そうなんですよ。ストレスだっていうふうに言われて、放っておくしかない、お休みするしかありませんみたいにお医者さんに言われて。でも、結構楽観的で、美智子様とか雅子様と一緒だから、私は高貴だって思っていたら。
 
今井:(笑)。
 
林:ちっとも良くならなくて、1週間ぐらい経って、ちょっと焦ってきたんですけど(笑)。
 
今井:そうだったんですね(笑)。
 
林:声が少し出ても、また止まってしまったりとかして。そのときに蓮村誠先生の本で、『へこまない人は知っている』だったかな? そういう本があって、それを読んで号泣して、わーんってなったんですね(笑)。
アーユルヴェーダなんて全然知らなかったんですけど。それで、青山にクリニックがあるっていうことを知って、患者として行ったんですね。それで自分自身の体質を知り、言われるままに瞑想したり、お白湯を飲むとか、10時までに寝るとか、朝にオイルマッサージをするとか、基本的な生活を続けたら、声も出るようになったし、なにより自分の内側からはじめて落ち着いたって言うか、大丈夫かもって思える瞬間があったんですよ。
それで、音楽の仕事は辞めるに至るわけですが、以前勤めていた出版社の先輩に、「今、こんな状況で」って話をしたら、うちで企画があればやってもいいし、紹介もするし、みたいな感じで、いろいろとご縁をいただけたんですね。
その中で、服部みれいさんともお仕事でつながったんですが、服部さんが元々は蓮村先生のご本をやっていらっしゃったりもして、服部さん企画の蓮村先生の本を一緒にやらないかと、服部さんから声をかけていただいて、それでお仕事でも蓮村先生とつながったりとかしたので、患者としてではなくて。もうそのときにはあんまりクリニックに行ってなかったので。そういう経緯で。
 
今井:すごいですね。患者として行っていた先生をお仕事として担当するっていうふうになったんですね。
 
林:すごくそれはうれしかったですし、学びが深められたので、アーユルヴェーダについても。自分が予期せぬご縁がどんどん繋がっていって、その結果、今がある感じなので、ライターをやっていていいのかなって思ったりしたときもあったんですけれども、それもアーユルヴェーダに体質診断がありますけど、自分が何の使命を持っているかっていうのが脈診等でご覧になれるんですね、先生たちって。その診断で元々こういう情報を深く広く伝えるっていうのが私の中の一つにあるらしくて、書籍だと、そういうのに合っているのでいいし、一番はじめに単行本のお仕事をいただいたのが蓮村先生だったので、そういうのも見越して、「(美穂さんには)できると思っているのでって、自信持っていいんですよ」っておっしゃってくださったときに、やっていていいんだなって安心したんですけれども。そういう経緯がありました。
 
今井:もう体質として、そういった使命があるっていうのがわかると、確信を持ってお仕事に臨めますね。
 
林:それだからって、上手く書けているかと言うと、自信があるわけじゃないんですけど。 でも、フリーなって11年、今度12年目になるんですけれど、一応続けられてきているので、よかったのかなと思っています。

「ライターやっててよかった!」と思う瞬間

今井:ちなみに美穂さんが、ライターのお仕事をしていてよかったなとか、うれしいなって思う瞬間はどんなときですか?
 
林:そうですね。私に直接、読者さんの声が届くっていうことはあまりないんですけれども、著者の方であったり、編集の方であったり、あと今書き込みもたくさんあるから、そういうので役に立ったとか、わかりやすかっただとか、すごく腑に落ちたとか、そういうふうな、読者の人の何か一助になったっていうのがわかったときに「ああ、よかったな」と、すごく思いますね。
 
今井:ありがとうございます。では最後に最近、美穂さんが手掛けた本などで、告知がありましたらお願いいたします。
 
林:はい。フォレストさんの本ですと、橋爪ゆりあさんの『誰でも龍とおしゃべりできる龍トレ』を編集協力ですけど、しておりまして、すぐ重版したそうで。龍の本ってたくさんありますけど、コミュニケーションするコツをたくさん教えてくださって、書かれていると思うので、お勧めします。
 
今井:あの本も美穂さんだったんですね。って、今、ワナワナとしていました(笑)。ありがとうございます。では、最後にVoicyを聞いてらっしゃるリスナーの皆さまにメッセージをお願いいたします。
 
林:はい。文章を書くときに、どういうふうに書き始めたらいいのかなとか、苦手って思っていらっしゃる方っていらっしゃると思うんですけれども、先ほど申し上げましたけれども、この人に伝えたいなあっていう人に書いてみる。言いたいことを書き切ってみる。最後まで完成させる。そういうことを何個かやってみるといいのかなって思ったりします。今はブログで、たくさんの方の素敵な文章が読めるので、私も楽しみにしています。
 
今井:ありがとうございます。昨日と本日にかけて、ブックライターの林美穂さんと、杉浦さんにお越しいただきました。素敵なお話をどうもありがとうございました。
 
林・杉浦:ありがとうございました。
 
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)


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