見出し画像

【政治】なぜ「骨太の方針」を読んだほうがいいのか?

こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。
 
毎年6月ごろに、日本政府から発表される「骨太の方針」をちゃんと読んだことはありますか?
 
政府支持派だろうと、不支持派だろうと、社会人、ビジネスパーソンだったら、ぜひチェックしておきたい情報の1つです。
 
なぜチェックしておいたほうがいいのか?
 
1月末に発売された書籍『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』では、【「骨太の方針」の重要性】について、経済アナリスト馬渕磨理子さんとマーケティングアナリスト渡辺広明さんがそれぞれの立場からわかりやすく解説しています。
 
今回は、同書から【「骨太の方針」の重要性】に関する該当箇所を、このnote限定で全文公開します。

【TOPIC41】政府が発表する「骨太の方針」で世の中が決まる

☑毎年6月頃に日本政府は「骨太の方針」を発表し、この方針をもとに来年度の予算が決まる。
☑国民としては、国がどんなことに力を入れていくのか、税金を使っていくのかがわかるので要チェック。

 
=====================
「骨太の方針」とは、政権の重要課題や翌年度予算編成の方向性を示す方針の通称で、正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」。財務省主導ではなく、首相主導の予算編成や政策決定を実現するため、2001年に小泉純一郎政権が作成したのがはじまり。以後、民主党政権時代を除き、自民党政権下において毎年発表されている。
=====================

なぜ「骨太の方針」を読んだほうがいいのか?

渡辺 「骨太の方針」って聞いたことはあるのですが、実は僕、よくわかっていないんです。大事なものだというのはわかるんですけど……。
馬渕 めちゃめちゃ大事ですよ! 骨太の方針とは、政府が毎年6月頃に発表する「税財政や経済政策の基本方針」です。この方針をもとに各省庁は政府に要求する予算を決め、調整を繰り返した末に来年度の予算が決まる。だから、あらゆる決定事項の根底に骨太の方針があるわけです。
「世の中のすべては骨太で決まっている」と言っても過言ではありません。
渡辺 骨太の方針って、僕ら一般人も見られるんですか?
馬渕 内閣府のサイト(https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/cabinet/2022/decision0607.html)で確認できるので、絶対に見たほうがいいです。

『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』231ページより

テレビや新聞などのメディアでは、放送時間や文字数などの事情があるため、骨太の方針の一部しか紹介できません。結果、各メディアの判断で重要だと思われる項目が取り上げられるため、少なからず誤解が生じる恐れがあります。
たとえば、骨太の方針の第2 章「1 新しい資本主義に向けた重点投資分野」では、1番目に「人への投資と分配」という項目が挙げられています。岸田政権の政策として、しばしばメディアは「貯蓄から投資へ」という言葉を使いますが、実はこれも「人への投資と分配」という項目の一部分に過ぎないんです。つまり政府は、金融的な視点よりも人への投資を優先しているわけです。残念ながら、こうした細かいニュアンスはニュースでは伝わりにくい。
渡辺 伝わってなさそうですね。
馬渕 でも、原文を読めばわかるんですよ。「人への投資と分配」で挙げられている項目は次の5つです。
 
・人的資本投資
・多様な働き方の推進
・質の高い教育の実現
・賃上げ・最低賃金
・「貯蓄から投資」のための「資産所得倍増プラン」

 
これら5 項目は、すべて並列で語られています。決して金融がメインという話ではなく「人への投資と分配」のなかの1つとして「貯蓄から投資」があるわけです。
渡辺 なるほど、たしかにわかりやすい。「貯蓄から投資」という言葉が大きく扱われがちですが、「人的資本」も「多様な働き方」も、同じ扱いなんですね。
馬渕 そのとおりです。
渡辺 骨太の方針、絶対に読んだほうがいいですね。
馬渕 表紙や目次を含めても全40 ページ。使われている言葉も決して難しくありません。
渡辺 極端な話、骨太の方針を読んでいない成人には「選挙権を与えません!」と言ってもいいくらい。
馬渕 目次や項目を見るだけでも「政府が何を考えているか」が見えてきます。政治・経済など、あらゆるニュースの受け取り方も変わると思いますよ。

ロビー活動の功罪

渡辺 今回の骨太の方針(2022)には、馬渕さんが重視する「スタートアップ」も挙がっていますね。
馬渕 そうなんですよ! 目次に「スタートアップ」という文言が入ったことはすごいインパクトなんです。経済界をはじめ、あらゆる業界が「日本は、国としてスタートアップに力を入れるんだな」と捉えるわけです。メディアで取り上げられる機会も増え、スタートアップを支援する企業の株価も上がりなど、大きな影響が考えられます。
渡辺 それだけ大事となると、骨太の方針を策定の裏では、いろんな業界が政府にすり寄ってそうですよね。
馬渕 「すり寄る」というと語弊がありますが、骨太の方針におけるロビー活動は非常に活発です。毎年、あらゆる民間企業が6月の骨太の方針に向けて動いています。「DX」や「オンライン診療」などの言葉が入るだけで、関連市場が盛り上がり、業界が劇的に変わる可能性があります。そのため、政治家や官僚に対し、自分たちのやっていることの意義を積極的にネゴシエーションしているんですね。

『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』232ページより

渡辺 逆に言えば、ロビー活動をしないと、骨太の方針には入らないということですか?
馬渕 決してそんなことはないのですが、政治家や官僚が判断しなくてはいけない案件って本当に膨大なんです。彼らから見て「どれが本当に日本経済にとって価値があるものなのか」を判断したくても、情報量が多すぎて正確にキャッチするのは難しい。だから、積極的にアピールしないと、会議の話題にも上がらないと思うんですよね。
渡辺 そこはもうちょっと何とかならないのかな? 「ロビー活動されたから採用する」じゃなくて、膨大な情報からも正しく判断できるような仕組みというか、人材というか……。流通や小売業界だったら、バイヤーが「取引先が多すぎて判断できない」みたいなことを言ったらバイヤー失格ですよ。
馬渕 そこは課題かもしれませんね。

POINT

◎「骨太の方針」を読めば「政府が何を考えているか」が見えてくる。
◎「骨太の方針」に関連する業界・企業に大きな影響を与える。
◎ロビー活動に代わる、新たな仕組みづくりに期待。

※今回ご紹介した『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』の内容やデータは、2022年12月1日現在のものです。
※本文中の(第●章、●ページ)という表記は、今回ご紹介した『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』の中で連動したものになっており、そのテーマについて詳しく解説しています。詳しく知りたい方は、同書で直接ご確認ください。

【著者プロフィール】

馬渕磨理子(経済アナリスト)

イラスト:中川画伯

日本金融経済研究所代表理事/経済アナリスト。ハリウッド大学院大学 客員准教授。公共政策修士。京都大学公共政策大学院修士課程を修了。トレーダーとして法人の資産運用を担った後、金融メディアのシニアアナリスト、FUNDINNOで日本初のECFアナリストとして政策提言にかかわる。またIR(インベスター・リレーションズ)について大学と共同研究を行う。現在、経済アナリストとして、フジテレビの夜のニュース番組「FNN Live News α」読売テレビ「ウェークアップ」のレギュラーコメンテーターをはじめ、各メディアでの出演多数。経済アナリストの知見を活かしたセミナーや講演会も好評を博している。ポリシーは「自分の意志で人生の選択ができる世の中を」。誰もが自分の価値観でしなやかに生きることができる社会を目指して活動中。

渡辺広明(マーケティングアナリスト)

イラスト:中川画伯

マーケティングアナリスト。流通ジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。東洋大学卒業後、株式会社ローソンに22年間勤務し、店長・スーパーバイザーを経て、約16年間バイヤーを経験。コンビニバイヤー・メーカー勤務で約770品の商品開発を行なった経験をもとに「FNN Live News α」「ホンマでっか!?TV」(以上、フジテレビ)のコメンテーターとして出演中。その他に、静岡県浜松市の親善大使「やらまいか大使」就任。ニュース番組・ワイドショー・新聞・週刊誌などのコメント、コンサルティング・講演など幅広く活動。2019年3月、(株)やらまいかマーケティングを設立。なお、共著者・馬渕氏とともに、Tokyo fm「馬渕・渡辺の#ビジトピ」のパーソナリティも務めている。

いかがでしたか?
 
『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』では、今回ご紹介した【政府が発表する「骨太の方針」で世の中が決まる】をはじめ、私たち消費者が知っておきたい身近な政治経済関連のテーマ、計45本のTOPICを取り上げて、オールカラーの図版データを交えながら、わかりやすく解説しています。
 
2023年のニッポン経済がどうなっていくのか?
そのためにはどのような生活防衛策をとっていけばいいのか?
 
そのヒントとなる毎日の経済ニュースがより深く、リアルに理解できるようになれる1冊です。興味がある方は、お近くの書店やネット書店で、チェックしてみてくださいね。

書影をクリックすると、詳細がわかります。
全国主要書店で絶賛発売中!

▼同書の「はじめに」「目次」を全文公開中

同書の関連記事はこちら

 
 

 
 
 





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?