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【フォレスト出版チャンネル#156】ゲスト/放送作家|人気放送作家が教える、企画発想のヒント

このnoteは2021年6月18日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

企画を生むために日常で心掛けていること

渡部:フォレスト出版チャンネルのパーソナリティの渡部洋平です。本日も昨日に引き続いて、放送作家の鶴間政行さんに来ていただきました。鶴間さん、本日もよろしくお願いします。

鶴間:はい。よろしくお願いします。お邪魔します。

森上・渡部:よろしくお願いします。

渡部:森上さんとともに今日もお伝えしていきたいと思います。昨日は鶴間さんが30年以上にわたって従事されてきました放送作家としてのお仕事、その仕事内容、放送作家として歩んできた人生についてお伺いしました。本当に話が止まらないと言いますか、本当はもっと短くということだったんですけど、どんどん長くなってしまいましたが、楽しいお話でしたので、昨日の放送をぜひ振り返って聞いていただければと思います。

それでは今日は森上さんも編集者としてすごく楽しみにされていると思うんですけれども、実際に企画のネタの見つけ方だとか、企画の立て方とか、そういった具体的なところについてお伺いしていきたいと思います。前回の放送で、あの有名な「ごきげんよう」のサイコロトークをつくられた鶴間さんなので、サイコロを振ってテーマを決めようみたいな話をしてたんですが、Voicyは音声なのでサイコロを振っても見えないんで。

森上:(笑)。

渡部:森上さんが聞きたい話を聞いてもらうっていう。

森上:(笑)。6個以上ありますけどね。

渡部:6面じゃ足りない?

森上:6面じゃ足りないです。鶴間さんにお聞きしたいことが、まだまだいろいろといっぱいあって、企画について実際にどういうふうに考えていくのかという、発想法とか。
まず、一番気になるのは企画って、昨日の話でもありましたけど、突然舞い降りてくる、閃くものじゃなくて、日常の中から生まれてくるものだって、鶴間さんがおっしゃっていたと思うんですね。で、実際に日常から鶴間さんが心掛けていること、ニュースをどういうふうに見ているのかとか、普段どういう人に合ってるのかとか、企画のために会っているのか、それともなんとなく会っているのか、そのあたり含めて、ちょっと日常から心がけていることについて教えていただいてもよろしいでしょうか?

鶴間:放送作家って基本的におもしろいことを考える係なんですよ。小学校、中学校でいろいろな係があるじゃないですか。給食係とか。係で言うとね、おもしろいことを考える係なんです。

森上:なるほど。

鶴間:それで、ディレクターに呼ばれるわけですよ、係として。だから、もっとそれを細かくすると、発想係。発想って物を送るんじゃなくて、考える係ね。企画係なわけね。だから、精神はおもしろがり屋さん。常におもしろがり屋。だから、もちろんおもしろがったり、批判的精神もあるわけですよ。「俺はああいうふうにはやらない」と。「あれだとストレートすぎる」と。「もうちょっと柔らかく、皆が楽しめる方法はないのかな」とか、いろいろな切り口を。
だから、まずは、感心すること。「これよく考えるなぁ。うまいなぁ」って。うまい発想が街に転がってるわけですよね。テレビの中にももちろん。それは出版でもそうです。本の背表紙を見て、「いいタイトルだな」「『サラダ記念日』、なるほどー」とか、こうなるわけですよね。

森上:はい、はい。

鶴間:俵万智さんの『サラダ記念日』、(田中康夫さんの)『なんとなく、クリスタル』とか、昔の名作って忘れないじゃないですか。読んでなくても。読んでないのに覚えてるって、これが名コピーなんですよ。

森上:なるほど。

鶴間:本屋さんで言うと、要するに読まなくていいから、手に取って買ってくれればいいわけじゃないですか。ねえ(笑)?

森上:いや、本当そうですよ。

鶴間:でも、それはその人にとっては買ったことで、半分読んだ価値になってるわけですよね。いつでも読めるっていうことでね。本を取ってあるわけですよ。だから、まずは世の中にある芥川龍之介にしても、短編とか読んでみて、何で芥川龍之介にこれだけの知識量があって、『杜子春』とか、『蜘蛛の糸』とか『鼻』とかを書いてしまうんだろうと思うわけですよ。ってことは、その前に芥川龍之介をつくった基礎があるわけですよね。中国の書物を読んだりとか、日本の古い書物を読んだりとか、文学を読んだりして、培っているわけですよね。土台をつくっているわけですよね。要は作家として、基本的にはやっぱり圧倒的常識が必要なわけですよ。

森上:そういうことですね。なるほど。「常識を知らなければ、その逸脱がどこの線かもわからない」ということですね。

鶴間:そうです。もちろん好奇心というのも1つあるわけですよ。好奇心のアンテナですよね。だから、常識を知っていると、「あれ、なんか変だな」って気づくわけですよ。ベースがあるから変だと思うわけですよ。

森上:なるほど。今のお話って気付きを得る方、結構いらっしゃるんじゃないかなと思うんですけど、「おもしろいことを考えよう、考えよう」って思っていると、常に常識外れのことに思いや思考が行きがちですけど、そうじゃないってことを今、おっしゃってますよね?

鶴間:そう。飛びすぎてもダメなんですよ。

森上:そういうことですね。

鶴間:飛ぶには段階があるわけですよね。1段階飛ばすか、2段階行くか、3段階行くか、いきなり1から6行ってもね、「それはシュールだ」とか言われちゃうわけですよ。

森上:なるほど(笑)。車のギアで言えば、いきなり5速入れちゃうみたいな。そういうことですよね?

鶴間:ええ。それは車も傷つくし、やっぱり心地よい運転をするんだったら、まずは1、2、3、4、5と考える練習するってことですよね。で、状況に合わせて「ここは1から4いけるな」とかね。さじ加減を学ぶわけですよね。空気を読むということね。だから、段階を知っていれば、「ここは飛ばしてもオッケーだ」とかっていう感覚を学ぶわけで、そこにぶっこんでいくっていうことは正しい。でも、ぶっこんで、ちょっと飛びすぎたかな、みたいなそのさじ加減が学習できるわけですよね。

森上:なるほど。常識がなかったら、基準がわからないわけですよね。物差しがないから。

鶴間:常識をちょっと逸脱して空気読めない感じも、知らない人がやるとあって。だけど、エガちゃん(江頭2:50)みたいに、エガちゃんというキャラを確立しちゃうと、もうそれは何やっても許されちゃうってことになるわけです。

森上:なるほど、なるほど(笑)。

鶴間:それはもう、飛び抜けちゃってるのね。そればっかり考えてると、それはエガちゃんっていうものありきだから、いつも「発想はベースをどうずらすか」っていうだけのことなんですね。固定観念、既成概念っていうみんなが当たり前だと思っているところにいい落とし穴があるわけですよ。それを探すのが、おもしろいなと思うんです。

無意識でやっている当たり前を、意識的に崩してみる

森上:なるほど。そもそもその既成概念、固定概念っていうのが、自分の中にちゃんとなければ、わかってなければ、その落とし穴を見つけようがないということですね。

鶴間:そうなんですよ。だからこそ、毎日アンテナを立ててれば、何かしら発見できるんですよ。これをルーティーンにしちゃうと、発見できなくなっちゃう。

森上:なるほど。ほう、ほう。それ、もう少しかみ砕いてお願いできますか?

鶴間:歯を磨くにしても、自分の歯ブラシを入れる角度って習慣でもうできているじゃないですか。だけどそれを、前歯の2本の1、2があるじゃないですか。でかいやつ。あれを「1、2から最初磨いてみよう」とかね。「上の奥歯の右奥からいこうか」とかって、要するにいくらでも構成できるんですよね。ただ、そこにエネルギーを誰も入れないわけですよ。

森上:そうですね。

鶴間:当たり前に歯を磨こうと思ってる人が98人にいるわけですよ。100人のうち。だけども、それ以外の2人は、そこをおもしろがって研究する。自分自身の研究ですよ。発表するっていうことじゃなくて。だから、「前歯ちゃん、磨きますよー」って言いながら磨いてもいいわけですよ。だけども、そこで「前歯ちゃん」って言う必要はないわけですよ。でも、言ってもいいんですよね。そこを無駄と感じる人もいて良いんですよ。「こんなことやって」って。だから、あらゆることをおもしろがれるんですよ、全てにおいて。
朝起きて、無意識に息をして、トイレに行ったりするじゃないですか。起きた瞬間に「今日も空気をありがとう」って言って、一生懸命吸ってもいいわけですよね。感謝してないわけですよ。当たり前と思っちゃっているから。だから「右目から開けます。続いて左目を開けます」と起きてもいいんですよ。無意識にみんな起きてるわけですよ。そこをおもしろがれば、いくらでも寝るときまでおもしろがることが2000個から3000個ぐらいあるわけですよ。

森上:なるほど。それをやるかやらないかだけですね。意識して。

鶴間:そう。意識ですよ。だから、忙しいんだったら、それは排除していいわけですよ。だけども、たった3秒でできることじゃないですか。「右目開けます。続いて左目開けます。両眼オープン!」とかって言いながら、朝起きればいいわけじゃないですか。

森上:なるほど、なるほど(笑)。

鶴間:1年くらい前に1個発明したんですよ。夜、寝るときに「さあ、寝よう」って思って寝るじゃないですか。頑張った日は「もう寝かしてくれよ」っていうときもあるじゃないですか。だけども、余裕のあるときは部屋を真っ暗にして布団の中で、今日1日の早回しをやるんですよ。朝起きてからベッドに入るまでの、自分の記憶があるじゃないですか。どこに行って、何を食べて、どういう風景を見て、誰と会ったっていう。それを自分の画像を朝からずっと早回しで、キュルキュルキュルキュルーって全部早回しするんですよ。そのときに今日のベスト2を決めるんです。

森上:ほー。なるほど。

鶴間:これ、ベスト3だと義務になっちゃってつらいんですよ。義務はダメなんですよ。ベスト3ってかっこいいんだけどね。番組の企画としてはベスト3なんだけど、僕たちが何の労働にもならない趣味でやることは、義務にしちゃうと続かないんですよ。

森上:なるほど。続けるほうが大事?

鶴間:そうなんですよ。で、1個だと選びづらいんですよ。ベスト1って難しい。だから2個決めるんですよ。朝8時起きたら、「これ1個、それかもしれないな」と思いながら、2個目を探しながら夜までいくわけですよ。そうすると、2つ決まるの。「ラーメンがおいしかった」でもいいんですよ。「どこどこで、人とぶつかっちゃって書類を落としてしまった。でも、その人がきれいな人だった」とか。そういう出来事でも何でもいいんですよ。あとは「スーパームーンだった」とか、「満月を見た」とかで構わないですよ。それを僕は趣味でやってるの。義務でやっているんじゃなくて、寝る前には「そうそうそう! 忘れてた、忘れてた」って言って。「久々に早回しで寝よう」って思うわけですよ。

森上:それはベスト2を決めたら、何かメモをしたりとかするんですか?

鶴間:しないです。してもいいんですよ。でも、それは自分の中の寝る前の遊びの儀式として、「こんなことやってる奴いないだろうな」と思いながら、おもしろがっているんですよ。

森上:なるほど(笑)。

鶴間:だから、いつも頭に浮かぶのは「こんなことやってる奴、世界で8人ぐらいだろうな」とか思いながら。僕だけではないなと思って、あと7人ぐらいいるんじゃないかなって気がしてて。世界中だったらね。

森上:この放送で10人くらい増えるかもしれないですよ。

渡部:(笑)。

無意識を意識する効用

鶴間:毎日やる必要ないですから。「そうだ、そうだ」って思い出したときにやっていただければ。

森上:なるほど。それがトレーニングになってるから、閃きと言うか、いざというときにそういったものって結構出てくるもんなんですかね?

鶴間:何か企画を立てる人は、自分が魔法のラミネートチューブだと思う。歯磨きの。捻り出しても中は空なんだけど、でも、それを出すのが仕事だから。魔法のラミネートチューブで、さっき森上さんがおっしゃったように、あらゆるところにアンテナを立てて、いつの間にか補充してるってことですよね。

森上:あー。はい、はい。つまり、世の中で言うインプット的なことになるわけですね。

鶴間:驚いたり、感心したり、さっき最初に言いましたけれども、「あれは違うんじゃないの? あれはひどすぎるよ」っていう、それの改良案を考えるということですよね。「あれよりもうちょっといい考え方ないのかな」って、それはもう完全な訓練ですね。

森上:なるほど。「僕だったらこうするな」とか。

鶴間:昔、何かで読んだり、言われたことで「批判するのは簡単だ」と。「批判するんだったら、それをこうしたほうがいいじゃないかっていうのを1個考えなさい」と。そうじゃないと、ただの批判している人になっちゃうから、代替案をセットにして批判しなさい、と。だから、習慣的にそれをセットにするってことが、自分の中で当たり前にしてるってこと。

森上:なるほどね。やっぱり無意識状態でやっていることに、ちょっと一回足を止めてみると言うか、意識を向けてみるとか。

鶴間:自分をもう1人、俯瞰で見れる人間をつくるってことですよね。よく「俯瞰力」って言うけれども、もう一人の自分とどう付き合うかっていうことですね。結局、僕たちって怠け者じゃないですか。自分が監督で、自分が選手だから、監督が「もう寝るよ」って言えば、「はい。寝ましょう」ってなっちゃうわけですよね。

森上:なりますね(笑)。

鶴間:もう一人の自分が「これ、明日でいいんじゃないの?」ってなると、「はい。明日にします」って(笑)。

森上:いや、本当ですよね。今、お話をいろいろと聞いている中でちょっと思ったのが、人がスルーしていることに、あえてちょっと足を止めてみて。

鶴間:そうです、そうです。

森上:何か執着してみると言うか。

鶴間:人がスルーしていることの前に、まずは「自分が無意識で人と同じようにやってることに気づく」ってことですね。自分のルーティーンから探っていかないとダメなんですよ。「あー、これ無意識だな」って。無意識はとてもいいことなんだけども、無意識を意識することで何かを発見できるんですよね。

森上:なるほど、なるほど。脳科学の世界でもそういうことを唱えている方って、専門家さんでもいらっしゃいますよね。無意識っていうのをどうしていくかって。渡部さん、結構そのあたりって聞いたことあるよね?

渡部:そうですね。すみません。森上さんから振られたことと、別のことを答えちゃうんですけど、鶴間さんの生活と言うか、もう生き方そのものだなって感じがして、本当に「何事も楽しむ」と言いますか。企画を立てるっていうところもそうなんですけども、生きているのを楽しまれている感じがすごくいいなと感じましたし、リスナーの方でも企画を立てる、立てない関係なく、「毎日がちょっとつまんないな」とか、「退屈だな」と思っている方が、今の鶴間さんみたいな視点を持って生きていたら、めっちゃ楽しく毎日過ごせるんじゃないかなっていう気がして。

森上:ほんとですね。確かに。

渡部:結果、パフォーマンス上がりそうです。

森上:確かに、確かに。だから、なにげなく目に入ってくるものに対しても、ちょっと違う視点で見てみようとか、そういったことだけでもいろいろ変わってきますよね。例えば、電車の通勤でいつも同じ車両に無意識で乗ってるかもしれないけど、車両を変えてみるとか。そういったことっていうのも、そうかもしれないし、たまに聞きますけど、帰る道をあえて一駅先まで乗ってみて、そこから歩いて帰ってみるとか。

毎日をおもしろくするのは、誰か? 何をすることか?

鶴間:それって話には聞くんだけど、なかなか実践できないですね。

森上:できないですね。

鶴間:そこにチャンスがあるのね。それをチャンスと思える人間にちょっと改造しなきゃいけない。でも、人間っていうのは改造しても、3回、それを続けて「何もおもしろいことが起きなかった」って言って、辞めちゃう。

森上:ああ、なるほどね。

鶴間:だいたい普通の人は3日で辞めるだろうなあってところにまたチャンスがある。

森上:なるほど(笑)。どんどんやる人が減ってきますからね!

鶴間:そうなんですよ。だから、「いやいや、4日目、4日目」っていうことでおもしろがるっていうことができないと、おもしろ人間になれない。「つまんない」っていうのは究極的に言うと、行動してないってことなんです。

森上:なるほど。そういうふうに思っちゃう人はね。

鶴間:「つまんない」っていうことを、僕はあるときから削除したんですよ。つまんないのは自己責任だから。人がおもしろくしてくれるわけじゃないじゃないですか。人は人でやることいっぱいあるしね。で、僕の大学1年か2年のときの手帳を見ると、「今日もつまらなかった」って書いてあるの。

森上:(笑)。でも、ラジオの投稿だけはしていたんですよね?

鶴間:毎日はしてないですけども、ネタを考えたりはしてたんでしょうけども。その1974年ぐらいの手帳を見るとね、「今日もつまんなかった」って書いてあって。でも、古い手帳って、取っておくもんですね。おもしろい。やっぱり。

森上:なるほど。それを振り返る上では。

鶴間:つまらないって自己責任ですよ、やっぱり。外に行くって言うか、散歩するでもいいし、よく「外の空気を吸いなさい」って言うじゃないですか。これって、ある意味正しいような気がするのね。外の空気を吸うことによって、何を発見できるか。でも、さっきも言いましたけど、すぐ発見できないわけですよ。すぐ発見できると思うから、3日坊主になっちゃうわけで。そこに工夫が1つ必要になるわけ。それが企画なんですよね。工夫する自分をどうつくるかなんですよ。さっき森上さんが言っていたように、帰る駅までの道をちょっと変えてみる、それも工夫じゃないですか。無意識だと同じ道を取っちゃうわけですよ。生活の中で、短距離で時間もかからない効率的な方法を毎日歩くたびに研究してるわけですよね、無意識に。その道が自分の中で1番駅に行くのに短い時間で行けるってことで、編み出すわけですよね。その編み出し方っていうのは普通なんですよ。そこに気づくっていうことですよね。

森上:なるほど、なるほど。

鶴間:それは、みんながやってることだから。実はみんなの中にいる限り、感動はつくれないんですよ。

森上:なるほど。「98対2の法則」で言うと、98側にいる人がやっていることですね。その「効率化」っていうのはね。

鶴間:そうです。僕はいつも98と2を行ったり来たりする、ってことなんですよ。ずっと2のほうにいるっていうことじゃないですよ。とにかく何も考えなければ、ずっと98なんですよ。だけど、ここから脱出するためには、何をしたら脱出できるんだろうな、とか。僕はいつも考えているっていうことなんですよ。

森上:なるほど。98というのは、先ほどチラッと話をしていた既成概念とか、常識だと。

鶴間:そうです、そうです。

森上:やっぱりそこに常に少し足を入れながら、2に行くみたいな。行き来するという感覚ですかね。

鶴間:ラジオをつくっているときは、制作者の場合は2のほうにいるわけですよね。それで家に帰ったら、98のほうで視聴者になってみて、もう1回、自分の番組を見ると。これは98の気持ちで見ると、どういうことなのかなって、行ったり来たりしながら番組をつくっていたってことなんですよね。

森上:なるほど。その意識は確かに大事ですよね。それをずっと2のところだけに意識を向けちゃうと、それはそれで離れてっちゃいますもんね。おもしろさがなくなっていっちゃう。

鶴間:「俺のやり方だ」って、それでたまに成功する人もいますけどね。それがまた魅力的だったらね。行ったり来たりが正しいかっていうのは、自分に合ってるかってことが大事なんですよ。それをおもしろがれるかが大事なんですよ。

森上:世の中には「天才」と呼ばれる感性の持ち主、例えばお笑い芸人さんだったり、タレントさんとかで、2のほうだけで、ずっと突き抜けてきた人がピックアップされやすいけども、それは稀だということですよね。

鶴間:自分が天才じゃないことは、自分自身が1番知ってるわけじゃないですか、僕たちは。東大にも行けなかったし、東大を受けようともしなかったし。凡人は凡人なりにどうやっておもしろく人生を切り開いていくかっていうことで、どうおもしろがるかっていうことにしか、活路はないような気がするんですよね。

森上:確かにね。そこはもう誰もに与えられた自由ですもんね。

鶴間:そうです、そうです。何をやっても良いし、犯罪をしなければね。理性をちゃんと持っていれば、何を考えてもいいんですよ。

森上:そこは自由ですよね。制限しているのは自分だってことですね。

鶴間:そんなに狭くないわけだから、それって実は。実は広い世界なんですよね。それで、「つまんない」とか、「おもしろくない」とか、「自分は何やったらいいんだ」って、「自分のやりたいものが見つからない」って言ってるんだけども、やりたいものなんてそんな簡単に見つかるわけがないですもんね。まずは「働く」ってことはどういうことかって学んでから見つけるべきですよね。「労働ってこういうことなんだ」って、「報酬をいただくってこういうことなんだ」ってことを学習してから、自分は何に向いてるとか、何をやりたいかを探したほうがいいですよね。

芸能界の重鎮とタッグを組んだ新刊テーマは「才能」

森上:なるほどね。日常のお話をいろいろとお聞きしてきたんですけど、渡部さん、ちょっとお時間がかなり……。

渡部:そうですね。じゃあ、次のテーマにいくわけですね。もう1回サイコロを振って。次のサイコロは何が出るかは、森上さんが知っていると思うので。

森上:そうなんです(笑)。サイコロを振って、今出たのがですね、浅井企画という老舗お笑いタレント事務所で専務取締役として、60年以上にわたって芸能マネージャーをされてきた芸能界の重鎮と言うべき、川岸咨鴻(ことひろ)さんという方と鶴間さんとの共著で『芸能界で学んだ人の才能の見つけ方、育て方、伸ばし方』っていう新刊が、(2021年)6月11日に出たんですよ。

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芸能界って才能がせめぎ合う最高峰と言うべき世界じゃないですか。そこで、人の才能をどう引き出して、どう育てて、どう伸ばしてきたのか、それを芸能マネージャーの方と放送作家の鶴間さんのそれぞれの立場で、数十年にわたって培ってきた経験とか、知見から生み出したノウハウをまとめていただいた新刊です。それが、最後のトークと言うか、テーマです。鶴間さん、今日と昨日にお話しいただいたことも、ちょこちょこ書かれていますよね?

鶴間:芸能界も一般の方も、おもしろがれるってことと、才能を伸ばすっていうことは根本的に根っこは一緒なんですよね。芸能界って派手に見えるだけで、明日の保障がないってことですからね。はっきり言って。

森上:あっちの世界は特にね。

鶴間:そうなんですよ。だから、みんな必死なわけですよね。だから、そこがおもしろいってことですね。当たれば大きいっていうわけで。読者の皆さんの中にも、才能がまだ磨かれてない、原石としてあるんだけども、それをどうやって活かしたらいいのかわからないし、どう自分で磨いたらいいか、どう伸ばしたらいいかわからない方も、芸能人にたとえて、それを自分に置き換えて読んでいただければ、すごい教科書になってるんじゃないかな。教科書って言うと、お勉強チックになってしまいますけれども、日常のヒントですよね。芸能界を自分に置き換えて、自分をよりおもしろがって磨く本にしてほしいなっていう感じですね。

森上:そうですよね。今日いろいろと伺った鶴間さんのお話のエッセンスが入ってますし、もう1人の共著者の川岸さんはもうレジェンドですよね。

鶴間:僕が入ったときに、もうすごく偉い感じでしたもん。

森上:偉い感じでしたか(笑)。

鶴間:だから、45年前とスタンスは変わってないですよ、川岸さんは。顔は苦みばしっていますけど、心根はものすごい柔らかくて、みんなをどうやって売ればいいかということだけしか考えてないですもんね。

森上: 80を過ぎた今でさえ、現役で現場に足を運ばれていますもんね。

鶴間:そうなんですよ。そこがすごいなって。やっぱり現場の空気。現場の空気って、これから本番っていうときは、時代を超越してみんな一緒ですからね。人が入れ替わっているだけだから。本番に望む空気っていうのは、もう普遍的に変わんないと思いますよ。その現場の空気をずっと吸い続けているから、お若いんですよ。

森上:そうなんでしょうね。

鶴間:経験値もあるし、それと今の空気を吸っているからこそ、それをミックスして、時代を読みながら、またタレントをどうやって育てていくかっていう目線を持っていらっしゃるんじゃないかなと思いますけど。

森上:いやー、本当にそうですよね。その辺りは、本の中でも詳しく書かれていますので、お2人に共通するキーマンは萩本欽一さんですね。

鶴間:欽ちゃん。

森上:欽ちゃんですね。

鶴間:浅井企画でマネージャーさんを育てたりしましたからね、欽ちゃんは。

森上:そのあたりの「欽ちゃん流の育て方」の話も書かれてますので、ぜひ。それで、鶴間さん、欽ちゃんと言えば、クラブハウス。

鶴間:そうですね。やってますね。金曜日の夜21時から1時間ほど。こういうVoicyと同じような感覚でやってますので。

森上:鶴間さんと欽ちゃんと、あと土屋さん。

鶴間:土屋さんです。T部長ですね。「電波少年」のね。

森上:その3名で。僕もクラブハウスで唯一レギュラーで聞いているのは、それだけです。

鶴間:(笑)。

森上:あれだけはおもしろいです、本当。他は時間だけ過ぎちゃうんですけど。あれは本当におススメなので、ぜひ興味があったら。

鶴間:そうですね。覗いてみてください。

森上:リスナーの方もぜひ覗いてみてください。鶴間さん、予定よりもすごく長い時間、すみません。

鶴間:いえ。こちらこそ。

森上:渡部さん、そんな感じで。

渡部:はい。ありがとうございました。

鶴間:渡部さん、ほとんど喋ってないじゃない。

渡部:そうなんです。僕、今日もイチリスナーとして聞いてたんですけど、よく言われるんです。

一同:(笑)。

渡部:聞いてるだけのパーソナリティなんです(笑)。

鶴間:じゃあ、僕たち長く話しちゃったけど、何をキャッチしましたか? 今日の話で。

渡部:ちょっとさっきと重なってしまうんですけれども、「企画を立てる」っていう具体的な話よりも、どういうふうに日々生きて行くと何が生まれるのか、どういうふうに日々を過ごせばいいのかっていうのは一番僕の中では響いたと言いますか、日々をどれだけおもしろがるか。つまらないこととか、嫌なこととか、めんどくさいこととか、いろいろとあると思うんですけど、それをいかにおもしろがれるかという視点を持っているだけで、見え方が全く変わるなって言うのは、今、鶴間さんのお話を聞いていて改めてが気が付かされたと言うか。

鶴間:ありがとうございます。ちゃんと伝わってたことがわかりました。

森上:(笑)。

渡部:黙って聞いていましたからね(笑)。

森上:リアクションもせずにね(笑)。

鶴間:よく子供にも言っているんですけど、「人生はめんどくさいことの連続だからね。そのめんどくさいことに“welcome”って言える自分をどうつくるかだよ」って。

渡部:そうですね。自己責任っていう話もされてましたけど、そもそも自分がどう捉えるかで変わっちゃうと思うんで、本当にそこを改めて教えてもらったなって感じました。

鶴間:僕だって毎日、朝起きるときも、「もうめんどくさいな」って思うことが多々あるんですよ。完璧ではないんですよ。究極のダメ人間が考え出した継続する方法なんですよ。だから7日連続はできないんですよ、僕だって。2/7から3/7ができて、よくできた週なんです。相撲で言うと、幕下とかは7番しか取らないわけですよ。15日あるけどね。そうすると、4勝3敗が難しいの、それでも。でも、やらないよりはやったほうがいいっていう発想なんですよ。1勝6敗でも、2勝5敗でもいいから、やることが大事。しかも、それを継続するってことがね。

森上:なるほど。土俵に上がり続ける。

鶴間:そのとおりです。負けてもいいの。上がり続けるんです。

渡部:僕らも自己啓発の本を出したりとか、自己啓発の話をよく聞くんですけど、もうすごくシンプルここに真実があったような気がします。鶴間さんの話に。

森上:いやー、ほんとだよね。2日間にわたって、すごくお忙しい中、ゲストにお越しいただいてありがとうございます。

渡部:ありがとうございました。では、6月11日に発売された鶴間さんと川岸さんの共著・『芸能界で学んだ人の才能の見つけ方、育て方、伸ばし方』。今のこのVoicyの方にもURLを貼ってあるので、興味がある方はぜひチェックしてみてください。あと、金曜日21時からクラブハウスでもやられているということですので、ぜひそちらでも鶴間さんの情報をチェックしてほしいなと思いました。それでは鶴間さん、森上さん、今日は本当にありがとうございました。

鶴間:はい。失礼します。

森上:ありがとうございました。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)


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