数えるだけで、集中力と自制心を高める方法
こんにちは。
フォレスト出版の森上です。
呼吸の専門家として知られ、『呼吸で心を整える』の著者・倉橋竜哉さんにお会いしたとき、こんなことを聞かれました。
「森上さん、1日の生活の中で【自分らしい呼吸】をしている時間がどれくらいあるか、考えてみたことはありますか?」
自分らしい呼吸? そもそも当たり前のようにしている呼吸に、「自分らしさ」なんてあるのか、ちょっと理解ができなかったので怪訝な顔をしていると、倉橋さんは次のような例を挙げてくれました。
◎朝、目覚まし時計で叩き起こされて、焦った呼吸をする。
◎満員電車に詰め込まれて、息が詰まる。
◎出社したら、上司から叱責され、部下からの突き上げで、息苦しい。
◎お客様から無理難題を言われて、これまた息苦しい。
◎休憩中にスマホをいじって、ゲームや情報に煽られて、一息がつけない。
「このようなことって、ありませんか?」と倉橋さん。
たしかに……。これらはすべて「自分らしく」はないかも……と納得できます。
もしかしたら、ホッと前向きな「ため息」をして、自分らしい呼吸ができるのは、帰宅してお風呂に入ったときぐらいかもしれません。
そんなことを思っていると、倉橋さんは次のような助言をしてくれました。
「私たちは、自分の息づかいをまわりの『環境」や『誰か」に支配されている。そう言っても過言ではないんです」
なるほど。意識していませんでしたが、環境や誰かによって、いつの間にか呼吸の状態が変わっているのかもしれません。
それについて、倉橋さんは著書の中で次のように指摘しています。
激しい運動をしているわけでもなく、体は安静に過ごしているはずなのに、息づかいが浅かったり、穏やかでないときは、心がまわりに振り回されている状態になっています。
それは、自分の人生を歩んでいるはずなのに、いつも誰かに心を乱され、頭の中を支配されているとも言えます。
――『呼吸で心を整える』より
では、どうすれば、自分を取り戻すことができるのか?
息づかいを変えれば、心の状態を変えることができます。
そして、息づかいは、自分の呼吸の仕方を意識すれば、簡単に変えることができるのです。
――――『呼吸で心を整える』より
倉橋さんが独自開発し、国内外4万人以上が実践している「マイブレス式呼吸法」の中に【数える呼吸】というものがあります。
「数える呼吸」でやることは、呼吸の回数を数えることだけなのですが、大切なポイントがあります。
それは、「できるだけ余計なことを考えない」ということです。ただひたすら呼吸の回数を数えることに意識を集中します。
「なんだ、そんなこと簡単だよ」と思う人もいるかもしれませんが、実際にやってみると、これが結構大変だということがわかるはずです。
たった2~3分の間ですが、いろんなことが頭に浮かんでくることでしょう。
「あのメールの返信をしないと……」
「あの仕事の期限はいつだったけ?」
「今日のランチは何にしようかな」
などなど、いわゆる想念や雑念がいろいろ頭に浮かんできて、呼吸の回数を数えることに意識を向けるのを邪魔するはずです。
想念が浮かんできてしまうことは仕方ありません。ただし、このとき浮かんできたら、そのままそれについて考え続けるのではなく、「受け流す」ようにします。
たとえば「メールの返信をしないと」と頭に浮かんだとしたら、どんな文にしようかと考え続けるのではなく、「それはいったん横に置いて、呼吸の回数を数えることに意識を向けよう」と意識を戻してください。
――『呼吸で心を整える』より
「数える呼吸」は、【自制心】や【集中力】を鍛えるのに最適だというのですが、もう少し具体的なメリットがあると倉橋さんは言います。
いつも「忙しい、忙しい」と感じている人、あるいは、それが口癖になっている人に、効果てきめんです。
たった1日数分でも「数える呼吸」で雑念や想念を受け流す心のトレーニングを毎日続けていると、だんだん日々の生活の中から「忙しさ」がなくなっていきます。
①やることが少なくなる
今まで「なんとなく手をつけていたこと」「とりあえずやっていたこと」など、あとから考えれば別にやらなくても困らなかったけれど、そのときはやらないと落ち着かなかったことをサラッと受け流せるようになります。
不要不急のメール返信とか、義理のお返しとか、ネットや雑誌などの情報にあおられてやっていたことなど、「今はそれをやらなくて大丈夫」と思えれば、受け流しても心は穏やかなままでいることができます。
数える呼吸で受け流す心のトレーニングをしておくと、日常の中であれもこれもと「あたふたする」という場面が少なくなります。
②作業が早くなる
何か作業をするときは「初動」が一番エネルギーと時間を使います。
作業の途中で集中力がとぎれたり、雑事が間に入ったりすると、再びそれに取りかかるには、また「初動」のエネルギーを費やす必要があります。
数える呼吸で集中力や自制心を鍛えることで、雑事に心が振り回されなくなり、1つの作業に長く集中して取り組めるようになります。
1つの作業を早く終わらせられるようになると、自信もついて心理的負担も軽くなり、次に同じことに取り組むときに軽い気持ちで取りかかることができるようになります。つまり、次回の「初動」のエネルギーを減らす効果もあります。
③「忙しい」と感じなくなる
そもそも、「忙しい」とはどういう状態なのでしょう?
やることが多くある人が、忙しそうにあたふたしているかというと、そんなことはありません。
まわりから見れば、たいしたことをやっていないように見えても、本人はいつも「忙しい、忙しい」と言っている場合もあります。
「忙しい」とは、今、目の前にあること以外のことを考えている心の状態です。
今、目の前にやることがあるのに、「このあと、あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ」と心が未来にとらわれています。
数える呼吸で、受け流すトレーニングをして集中力を鍛えると、今、考えなくてもいい未来のことは受け流せるようになり、今、目の前にあることに集中できます。
そうすると、おのずと心の中から「忙しい」が消えていきます。
「忙しい」という字は「心を亡くす」と書きますが、たった1日数分でも毎日「数える呼吸」を続けることで、心を亡くさずに穏やかな日常を送ることができるようになります。
「忙しくて呼吸法を行なうヒマなんてない!」と言う人ほど、数える呼吸を試してみてください。
――『呼吸で心を整える』より
そんなメリットがある「数える呼吸」のやり方は、次のとおりです。
「数える呼吸」のやり方
①背筋は、腰に上半身がきちんと乗っている状態にする。
②手のひらを(座っているときは)上向き、(立っているときは)前に向ける。
③目を開けて1点を見て、息を吐くところからスタート。
④ゆっくり息を吐いて、十分吐ききったら2、3秒だけ息を止める。
⑤力をふっと抜いて、自然と入ってくる息を鼻から吸う。③~⑤を10回繰り返す。
――『呼吸で心を整える』より
▲『呼吸で心を整える』113ページより
ポイントは次の5つです。
①息は1回1回吐き切る。
②細く長い息をする。
③できるだけ余計なことを考えず、呼吸の回数(10回)を数えることに集中する。
④行なっている最中に雑念が浮かんできたら、いったん横に置いて受け流す。
⑤意識して息を吸おうとしない。
――『呼吸で心を整える』より
*
いかがでしたか?
倉橋さんの著書『呼吸で心を整える』では、今回ご紹介した「数える呼吸」以外にも、
◎ゆるめる呼吸・・・緊張感を和らげる
◎歩く呼吸・・・イヤな気持ちをリセットする
◎声を出す呼吸・・・頭の中に浮かんだ雑念を吐き出す
◎鎮める呼吸・・・イライラや怒りを鎮める
呼吸と心が深く関連しているメカニズムを説き明かしながら、それぞれの情動に合わせた呼吸法をわかりやすく解説しています。興味がありましたら、チェックしてみてください。
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