見出し画像

#285【ゲスト/編集者】マンガ編集者のリアル

このnoteは2021年12月16日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。 


講談社の出版部門をいくつも渡り歩いてきた編集者・井上威朗さん

渡部:フォレスト出版チャンネル、パーソナリティの渡部洋平です。今日は編集部の森上さんと共にお届けします。森上さん、よろしくお願いします。

森上:よろしくお願いします。

渡部:今日もまた、森上さんのお知り合いの方で、素晴らしいゲストに来ていただいております。他の出版社の編集者の方にゲストに来ていただいております。

森上:そうなんですよね。弊社とはあまり縁のないジャンル、漫画の編集者さんでいらっしゃいます。今回は大変お忙しいにも関わらず、ゲストにお越しいただきました。

渡部:ありがとうございます。では、ご紹介させていただきたいと思います。本日のゲストは講談社、漫画Web・アプリ「コミックDAYS」編集長の井上威朗さんです。井上さん、よろしくお願いします。

井上:よろしくお願いします。

森上:よろしくお願いします。

渡部:早速ですが、漫画の編集者の方で講談社なんて聞くと、すごくワクワクしている方もたくさんいらっしゃるんじゃないかなと思うんですけれども。

井上:「マガジン」とかじゃなくて、すみません。

森上・渡部:(笑)。

渡部:では、まず井上さんから簡単な自己紹介をしていただけないでしょうか。

井上:はい。私は元々長く書籍編集者をやっておりまして、そこで森上人脈に絡めとられて、今日来た次第でございます。

森上:(笑)。

井上:長くやっていたこともあり、漫画が講談社の中でもどんどんデジタル化して売っていこうという流れがあったものですから、そのデジタルサービスを預かるということで、去年(収録当時)から「コミックDAYS」というところに来て、編集長をやらせていただいております。

渡部:ありがとうございます。なんだか冒頭から、森上さんと仲がいいのかな、なんて少し感じますが、森上さんと井上さんはどういった経緯でお知り合いになられたんですか?

森上:一人の著者ですよね?

井上:著者が被っていた。

渡部:なるほど。

井上:著者の奪い合いから始まった。

渡部:(笑)。

井上:そんなこともなかった?

森上:いやー。その著者さんの結婚式でお名前だけは知っていたんですけど、初めてお会いするというね。あれがたぶんもう7~8年前なので。そこから井上さんもいろいろと、雑誌をされたりとか、書籍に戻られたりとか。その度にいろいろとお世話になっておりまして、そういう感じで、井上さんは書籍、雑誌を含めた編集者の大先輩でいらっしゃいます。

井上:何をおっしゃいますやら。補足すると、5年前に「クーリエ・ジャポン」と言う、雑誌があって、それが紙の雑誌をやめて、ウェブになる時の編集長をしていたのですが、そのウェブメディアの「クーリエ・ジャポン」のネタがないっていうときに森上さんにネタを提供してもらって助けてもらって、そういうことがございました。

森上:いえいえ(笑)。ありがとうございます。

渡部:さまざまな媒体、特に紙からウェブへのスタートのタイミングで編集長をされていたり、いろいろなキャリアをお持ちだと思うんですけれども、今日の放送では、井上さんの大げさに言うと、これまでの人生について語っていただく回となっておりますので、ここからは森上さんにバトンタッチして、根掘り葉掘り聞いていただきたいと思います。

森上:ありがとうございます。井上さんは、講談社へは新卒で入られているんですよね?

井上:はい。他の会社に勤めたことはないです。昭和タイプですね。

森上:(笑)。講談社に入社されたのは何年なんですか?

井上:1995年。阪神大震災、地下鉄サリン事件のときですね。

森上:またすごい年ですね。それこそ「週刊現代」もバンバン売れている……。

井上:いやー、すごかったですよ。自分の同期が「週刊現代」に配属になったときには、いきなり1カ月くらい家に帰れなかったですからね。

森上:えー! そうですよね。

井上:第7サティアンに行って、張り込んで。何かネタを拾うと、それだけでバンバン売れたっていう。

森上:すごい時代。元木編集長の時代ですか?

井上:そうですね。

森上:一番最初に配属されたのは、どちらでしたっけ?

井上:そのとき、自分は、漫画部門に配属になりました。のちにも行くんですけど、「アフタヌーン」っていう月刊誌の雑誌の編集部におりまして、そこであまり売れない漫画をいくつか担当していたという。

森上:「アフタヌーン」! じゃあ、ちょっと年齢層は若い、青年雑誌になるんですか?

井上:そうです。自分が読んでいたオタク向け雑誌の編集部にそのまま入ったっていう感じです。

森上:学生時代から、「漫画の編集者に!」っていうのはあったんですか?

井上:そういう、割とわかりやすい就職活動です。漫画ばっかり読んでいたので、「漫画編集者になりたい」って言って、就職活動して、漫画をやっている講談社が内定をくれたので、「やったー!」って入ったっていう。

森上:いや、すごい。「やったー!」って軽く言っていますけど、なかなか簡単には入れない、すごいことですからね。

井上:でも、嫌になりましたね。

森上:嫌になった? なんでですか? 漫画やれたのに。

井上:やっぱり昔だから、パワハラばっかりで……。

森上:(笑)。

井上:昔の編集部って適当なんですよ。黙っていても何かは売れていた時代だから。偉い人にノウハウがあるわけじゃないですから。いい加減なノリでいろいろと言うわけですよ。「ピンと来ないな」とか言われますから。

森上:ひどい(笑)。

井上:「なんで具体的にダメ出しできないんだろう?」って。

森上:(笑)。

井上:だから、煽り文句ってあるじゃないですか。開くと端っこに載っている。「次回、○○が死ぬ!」みたいに書いてあるやつ。あれ書くので3日徹夜させられました。

森上・渡部:おー……。

森上:そんな時代なんですね。

井上:ひどいですよ。

森上:じゃあ、最初は漫画の編集者で、あれ(「アフタヌーン」)は週刊でしたっけ?

井上:あれは月刊です。

森上:月刊で出されている中で、最初からいきなりもう漫画家の先生の担当に付くんですか?

井上:連載を持って、そのままいろんな記事とかを作って、雑用とかをやりながら働いていたっていう感じですね。

森上:あの頃は読者カードとか、結構すごかったですもんね。

井上:そういうアナログでくる、読者の声をまとめて欄外に全部書いて。その欄外の版下も、昔だから自分で作っていましたからね。

森上:そうだそうだ。そういう時代ですよね。

井上:刷って、貼って、乾かしたりして、で、校了したときには、編集長に「曲がってる!やり直せ!」って言われて。

森上:(笑)。

井上:「この原稿が斜めに曲がっているのは、お前の精神が曲がっているからだ!」って。

渡部:(笑)。

森上:すごい時代ですね(笑)。今の漫画編集部はやっぱり違うんですか?

井上:今はそんなことないです。全部データで指定できますしね。

森上:そうですよね。あの頃は、版下入稿ですもんね。

井上:ですね。書籍も、基本的に切り貼り作業みたいな感じで。

森上:そうですよね。文字とかも全部指定して。

井上:そうです、そうです。だから、扉の1ページとかも、なんならデザインから素人の編集がするがやるわけで。

森上:ええ! 新人からやらされるんですね。扉の上のあたりとかも。

井上:そうですよ。だから、関係ない、「モーニング」に入る「アフタヌーン」の次号予告の広告みたいなのを作るだけで、また3日徹夜です。もうやってられません。

マンガの吹き出し(セリフ)の書体は、全部同じ!?

森上:いや、すごい時代でしたよね。僕が社会人一年目のときは98年なので。でも、やっぱり版下入稿でしたね。

井上:そうですよね。90年代はまだアナログ版下を結構使っていましたよね。

森上:そうですよね。過渡期でしたね。ワープロでしたからね、やっぱり。

井上:ワープロで、うちで原稿を作ったって、そのテキストデータで入稿させてもらえませんからね。

森上:それは、どういう入稿になるんですか?

井上:プリントアウトしたものを、手書き原稿と同じ扱いで、そこに指定を入れて。

森上:はいはい。まあ、そうですよね。

井上:なんもいいことないじゃないかって。

森上:確かに(笑)。だったら、手書きでいいじゃないかって話ですよね。

井上:DTPっていうものがまだなかったからしょうがないですよね。フロッピー入稿するしかなかったから。

森上:そうでしたよね。フロッピー入稿でしたよね。ところで、吹き出しと言うか、セリフの書体ってあるじゃないですか。

井上:ありますね。

森上:あれって全部の漫画で同じなんですか?

井上:はい。基本的に「アンチG」と言われるフォントを使います。

森上:書体が決まっているんだ、基本的には。

井上:ひらがな部分が「アンチック体」という書体で、カタカナ部分はゴシック。

森上:それって、例えば小学館さんの漫画は漫画で、また違う書体とかってあったりするもんなんですか?

井上:昔は結構違っていたんですけども、90年代ぐらいから、ほとんどみんな「アンチG」になりましたね。

森上:そうでしたか。じゃあ、書体は社を超えて、だいたい共通でやっているんですね。

井上:潮出版社なんかは、漫画から撤退する「コミックトム」がなくなるまで、ずっと吹き出しの中が、ただのゴシックだったんですけども。横山光輝の『三国志』とか、ちょっと違和感があるという。

森上:確かに。なるほど。

井上:昔の「漫画アクション」は吹き出しの中を細い明朝体にしていましたね。『じゃりン子チエ』とか、そんな感じかもしれない。

森上:『じゃりン子チエ』! 双葉社さんですかね。

井上:あとはみんな「アンチG」で揃って、細かいところは違うんですけどね。小学館の漫画は句読点が吹き出しの中にあるとか。

森上:ほう! 講談社は?

井上:講談社は句読点、使わないんです。

森上:使わないんですね!

井上:使わない。句読点、禁止。

森上:句読点、禁止なんですか! そうなんだ!

井上:まあ、「どうしても演出上の効果で、ここに丸を入れたい」って言われたら、入れますけど、基本的には入れないっていう。

森上:そうなんですね。それって、それこそ『あしたのジョー』時代、それこそ内田勝さんという創刊編集長がいらっしゃった時代から、句読点は入れない感じですか

井上:結構入れてないですね。入れているものもあるんだけれども。

森上:それは、初めて知りました。

井上:理由はわからないです。句読点がないものの方が今は主流派ですね、どの漫画を見ても。

森上:そうなんですね。小学館さんの「サンデー」とかには入っていたと。

井上:「サンデー」や「スピリッツ」は今でも入っています。

森上:今でも入っているんですね! すげえ! そんな読み方をしたことがないので。

井上:あれは、「小学一年生」とか、学習雑誌を作っていたから、だから、ちゃんと句読点を入れようってことになったんだと思うんですけど。

森上:会社の歴史っていうのが、相当影響していますね。

井上:そうですね。

森上:そうか。小学館さん、そうですよね。「小学一年生」もありますしね。なるほど。じゃあ、「コロコロコミック」とかも全部入っているのか。

渡部:おもしろいですね、この話。

森上:おもしろいですね。知らなかったです。で、結局、漫画の「アフタヌーン」をやって、そのときに、だいたい漫画って、単行本になるじゃないですか。その単行本も担当編集者がやるんですか?

井上:そうです。自分で、単行本を作って、もうわけわからない。

森上:わけわからない(笑)。どういうことですか?

井上:デザイナーさんに装丁を依頼するというところからして、わからないですからね。

森上:そっか、そっか。それを新人から、やらされるっていう。

井上:もう書籍編集者入門もそこから始められる。

森上:すごい学習の場ですね。

渡部:実践的ですね。

井上:雑ですね。

マンガ家との格闘

森上:いや、おもしろいな。それで、「アフタヌーン」には、どのぐらいいらっしゃったんですか?

井上:5年間、いました。5年間もいたんですけれども、一本も新連載を起こしませんでした。

森上:(笑)。既存の先生を……。

井上:はい。担当しながら、いろんな連載企画を出しては、全部、さっき言ったようにふわっとした理由でボツ……。

森上:実際、漫画の連載が決まるとき、最初はもしかしたら単発でやったりとか。ああいうのって、どうやって決まるんですか? だいたい持ち込みなんですか?

井上:そうですね。やっぱり企画を持ってこられた作家さんと出会いが多かった気がします。90年代ぐらいからは、引き抜くと言うか。よそでやっておられる方に声をかけて、「うちでやらない?」っていうこともどんどん増えてきましたね。

森上:なるほど。実際、「アフタヌーン」時代は、引き継いだ漫画家さんであったにせよ、ストーリーとか、そのあたりに対して、先生によって違うのかもしれないんですけど、編集者がかかわるっていう機会はあるもんなんですか?

井上:それに関しては、確かに自分も、「そうなのかな。俺、話とか考えるの、嫌だな」と思ったんですけども、でもやらないで済みました。

森上:やらないで済んだ(笑)。でも、やる場合もあるんですか?

井上:はい。これ、割と漫画編集者によって流儀があるみたいで、「俺が話を考えちゃうよ」っていうタイプと、「俺は考えたくない」っていうタイプ。長くやっていくと分かれるみたいです。

森上:そうなんですか。それはお付き合いされている先生って言うよりも、編集者自身がどっちのタイプか、みたいに分かれている感じなんですね?

井上:そういうことですね。言ってしまうと、話まで考えるタイプの人は多くの作品を担当できないですね。当たり前だけど。

森上:そっか、そっか。

井上:そんなにいちいち考えてられないので。

森上:なるほど、なるほど。

井上:私は多くの作品を作りたいので、あんまり話を考えたりはしたくないっていうタイプに結果的にはなりました。

森上:なるほどね。一般的によく言われる漫画の世界で、連載だと締切がもうギリギリの先生とか、そういった方を担当したことありますか?

井上:あります、あります。もう本当にクソみたいに遅い奴とかいまして。

森上:(笑)。それは、下版日にまだ原稿が上がってないとか、そういう状態ですか?

井上:もちろんです。

森上:うわー! 大変だよ! そういうときは、どうするんですか?

井上:まあ、漫画って、そのまま完成原稿は写植を貼っちゃうと版下になるので、言ってしまえば印刷所でやってしまえばいいんですよね。で、原画[冨田1] をそのまま順番に「はい。はい。はい」ってやれば。指定は先に入れておいて。

森上:なるほど。

井上:下書きの段階で何を書くかはわかっているので、それで指定は終えることができる。

森上:そっかそっか。その辺の部分のコマ割りとかは全部あるから、清書の部分だけの話だから、一応そこから入稿して、指定はできるわけですね。

井上:そうです。いわゆるイラスト版下以外の文字版下は全部指定を終えているので。

森上:なるほど。そういうことですよね。それを知っちゃったら、ギリギリまでやる先生とかもいるんじゃないですか?

井上:ということですね。

森上:(笑)。そんな先生にもめぐり逢いながら、鍛えられたと。

井上:昔の漫画は割と本当にそんな感じで、結構漫画編集者ってゲラって知らないんじゃないですか

森上:そっか(笑)。もうゲラ自体がないのか(笑)。

井上:要するに原稿校了ってやつですよね。

森上:原稿校了(笑)。すごいな(笑)。じゃあ、井上さんは先生のところから原稿を取ってきて、それで入稿みたいなことはしょっちゅうやっていたってことですか?

井上:しょっちゅうやっていました。本当に地獄のようでした。

森上:地獄ですね。

井上:「朝イチには入れますんで」って言っても、朝イチになってもまだ上がっていないので。先生の家で電話がじゃんじゃん鳴って、印刷の人が編集部にすげー怒って待っているんですけど。

森上・渡部:(笑)。

井上:「なんで井上さんは、先生のところにいるんですか?」って言われて、「いやー……。じゃあ、8枚だけ持って行くね」みたいな感じですよ。半分だけ持って行くみたいな。

森上:なるほど。そこはもういい意味で、先生と共犯者になるわけですね。

井上:いや、なりたくないですよね。そんなもん。

森上:(笑)。言いたくない嘘をついて。印刷所をごまかして。

井上:ほんとに、ほんとに。

森上:いやー、印刷所の営業さんも大変だなー、それ。

井上:むしろ印刷所に申し訳ないって言うか。

森上:そうですよね。毎回、それはね。出版の編集をやっていると思いますよね。

井上:でも、印刷所の人とかと本当に仲良くなって、何十年も経った今でも、たまに飲んだりしますね。

森上:あ、そうですか! お付き合いが! そうですか~。

井上:やらかす漫画家の方とは、当然ながら絆はできあがらずに。担当を離れた瞬間、「もうお前は知るか」っていう感じになり。

森上・渡部:(笑)。

井上:まあ、付き合いはなくなりますね。元々締め切りを守らないような人間性の人なので。あんまりいい奴でもないっていう感じで。

森上:そうですよね。やっぱりそういう先生は残っていかないもんなんですね。

井上:はい。それはあります。先生面している人は、結果的には長期的に続けられない仕事だと思います。

森上:やっぱりそこはそういうものなんですね。いくら人気があっても。

井上:そうですね。

伝説の編集長・元木昌彦さんの下で「Web現代」編集者へ

森上:なるほどね。いやー、おもしろいなあ。それで5年いて、その後は単行本ですか?

井上:いや、自分は1999年に元木(昌彦)という、かつて「週刊現代」「フライデー」を100万部売った人が、とある事件で飛ばされて、作った新しいウェブメディア、「web現代」というところに配属になりました。

森上:「web現代」に行かれているんですか?

井上:はい。

森上:じゃあ、元木さんの元でやられていた?

井上:はい。漫画地獄を抜け出して、今度は新興ウェブメディア地獄に入るわけです。

森上:(笑)。地獄だらけですね。

井上:いや、本当にひどい20代ですよ。

森上:いやー(笑)。「web現代」だから、事件ものとかそっち系ですよね?

井上:そういうことです。今度はそんなんやったこともないようなことで。

森上:「web現代」自体は、「週刊現代」とか「FRIDAY」とか、ああいう報道系の雑誌の記事を集めるだけじゃなくて、自らも記事を作る感じなんでしたっけ?

井上:そういうことですね。今は、「現代ビジネス」っていうものが弊社にありますけども、ちょっとそれに似たスタイルであります。

森上:なるほど。

井上:なので、毎日更新でいろんなウェブならではの読み物を出す。ただし、当時はブロードバンドがなく、ISDN回線で読むんですよ。クソ重い(笑)。

森上:いわゆるウェブメディアの黎明期ですね。

井上:そうですね。ですから、もう画像もものすごく重たくなる。動画なんてのは、たぶん3分以内のとても粗くて小さなものをみんな、30秒ぐらい我慢して見るっていう、そんな感じだったんですね。

森上:そうでしたよね。「web現代」にはどれぐらいいらっしゃったんですか?

井上:2年ぐらいでしたかね。いろいろと本当にひどい目にあったんですけども。

森上:(笑)。

井上:その「web現代」自体がなくなって、デジタルコンテンツ部の「MouRa」っていう、もう今はなくなったプラットフォームなんですけど、それに変わるっていうので、失脚したというので、私も離れることになりました。

森上:そうなんですね。じゃあ、本当にウェブ系には黎明期から結構携わっていた。

井上:ウェブビジネスの黎明期を体験させていただきました。いかにエロがみんなに見られ、お金になるかという、端的に言うと、それを学びました。

森上:(笑)。やっぱりエロは強いですか?

井上:強いですね。では、ちょっと元木という人間の天才ぶりをお話すると、その「web現代」の、ものすごく人気のコンテンツで「激似AV検証」っていう企画があったんですね。芸能クリソツのAV女優を使ったAVってあるじゃないですか。それをサンプル部分的に3分くらいだけ抜いた粗い動画を流すっていうだけのコンテンツなんですけど、馬鹿みたいに大ヒットなんですね。

森上:(笑)。そのときって、「web現代」自体は課金をされていたんですか?

井上:課金も実はしているんです。BIGLOBEっていうプロバイダーと組んで課金をしていて、その「激似AV」のサンプルを見たいがために、みんな、100円を簡単に払ってくるんですよ。すごく多かったです。

森上:かなり儲かったっていうことですよね?

井上:かなり儲かりましたね。

森上:なるほど。やっぱり週刊誌だとグラビアが精いっぱいですもんね?

井上:ですね。で、インターネットって、あの頃は油断すると、ダイヤルQ2につながって怖い目に遭う、そういうイメージもあったけど、講談社とBIGLOBEがやっているんだったら、ぼったくりじゃないだろっていう、そういう安心感もあったんでしょうね。

森上:そうか。そこでもうチャリンチャリンだったのか。

井上:で、売り文句としては「報道である」と。あの芸能人にそっくりな、広末涼子そっくりと銘打った、広〇涼子主演みたいなビデオがあると。これが本当に激似で、けしからんこと言っているのか、我々が検証しようであるまいか。ジャーナリズムとして激似AVを検証するコンテンツを皆さんにお金を払って検証のお手伝いしていただくと。そういうロジックなんですね。

森上:いや、すごいビジネス。

井上:報道コンテンツを売っていました、ということですね。

森上:直接課金サービス、いわゆるサブスクビジネスの本当に初期の頃ですね。すごいな。

井上:で、エロにお金を払う人の言い訳にもなるし、我々も報道という建前でやる。元木という人は、偉大な人だなと思いました。

森上:(笑)。お互いwin-winなんですね。読者もこちらも。

井上:そういうことでしたね。

渡部:いや、森上さん、今日は講談社の井上さんの、とても興味深いお話でしたね。

森上:もうびっくりするくらい……なんか、会社に対して大丈夫かなっていう。これ、井上さんが、会社チェックなしで大丈夫だって言っているんで、逆に心配になっちゃいますけど、それぐらいいろいろお話をいただいて……。井上さんらしいと言えば、井上さんらしいですけど。

渡部:そうですね。というわけで、話が弾み過ぎてしまって、想定より長いインタビューになりましたので、今日はここでいったん区切り、また明日さらなる爆弾発言と言いますか。井上さんからまたおもしろい情報を……。特に漫画に関して、漫画業界の話とかも普段だと僕らだとなかなかお届けできていない情報ですので、ちょっと楽しみですね。

森上:楽しみです、本当。すごく勉強になることばっかりで、本当に楽しみです。

渡部:それでは明日も、講談社の井上さんにゲストにお越しいただいてお届けしてまいりますので、ぜひチェックしてください。

(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)

 

この記事が参加している募集

編集の仕事

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?