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「君たちはどう生きるか」に仏の哲学者はこう答えていた!

フォレスト出版編集部の山田です。

最近話題になっている宮崎駿の新作映画『君たちはどう生きるか?』をきっかけに、自分の人生をどのように生きるべきかについて改めて考えられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事では、『哲学は武器になる 人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50』(山口周 著、KADOKAWA)からフランスの哲学者・サルトルのこの「問い」に対する答えについてご紹介させて頂きます。

ご存知の方も多いかと思いますが、サルトルは世界中に絶大な影響力を与えた20世紀最大のフランスの哲学者です。また、彼は作家でもあり、ノーベル文学賞を辞退した最初の人物でもあります。

そんなサルトルは「どのように生きるべきか?」という問いに対して、
「アンガージュマンせよ」という概念を提唱しました。

何やらおしゃれな響きですが、「?」が3つ以上つきそうな答えです。
ですが、実はこれは英語の「engagement(エンゲージメント)」のことで、「主体的に関わることにコミットする」というような意味になるそうです。

では、何にコミットするのでしょうか?結果でしょうか?
「結果にコミット」っていう聞き馴染みがあるフレーズがありましたね。
でも、ここでは違います。

サルトルは、次の2つを挙げているそうです。

 一つは、私たちは自分自身の行動だということになります。
現代の民主主義社会で生きている私たちには、自分の行動を主体的に選択する権利が与えられています。そのような社会に生きている以上、私たちの行動や選択は自由であり、したがって「何をするか」や「何をしないのか」という意思決定について、自分で責任をとる必要があります。本書ではすでにエーリッヒ・フロムの項で「自由のしんどさ」については考察していますが、サルトルの実存主義においてもまた「自由」はとても「重たいもの」として位置付けられています。サルトルはこれを指して「人間は自由の刑に処されている」と言っています。
 さらにサルトルは、私たちは「自分の行動」に責任があるだけでなく、この世界にも責任があると主張します。これがアンガージュマンによってコミットする二つ目の対象となる「世界」です。サルトルによれば、私たちは、自分たちの能力や時間・・・・つまり「人生そのもの」を使って、ある「企て」の一部として引き受けなければならない、ということになります。

1つ目の「自分自身の行動」にコミットすることには多くの方が共感できるところになるかと思います。一方で、2つ目の「世界」にコミットするというのはどういうことなのでしょうか。

この2つ目に関して、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
私たちは外側で起きていることと自分のことを区別しがちですが、それは間違っているとサルトルは否定しています。その理由について、著者は下記のように述べています。

 外側の現実は私たちの働きかけ(あるいは働きかけの欠如)によって、「そのような現実」になっているわけですから、外側の現実というのは「私の一部」であり、私は「外側の現実の一部」で両者は切って離すことができないということです。だからこそ、その現実を「私ごと」として主体的に良いものにしようとする態度=アンガージュマンが重要になるわけです。

つまり、世界で起きていることも自分ごと化し、主体的に関わっていく必要があるというのがサルトルの主張になります。例えば、戦争に関しても“偶発事件”でなく「私の戦争」にならなくてはならないと彼は指摘しています。なぜなら、反戦運動や逃走、自殺など戦争に抗議することもできたはずなのに、それをせずに主体的な意志によって、戦争を「受け入れた」からです。受け入れた以上、それはあなたの選択であると。

「サルトル、さすがにそれは・・・!」と言いたくなるような厳しい指摘ですが、でもそれくらい自分の意志をもって現実に向き合うことが大事であるという意味なのかもしれませんね。

本書では、サルトルの指摘の大事なポイントして最後に次のように述べられていました。

目の前の組織や社会から突きつけられるモノサシによって自己欺瞞に陥ることなく、自分自身の人生を完全な自由から生まれる芸術作品のように創造することで初めて自分としての可能性に気づくことができるのだと言います。

以上、本書の中からサルトルのアンガージュマンと呼ばれる人生を「芸術作品」のように創造せよという概念についてご紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか。

自分の人生に起きることすべてに自分に責任があるとするサルトルの考え方は時に厳しく感じますが、一方で自分の意志と行動でいくらでも現実は変えていけるということにもなると思います。

忙しい日々を過ごしているとつい受動的になりがちですが、自分らしい人生を生きるために、サルトルのアンガージュマンをぜひご参考にされてみてください。


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