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社長なら押さえるべき「3つの数字」~これだけはチェックして

公認会計士・税理士として1000社以上の経理を見てきた町田孝治さん。町田さんの経験からくる体感として「数字に強い社長は全体の1割」だそう。

役割として発想力や行動力が求められる経営者は、基本的に直感的に物事を進めるので、細かい数字を見たり、入力を積み上げていったりすることが苦手だと言います。

そこで今回は、「社長が見落としがちな3つの数字」をピックアップして、経営者として【これだけは押さえておきたい数値】を町田さんに教えていただきます。

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社長が見落としがちな3つの数字

社長は細かい数字を見るのが苦手で、大きな数字しか見ない傾向があります。
大局的に見るのが社長のスタンスなので、基本的にはそれで正しいと思いますが、大事な数字を見落としてしまっていては、的確な経営判断ができません。
社長にとっては「ここだけは見るべき」という数字があります。それは、
「損益分岐点売上高(黒字と赤字の境目)」
「キャッシュフロー(資金の動き)」
「時間あたり付加価値」

の3つです。
創業当初は、ビジネスを軌道にのせるため、とにかく「売り上げ」を上げなければなりません。
ですから、社長はトップセールスとして営業をかけることに力を入れ、数字としては「とにかく売り上げを見ていけばいい」ということになります。
この段階では、経理は「ミスなく数字を作る」だけでも、どうにか回していけるでしょう。
経理担当者を雇う余裕がないというなら、まずは売り上げを全力で伸ばし、1日でも早く経理を誰かに任せられるようにします。
そこで大事な3つの数字の1つ目が「損益分岐点売上高」です。これはその金額の売り上げだと利益が0円になる売上高を意味しています。つまり損益分岐点売上高を上回る売り上げを上げると黒字となります。
売り上げが増えていけば当然、仕事も増えていくわけですから、従業員を増やしたり、広いオフィスに移ったり、新たな設備を揃えたりということも必要になってきます。つまり、売り上げが増えれば増えるほど、出ていくお金も増えていくのです。
そうなれば、売り上げという「入ってくるお金」だけではなく、「出ていくお金」の数字にも注意しなければなりません。
売り上げだけを見ていればよかった時期と違い、忙しい社長が経理もカバーすることは難しくなってきます。
「売り上げはガンガン伸びているのに、なぜか赤字」という社長は「入ってくるお金」ばかり見ていて、「出ていくお金」が見えていないということが多いのです。
「売り上げが上がっているから」と、どんどん人を増やしたり、仕入れや設備投資に無頓着にお金を使っていたりしたら、赤字になるのは当たり前でしょう。
損益分岐点売上高は、出ていく固定費が多いほど大きな数字になります。
「経費をいくら使うためには、それをカバーするためにどのくらいの売り上げ増加が必要なのか」ということを踏まえたうえで、出ていくお金をしっかりコントロールしなければなりません。
当然のことですが「売り上げを1円でも多くするためには、どれだけ経費をかけても、どれだけ時間をかけてもいい」ということはありません。そのバランスを意識していくためにも常に「損益分岐点売上高」は意識しておくべきです。
2つ目の数字が「キャッシュフロー」です。
お金は会社の「血液」です。そのお金の流れを示すものがキャッシュフローです。
お金という「血液」が回っていなければ、会社は生きていくことができません。
実際に倒産に至る要因は、損益ではなくキャッシュフローです。
どんなに大きな赤字でもお金があれば倒産しませんし、たとえ売り上げが伸びていて、利益が出ていても、今必要なお金がなければ、会社はつぶれてしまうのです。
前述の損益分岐点売上高は、1年間の合計が差し引き利益になるかどうかという視点でしたが、キャッシュフローは違います。
1年の中で1日でも資金ショートする瞬間があれば会社は倒産します。資金についてはタイミングを含めて把握する必要があります。
考え方としては「必要な手元資金を確保すること」が第一で、次に将来の大きなキャッシュフローを把握して対策を打ち、最後に長期的な資金計画を作ります。

ここでは第一の「手元資金」について話します。
手元資金として必要な金額については借り入れをしてでも手元に置いておくべきです。この必要額は会社の状況によって様々異なります。
運転資金としての必要額(これはキャッシュインとキャッシュアウトのタイミングにより大きく異なります)、売り上げの不安定部分を賄う余力(月々の売り上げの変動が大きい職種は特に必要)、万が一のときのために固定費(給与や家賃など)の支払いを確保するための備え、など様々な要因で変わってきます。
どんぶり勘定での失敗例としては「売り上げはどんどん拡大しているから」「数ヶ月後に大きな売り上げがあるから」と、仕入れや設備投資に多額のお金を費やし、現金がみるみるうちに減ってしまうというものです。
設備資金は計画的に確保するでしょうが、売り上げ拡大に伴う仕入れ・外注などは気づくと膨らんでいることが多々あります。
また、「利益が出たことで予想以上に税金を払うケース」「初めての消費税の支払義務が出たタイミング」「初めての中間納税のタイミング」などのケースでは、事前に予測しておかないとまとまった金額の支出になるため、注意が必要です。
現金を守ることは非常に重要であり、「3つの数字」の中で一番見なければいけない数字と言えるかもしれません。

3つ目の数字は「時間あたり付加価値」です。
これは、「社員が1時間あたりにどのくらいの価値を生み出しているか」という指標です。厳密に計算するには細かなデータが必要ですが、おおまかには粗利益を社員の総労働時間で割り算して計算できます。さらに簡易な計算としては、粗利益を正社員の人数で割ることで(1人あたり粗利益として)同様の指標としても計算できます。
日本の労働生産性は低いと言われています。これは、まさにその点を指し示している指標ともいえます。
さらに、「自社の独自性や付加価値をどこに見み 出いだし、いかに高めるか?」「どのような価格設定でどのようなサービスをするのか」というビジネスの根幹に気づきを与えてくれるのがこの「時間あたり付加価値」だと思います。

『会社のお金を増やす 攻める経理』より抜粋・編集)

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(編集部 杉浦)

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