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才能がせめぎ合う最高峰の世界で培ったマネジメント術とは?

こんにちは。
フォレスト出版編集部の森上です。

近年、芸能界が揺れているようです。タレントの不祥事やスキャンダルだけでなく、さまざまな大手芸能事務所からタレントや俳優たちが次々と独立、退所のニュースを見聞きします。

それに対する個人的な意見は、詳しくない立場なので差し控えますが、1つだけ思うことがあります。

独立しようとしまいと、芸能・エンタメ界は、日本中(もはや世界中)から才能が集まり、せめぎ合う最高峰の世界であるということです。

その世界で売れていくためには、生き残っていくためには、並大抵のことではないことは、想像に難くないでしょう。

そんな厳しい世界で、60年以上にわたってタレントと二人三脚、つねに現場に入り、眠っている才能を見抜いて、引き出し、育てて、伸ばしてきた、芸能界の生き字引、伝説の芸能マネージャーと呼ばれる人物がいます。

「浅井企画」という老舗芸能プロダクションで45年にわたって専務取締役を務め、八十を迎えた今でも現役マネージャーとして現場に足を運び続ける“芸能界の重鎮”、川岸咨鴻(かわぎし・ことひろ)さんです。

川岸咨鴻(かわぎし・ことひろ)
元・浅井企画専務取締役。株式会社ICH名誉会長。1940年生まれ。栃木県出身。藤圭子の初代マネージャーを経て、芸能マネージャーとして数々の才能を世に送り出す。コント55号の萩本欽一、坂上二郎をはじめ、小堺一機、関根勤、キャイ~ン、ずんなど数々の一流お笑いタレントを生んだ芸能プロダクション「浅井企画」の専務取締役を45年間務める。2018年4月に株式会社ICHの名誉会長に就任。芸能マネージャー歴60年超の芸能界の重鎮。

そんな川岸さんは、人の「才能」について、次のように語ります。

誰もが才能は持っている。まだ引き出せていないだけ。本人の意識とマネジメント側次第で、誰もが才能を開花させることができる。

そう断言する川岸さんは、厳しい世界で、具体的にどのように、人の才能を見抜き、引き出し、育て、伸ばしてきたのか?

その経験、知恵から見いだしたノウハウを解説した新刊『芸能界で学んだ 人の才能の見つけ方、育て方、伸ばし方』6月11日(Amazonでは6月10日)に刊行されます。

しかも、本書には、川岸さんに加えて、これまた伝説的な人物を共著者にお迎えしています。

「笑っていいとも!」「ごきげんよう」「オレたちひょうきん族」「SMAP×SMAP」「王様のブランチ」など、国民的番組の構成を担い、今も「超逆境クイズバトル! 99人の壁」などの人気番組の構成を担当する人気放送作家、鶴間政行さんです。

鶴間政行(つるま・まさゆき)
放送作家。1954年埼玉県熊谷市生まれ。1976年東洋大学在学中に放送作家を志して欽ちゃん(萩本欽一)に師事する。5年間の居候を経てデビュー。以後、「欽ドン! 良い子悪い子普通の子」「欽ちゃん&香取慎吾の全日本仮装大賞」「笑っていいとも!」「オレたちひょうきん族」「SMAP×SMAP」「王様のブランチ」など、多くの人気テレビ、ラジオ番組を構成。現在は、「超逆境クイズバトル!99人の壁」「キニナル金曜日」を構成。長寿番組「ごきげんよう」のサイコロトークの発案者としても、業界では名高い。

プロフィールからもわかるとおり、タレントたちの才能を最大限活かして、エンタメ作品として企画立案・構成を30年にわたって従事してきた人物です。

そんな芸能マネージャー歴60年超の「芸能界の重鎮」伝説の人気「放送作家」という最強タッグが「人の才能を見つけ、育て、伸ばすための思考法&実践法」を説き明かした新刊『芸能界で学んだ 人の才能の見つけ方、育て方、伸ばし方』の発売に先立ち、今回は、同書の「はじめに」(執筆:川岸)「目次」「おわりに」(執筆:鶴間)を全文公開します。

はじめに

 あなたは、「芸能マネージャー」と聞いてどんな印象を持ちますか?
 タレントのスケジュール管理や身の回りの雑務といった秘書的な役割、メディア露出のための各媒体への営業活動といったイメージを持つ人が多いかもしれません。
 確かに、そのようなことも、担当タレントが気持ちよくスムーズに仕事に専念してもらう上で、重要な仕事です。
 芸能事務所によってそれぞれですが、芸能マネージャーにとって重要な役割の1つに、「タレントの才能を見抜いて、引き出し、育てて、伸ばす」という役割があります。
 文字どおり、マネジメントです。先に挙げた「メディア露出のための各媒体への営業活動」と深く関連してくるのですが、タレントという商品をどのように磨き上げていくか、開発していくか、タレント本人に理解させて、よりよい方向に導いていくかは、芸能マネージャーの腕が大きく問われます。競走馬の世界でたとえると、調教師的な役割です。
 芸能事務所における商品は、モノではなく、生身の人間です。
 その商品には、感情や思考、性格などがあります。そのタイプは十人十色。そこが、この仕事の一番の魅力であり、大変なところでもあります。このような仕事が好きな人にとっては最高の仕事、好きじゃない人にとっては苦行でしかありません。
 私は幸いにも、この仕事が大好きでたまらず、いつの間にか六十年以上にわたって従事してきました。そんなことから、私のことを、芸能界の生き字引的な存在、伝説の芸能マネージャーとか呼ぶ人がいるみたいですが、私自身はそんな自覚はまったくありません。ただただ好きでたまらないから、八十を迎えた今でも、現場に足を運んでいます。

 申し遅れましたが、ここで簡単に自己紹介をさせてください。
 詳しくは本文で詳述しますが、私は高校時代には甲子園の常連校で野球に明け暮れ、高校卒業後に舞台の裏方の仕事、バンドマンなどを経て、芸能マネジメント業に足を踏み入れたのが始まりです。
 今の若い人には「宇多田ヒカルの母親」といえばわかるかもしれませんが、藤圭子の初代担当マネージャーなど、音楽系マネジメントに従事。その後、縁あって浅井企画という芸能事務所に入り、専務取締役としてコメディアン、お笑い芸人、タレント、俳優、歌手、文化人など、多岐にわたるマネジメント現場を経験してきました。私自身、肩書きなんかどうでもよく、つねに現場主義で生きてきた自負があります。
 浅井企画は、「欽ちゃん」こと、萩本欽一坂上二郎のコンビ「コント55号」を筆頭に、車だん吉、関根勤、小堺一機、見栄晴をはじめとする欽ちゃんファミリー、キャイ〜ン、ずん、流れ星☆、どぶろっく、みやぞん(ANZEN漫才)などが所属している(していた)ことで、世間一般に知られているかと思います。
 四十代以上の方ならおわかりかと思いますが、欽ちゃんは、かつて舞台中心だったコメディアンをテレビタレントとしての道を拓いた先駆者としても知られています。今なお一線で活躍しているお笑い界の大物芸人たちも、「コメディアン、お笑い芸人、お笑いタレントの社会的地位を引き揚げてくれたのは欽ちゃんだ」と口をそろえて言います。
 そんな欽ちゃんと関係の深い事務所で、主に新人発掘とマネジメントを60年以上にわたり従事してきました。
 ご想像のとおり、芸能界は才能のぶつかり合いの世界です。この業界で「売れる」のはひと握り、さらにずっと業界に生き残っていけるタレントや芸人はほんのわずかです。
 そんな厳しい世界で、タレントと二人三脚、眠っている才能を見抜いて、引き出し、育てて、伸ばす。結果につながればいいですが、残念ながら結果が出ずにこの世界から身を引いていく人たちをたくさん見てきました。
 私自身が今も現役マネージャーとして、徹底的に現場主義のこともあり、自分の事務所のタレントや芸人のみならず、他事務所のタレントたちも多く目にしてきました。
 60年以上にわたって現場にいると、やはり、売れる人、売れない人の目利き、その人物が眠っている才能を見抜き、引き揚げていく力は、他の方より多く養ってきたと自負しています。
 今回、60年以上にわたって培ってきた経験、知恵、知識から見いだした目利きやノウハウは、芸能界以外のビジネスシーンでもお役立ていただけるはずと、出版社の方からお話をいただきました。当初、私の経験なんてたいしたことないと、正直後ろ向きの気持ちでしたが、私の経験やノウハウが若い方々の少しでもお役立ていただけるのなら、今までお世話になってきた芸能界へ少しでも恩返しになるのならと思い、本書を書き進めることにしました。

 また、芸能マネージャーという視点だけでなく、放送作家という別の視点でお伝えするほうが、より多くの方にお役立ていただけるのはないかと思い、共著者として鶴間政行さんをお迎えしました。
 鶴間さんは、学生時代から欽ちゃんのラジオのハガキ職人。大学在学中に放送作家を志して欽ちゃんに師事。5年間の居候を経て、放送作家としてデビューし、以後、「欽ドン! 良い子 悪い子 普通の子」「欽ちゃん&香取慎吾の全日本仮装大賞」「笑っていいとも!」「オレたちひょうきん族」「SMAP×SMAP」「王様のブランチ」など、多くの人気テレビ、ラジオ番組を構成。現在も、「超逆境クイズバトル! 99人の壁」「キニナル金曜日」などの構成をしています。
 ちなみに、小堺一機がMCを務めていた人気長寿番組「ごきげんよう」「何が出るかな、何が出るかな」で知られる「サイコロトーク」の発案者としても、業界では名高い人物でもあります。
 芸能マネージャーの私、放送作家の鶴間さん、それぞれの視点から、芸能界という才能のせめぎ合いの世界で、どのように人の才能を見つけ、育て、伸ばしてきたかについてお伝えします。
 私と鶴間さんの共通点として「欽ちゃん」がいます。よって、本書では欽ちゃんの話が多く登場します。が、先にも触れたように、欽ちゃんは、かつて舞台中心だったコメディアンをテレビタレントとしての道を拓いた先駆者であり、いわゆるテレビタレント、芸能界の基礎をつくったと言ってもいい方です。そんな人物からいろいろ教えてもらったことは、芸能界の本質的なものであり、その学びは、時代や業種を問わず、多くの方にお役立ていただけるものだと考えています。
 あなたのまわりの部下やお子さんのマネジメントのヒントになれば、著者としてこれほどうれしいことはありません。
 なお、本書では文章表現上、一部敬称略としております。ご承知おきください。

川岸咨鴻


目次

第1章 芸能マネージャーという仕事

◎芸能マネージャーは軍師である (川岸)
◎逆境から逃げずに誠意を見せて、得られるもの (川岸)
◎他者のミスに寛容になる (川岸)
◎嫌なことから逃げてはいけない (川岸)
◎芸能マネージャーこそ、暴れ馬を操る達人 (川岸)
◎一線を越えた「ワガママ」は、断じて認めない (川岸)
◎タイプを見極めて組み合わせる (川岸)
◎いざというときには、身体を張ってでも守り通す (川岸)
◎これからの芸能事務所のあり方、マネージャーの役割 (川岸)
◎まだ光の当たっていない才能の原石に、とにかくチャンスをつくる (川岸)
◎母親の目線で見守る (鶴間)
◎ここ一番では、勝負をかける (川岸)

第2章 人の才能を見抜くコツ

◎「アドリブ力」を試すテスト (鶴間)
◎才能の見つけ方 (鶴間)
◎才能の片りんは、人の想像を駆り立てる (鶴間)
◎ツキのないヤツこそ、伸びしろがある (鶴間)
◎なぜマイナス思考の人に幸運が舞い込まないのか? (鶴間)
◎素直に人の話を聞けるか (川岸)
◎「ヒラメキ」が出る人がやっていること (鶴間)
◎「我」を押し通すためのルール (川岸)
◎最適な後継者を「発掘」する (川岸)
◎常識を知らずして、笑いも新しいことも生み出せない (鶴間)
◎「はしの持ち方」がなっているか (鶴間)
◎自分は謙虚に、相手をリスペクトする (川岸)
◎自分を押し殺すことができるか (鶴間)
◎他人の気持ちを考えてあげられるか (鶴間)

第3章 人の才能の育て方

◎今後、育つかどうかのバロメーター (川岸)
◎なにかアピールする特長を持たせる (鶴間)
◎現場をよく知らないと、うまく育てられない (川岸)
◎「見て学ぶ」は最強の育成法 (鶴間)
◎こだわりの強い部下の、上手な育て方 (川岸)
◎10番目の補欠を立派に育てる方法 (鶴間)
◎自分の能力に制限をかけてはいけない (鶴間)
◎忍耐力は、人生最強の武器である (川岸)
◎インプットに必要なのは好奇心 (鶴間)
◎二段飛びを狙わず、地道に一歩ずつ歩む (鶴間)
◎来るものは拒まない (川岸)
◎相手の「行くべき」最適の道へ導くために、あえてオーディションで落とす (鶴間)
◎才能を発揮できる最適の場所を探る (川岸)
◎地方は動いているのか? (鶴間)

第4章 人の才能の伸ばし方

◎40歳を過ぎてブレイクした男 (鶴間)
◎一日に1ミリ成長すればいい (川岸)
◎いきなり「完成」を目指さない (鶴間)
◎他人のアドバイスをどこまで受けるか (川岸)
◎時には危機感を持たせる (鶴間)
◎「週刊誌」という天敵への対処法 (川岸)
◎放送作家たちがやっていた発想を豊かにするトレーニング (鶴間)
◎誠意を見せつける (川岸)
◎自分なりの表現力を身につけろ (鶴間)
◎テングになったとたんに、人の成長は止まる (川岸)
◎時にはブレーキをかけてやる (鶴間)
◎成長するための「脱皮」を手助ける (川岸)
◎「あきらめ」と「決めつけ」を排除する (鶴間)
◎面倒見の良さが、かえって仇になることもある (川岸)


おわりに

 ここ数年、芸能界が揺れています。
 タレントの不祥事やスキャンダルだけでなく、さまざまな大手芸能事務所からタレントや俳優たちが次々と独立、流出しています。
 その原因の1つに、YouTube を含めたSNSの台頭があるのは、ご承知のとおりです。事務所に入っていなくても、自ら直接ファンに発信、リーチし、マネタイズができるからです。
 SNSが台頭する前は、テレビをはじめとするマスメディアには、事務所に所属している限られた人、選ばれた人しか出られない時代でした。
 今では、マスに知られていなくても、一部のコアなファンに支持されていれば、十分にマネタイズができる時代です。YouTuber たちがテレビに出始めているのも、テレビ出演料をあてにしているわけではなく、自分の存在を、テレビを通じて知ってもらい、自分のYouTube チャンネルに登録してもらいたいからです。
 そんな時代における芸能事務所とは何か? 何のためにあるのか?
 そこが問われているといえます。
 本書のテーマ「人の才能を見つけ、育て、伸ばす」という観点から考えてみると、芸能事務所の役割とは、まさにこのテーマそのものではないかと思うのです。原点回帰です。
 自分で才能を見つけられ、育てられ、伸ばせる人は、ごく限られた人たちです。やはり、眠っている自分の才能が見つけられない人、見つけても育てられない人、伸ばせない人は数多くいます。
 そんな悩みを抱えている人たちをサポートする、プロデュースしてあげる。そんなマネジメント力こそ、芸能事務所や芸能マネージャーに求められているのだと思えてならないのです。
 本書は一般ビジネスパーソンにもお役立ていただける内容を意識して書きましたが、芸能事務所の関係者の方にもぜひご参考にいただきたいと思っています。
 芸能事務所の商品は、人間です。その才能を見いだし、どうプロデュースしていくか。芸能マネージャーの原点を再度見直すべきでしょう。
 二人三脚で、自分の才能を見いだし、育てて、伸ばしてくれるパートナーがいれば、タレントだって心強く思い、「この人がマネージャーで良かった」「事務所に所属していて良かった」と思うはずです。
 私も放送作家として、芸能界にいろいろお世話になってきた一人です。今、岐路に立たされている芸能界に、少しでも恩返ししたいという気持ちは変わりません。
 エンタメは人を元気にします。勇気を届けます。だからこそ、次世代のエンタメを担うスターを生み出す必要があります。そのときに、芸能マネージャーの存在は欠かせません。いいエンタメは、芸能マネージャーがつくる。そんな気概で臨む芸能マネージャーがたくさんいるエンタメ界は、おもしろくないわけがありません。
 そんな世界がいち早く実現しますように。

鶴間政行

本書の刊行に際し、著者・川岸さんの教え子的な存在であり、ただ今、テレビやCMで引っ張りだこ、人気沸騰中のお笑いコンビ「ずん」の飯尾和樹さんご本人より、次のようなコメントをいただきました。

「ずん」飯尾和樹さんからのコメント

飯尾和樹(カジュアル)☆

川岸専務には『ぺっこり深々88°』、頭が下がります。
――飯尾和樹(ずん)
※写真提供:浅井企画

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