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【フォレスト出版チャンネル#93】ゲスト/編集者|東洋経済新報社の企画づくり&本づくりの秘密

このnoteは2021年3月24日配信のVoicyの音源「フォレスト出版チャンネル|知恵の木を植えるラジオ」の内容をもとに作成したものです。

編集者としての日常、部長としての日常

渡部:フォレスト出版チャンネルパーソナリティの渡部洋平です。今日は昨日から引き続いて東洋経済新報社・齋藤宏軌編集長と弊社・森上とともにお届けしていきたいと思います。昨日の放送では、齋藤さんが今まで編集者としてどのようなキャリアを築いてきたのかについてお話していただいています。今日はそんな齋藤さんから本づくりのやり方や企画の立て方についてお話していただきます。ぜひ最後まで楽しんできていただければと思います。今日もよろしくお願いします。
 
森上:はい。実際かんき出版さんには何年ぐらいいらっしゃった感じですか?
 
齋藤:そうですね。8年半ほどいましたね。
 
森上:ビジネス書ですよね、基本は。
 
齋藤:そうです。かんき出版にいた頃と、今、東洋経済にいる頃でそんなに作っているモノは大きくは変わりませんね。
 
森上:では、書籍ジャンルとか、得意ジャンルというと、やっぱりビジネス書ということになりますかね?
 
齋藤:ビジネス書もピンからキリまでと言いますか、範囲は広いですけれど、だいたい振り返ってみると、仕事術とか、自己啓発的な、半分以上はそういう本を作ってきたかなと思っています。
 
森上:ご自身では、今まで何冊作ったとかってカウントしていますか?
 
齋藤:いや、してないですね。転職するときに一度、かんき出版時代に何冊作ったかっていうのは、履歴書に書いたんですけど、そのとき、たぶん50~60冊だったと思います。今こちらの東洋経済に来てて、もう10年超えてますので、200冊はいかないですが、170、180とかそのくらいじゃないかなっていう。年間7、8冊で勤務年数考えると、それくらいかなという気がします。
 
森上:なるほど。そうですよね。さすがにカウントはしてないか(笑)。僕もカウントはしてなくて。でも、こまめにカウントしている方も、中にはいらっしゃるみたいですね。僕も全然覚えてないんですけど。だいたい年間の点数って、部長さんになられても、そこそこ作られている感じですか?
 
齋藤:そうなんです。他の出版社さんはわからないですけれど、書籍編集の管理職って、あんまり管理することないんですよね。
 
森上:なるほど。
 
齋藤:ある意味、編集者って、一人ひとり独立企業みたいなものなので。だから私も、一応3人部下というか、後輩がいるんですが、彼らのゲラを全部チェックするとか、彼らの著者に全部一緒に会いに行ってとか、っていうことももちろんしているわけではなくて、むしろ一プレイヤーとして、ちょっと他の人も面倒みてねぐらいのペースでやっています。だから、刊行点数については、全然下げてくれないんですね。
 
森上:(笑)。そうですか。僕も同じ立場(編集長)なんで、だいたいそうですよねー。結局、書籍の編集者って、一編集者が編集長みたいなもんですもんね。
 
齋藤:そうなんですよ。だから、たまに編集2部の部長ですって言うと、目の前に20人ぐらいの人を引き連れているんじゃないかって思われるんですけど、そんなことはなくて。冒頭で申し上げたとおり、マンションの管理人みたいなもので、ちゃんと2号室の人生きてるかなとか、そういうのを見るぐらいですね。
 
森上:なるほど(笑)。じゃあ、他の編集者のゲラを見ることっていうのもあまりなく、担当に任せているっていう感じで?
 
齋藤:そうですね。もちろん入社5、6年目までぐらいの若手の原稿とかタイトルとかは一緒に考えたり、そういったことはしますけれど、例えば、入社10年を超えてくると、そんなに私がとやかく言うことはないし、むしろ若手のほうが売れてる本をたくさん作ってることもあるんで(笑)、あんまり口を出さないですね。

【社外秘!?】東洋経済新報社の企画づくり、本づくりの中身

森上:なるほどね。そういう感じですよね。となると、だいたい年間担当7、8冊ですか?
 
齋藤:だいたいおっしゃるとおり年間8冊前後。例えば1年間12カ月と考えて、夏休みと冬休み1カ月飛ばして、10カ月で10冊出ればいいほうで、ちょっと少ないと7、8冊、それぐらいですね。10冊以上作るとなると、ちょっと仕事が荒れてくるんであんまりやらないです。
 
森上:そうですよね。僕の勝手なイメージかもしれないですけど、御社、東洋経済新報社さんは書籍を特に丁寧にお作りになられる印象があってですね。
 
齋藤:ありがとうございます。
 
森上:結構時間かけられますよね。スピードものじゃない限りは。結構、著者さんから話を聞くんですよ。平気で1年、2年ちゃんとぐっと時間をかけてしっかりしたものを作るっていう。
 
齋藤:あー、そうですね。もちろんモノにもよると言いますか、タイミングよく出したほうがいい本もあれば、そんなに急いでやらなくても作り込めば作りこむほど、やっぱりクオリティが上がることもあるので、後者のような本に関しては、やっぱり力を入れますね。
 
森上:そうですよね。
 
齋藤:でも、ちょっと難しいのが、森上さんもわかっていただけるかと思うんですけど、力を入れて作り込めば必ず売れるかと言うと、そうじゃないときもありますよね(笑)。
 
森上:そうなんですよね。
 
齋藤:もちろん手を抜くとか、そういったことは論外ですけれど、どこまで時間をかけるのか、たぶんゴールってないんですよね。
 
森上:ないですよねー。
 
齋藤:なので、やっぱりある程度時間を区切ってやっていくしかないのかなと思っています。
 
森上:そうですよね。そうなってくると、企画を通す、通さないの、企画会議というのは頻繁にやるんですか?
 
齋藤:そうですね。だいたい三段階ぐらいあるんですよ、会議が。
 
森上:ほうほうほう。
 
齋藤:一番小さな単位と言いますか、一番最初の会議が編集2部という、3、4人で。これは企画会議でもあるし、ブレストでもあると言いますか。「こんな人に会ったんだけど、どう思いますか?」みたいな、そのレベルで編集者3、4人で頭を突き合わせて、「それはいけるんじゃないか」とか、「そっちはちょっと見込みがない」みたいな話をワイガヤでやるっていうのが、まず一個目の段階ですね。で、「これいけそうだね」と思えば、出版局の会議。ここは出版局として、この本をやるかやらないかっていうのを局長交え、編集1部とか3部とか他の部長を混ぜて検討して、そこで局として出そうってなったら、最後に営業を交えて、編集だけじゃなくて、販売サイドの意見も聞いて、最終的に「これはGO」とか、「テーマとか著者はいいけれど、販売サイドから言わせると類書が多すぎるとか、埋もれてしまうんじゃないか」っていうときには、そこでダメな時もありますし。三段階の会議をだいたい隔週でやってる感じですね。
 
森上:なるほど。そういう意味ではうちも三段階の会議なんですが、うちは編集会議が一次会議、営業が出る二次会議、最後が経営陣が出る会議なので、3回は3回ですが、ハードルの部分がちょっと違ったりしますね。隔週でやるとなると、年8冊と考えて、一回の会議あたりだいたい2本以上は出さないとダメですね、企画を。
 
齋藤:そうですね。ベテランと言いますか、そこそこ仕事がわかってきた編集者は決め打ちと言いますか、無駄玉、落ちる企画を出さなくなりますが、最初の若い頃は特にそれこそ毎週3本出すとか、その中から10本投げて1本、次の出版局の会議に通そうかみたいな。そういうことをやっていますね。
 
森上:そっかー。個人差はやっぱりそこで出てきますよね。まだいろいろとお聞きしたいんですけど、斎藤さんが企画をお立てになるときって、大雑把に言うと、人から考えるのか、テーマから考えて人を捕まえてくるのか、どっちのタイプですか?
 
齋藤:たぶんテーマじゃないかなと思うんですね。何割がテーマで、何割が人かとまでは考えたことはないんですけれども、おっしゃるように、人から考えることも、テーマから考えることも両方あって、例えばテーマからいっても、そのテーマはダメだったけれど、その人と話してると、こういうのいけるんじゃないかと思ってテーマから入ったけど、結局人から企画が出るみたいなこともありますし。
 
森上:はい、はい。
 
齋藤:そこは本当に、ケースバイケースですよね。全然本の話をしに行ったんじゃないのに、「おもしろいな、それ本になるな」って思うようなこともあれば、ありがちですけど、テレビとか見てて「今、こういうのがブームなんだ。じゃあこれを書いてもらおう」と思うこともありますし、ビジネス書で売れているものを読んでいて、「これ、おもしろいな」と思って、その本の中に一行、もっとおもしろい話があったら、この一行だけでもう1冊作れるんじゃないかな、とか。そこは本当にいろいろなパターンがあって、一概には言えないですね。
 
森上:なるほどねー。いや、すごい。含蓄がある言葉ですね。「その一行」ってパターンもありますよね。
 
齋藤:そうなんですよ。ここ、なんでみんな見過ごしてるんだろうみたいなときって、たまにありますよね。

書名タイトルを決める上で注意していること


森上:なるほどね。タイトルとかってどうしているんですか? タイトル会議とかって、やったりするんですか?
 
齋藤:タイトル会議は一応東洋経済もやっているんですけれど、よそはわからないですが、みんなで合議制でタイトルを決めようっていうよりは、あくまで主体的には編集者が考えて、タイトル会議の席で、原稿を読んだことない人、今までその本について全く知らない人がこのタイトルを見たらどう思うかっていう、感触を探るようなかたちでやってますね。
 
森上:健全、健全、なるほど。
 
齋藤:みんなが「俺はこれがいい」とかって言い出すと、その折衷案のタイトルになるとか、ありがちな話なんで。
 
森上:ありがちですよね。たしかに。あるある。
 
齋藤:「あの人がこんだけ言うなら、半分あの人の要素を入れようか」みたいなタイトルは、たぶん良くないタイトルになると思うので。
 
森上:結果的に中途半端になりますからね。
 
齋藤:そうなんですよ。たまに私もタイトル会議でいろいろな指摘を受けて、「そうか。そう読まれる可能性があるな」と気づきを得られることもあるので、それが大事なのかなと思いますね。最終的に責任をとるのは編集者ですからね。
 
森上:なるほど。決定権は担当編集にあると。まあ、そうですよね。それが理想ですよね。うちもそれに近いかもしれないですけど、うちの場合は、だいたい担当編集が方向性の違うタイトルを4案出して、そこで本の中身のことをよく知らない営業の意見を聞く。やっぱり営業の意見がヒントになるなっていうときもありますよね。「そういう捉え方をするのか」って。編集って、どうしても入り込んじゃって知ったようなこと、慣れちゃっている。(本の中身や売りが)わかりすぎてて、その前提条件が読者と違う場合があったりしますよね。
 
齋藤:編集者によっても、好みとか癖ってあると思うんですよね。私は比較的わかりやすい、直球というか、「〇〇の教科書」とか「〇〇がよくわかる本」とか、誤解されない、素直なタイトルを付けがちですね。野球のピッチャーで言ったら、ボールを置きにいくみたいなですね。
 
森上:いやいやいや(笑)。なるほど。
 
齋藤:手堅く、そこを抑えとこうみたいなタイトルは好きですけど、例えばフォレストさんの『なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?』みたいな。ああいうタイトルも、たまにはつけてみたいなって思いますよ(笑)。
 
森上:そうですか(笑)。でも齋藤さんがおつくりになられるモノって、おしゃっていることはわかりますね。いい意味で王道な感じ。王道感がありますよね。王道はだいたい競合がいますからね、そこに勝てる内容であるってことで。
 
齋藤:なので、たまに競合のないタイトルを付けたいんですけど(笑)。
 
森上:いやいやいや(笑)。もう齋藤さんにしかできないことですよ。販促関係とかで齋藤さんが御社としてやることってあったりするんですか?
 
齋藤:書店さんへのポップとかパネルとかは、営業部がやってくれています。書籍編集者がパネルのコピーをどうするかとか、そういったもので協力することはあるんですけど、基本的には彼らにやってもらっていますし、あと、営業部とはまた別にプロモーション部っていうのがありまして、そこはメディア関係とかの対応をしてくれたりするので、書籍編集者がやるのは「東洋経済オンライン」とかああいうところで、販促記事を使って発信していくとか、そういったことを主にやっています。

森上:なるほど、なるほど。ここまで聞いて渡部さんどうですか?
 
渡部:そうですね。別のパターンで何名か、他社の編集者さんのお話を聞いたんですけど、会社さんによって似てるようで違うというか、みんなそれぞれ、流れだとか、役割分担があるんだなっていうのはすごく感じました。率直に聞きたいことがあったんですけど、これは放送できない可能性があるんですけど、いいですか?
 
森上:そうですね。そのときはカットして(笑)。
 
渡部:営業と編集の関係って対立しがちみたいなことをよく伺うんですが、フォレストの場合はどうなんですか(笑)?
 
森上:フォレストは、仲は良くも悪くもないんじゃないかな(笑)。案件によってはバチバチやるけど。案件別ですよね。
 
齋藤:そうですね。弊社も別に仲違いしているわけではないし、弊社の営業部の方は、特に「週刊東洋経済」とか「会社四季報」とか、あちらの営業も受け持っているんですよ。なので、編集出版局と営業局が一対一関係というよりは、営業部にとっては書籍も売るけど、同時に他のこともしているので、がっぷり四つに組んで兄弟げんかするみたいなことはないですね。
 
森上:なるほど(笑)。大人な関係ですよ、東洋経済さんは。我々のほうが子供かもしれない。
 
渡部:いい意味のぶつかり合いと言いますか。
 
森上:(笑)。いい意味にも悪い意味にもなる場合もあるかもしれない。向こうがどう思っているかはわからないけど(笑)。いや、これカットしないでいきましょう。
 
渡部:(笑)。
 
森上:そんな感じですか。
 
渡部:では、今日は森上さんの先輩編集者にあたります齋藤さんから貴重なお話しいただいたんですけれども、そんな齋藤さんが担当された本の中でお勧めとして『武器としての図で考える習慣』という本があるようです。

こちらの本についてもいろいろとさらに詳しくお伺いしていきたいと思うのですが、ちょっと時間が長くなってしまったので、こちらについては明日お届けしたいと思います。『武器としての図で考える習慣』は、こちらのチャプターにアマゾンのURLを貼っておきますので、気になる方はぜひチェックしてみていただければと思います。それでは齋藤さん、森上さん、明日もどうぞよろしくお願いいたします。
 
齋藤・森上:よろしくお願いします。
 
(書き起こし:フォレスト出版本部・冨田弘子)
 

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