FOOL企画部

FOOL企画部です。いろいろな面白いにチャレンジしていきます!

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マガジン

  • 140字小説『A子の日記』《完結済》

    140字連続小説で紡ぐ、A子の一生を綴る物語。Twitterで毎日更新をしていたものをまとめています。さっと読めるので是非!

  • FOOLな日常

    FOOL企画部の裏話や日常についての記事をまとめています。

記事一覧

固定された記事

『A子の日記』#1

「あたしのなまえはえいこでる。きょうからにっきをかきはじめたいでる。ままにはないしょでる。さいきんままとぱぱがけんかをしているので、かなしいでる。はやくなかなお…

FOOL企画部
4年前
1

あけましておめでとうごいます!

「俺たちの"面白い"を、あなたと。」FOOL企画部です。 おはようございます。そして少し遅くなりましたが、 あけましておめでとうございます! 今年も1年よろしくお願い…

FOOL企画部
4年前

『A子の日記』 最終話

「んー!」思いきり伸びをすると体が若返ったような気がした。朝の気配が病院を足元から照らし始める。鋭い風が汗ばんだ髪をかきあげた。「あ!」頭上に佇む朝と夜の狭間。…

FOOL企画部
4年前

『A子の日記』#45

「…を見つけられたかい?」夫が私に問いかける。まだ見つけれてないわ。そう言うと、夫はくしゃっと崩れた笑顔を見せ「それはいかんな」と呟いた。目が覚めると私は病院の…

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4年前

『A子の日記』#44

私の名前はA子です。今日から日記を描き始めようと思います。ママには内緒です。最近パパとママが喧嘩しているので悲しいです。早く仲直りしてほしいです。「ねえママ。ど…

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4年前

『A子の日記』#43

廊下を曲がると、知らない人に呼び止められた。「あなた、だぁれ?」問いかけると彼女は小さく微笑み、私を知らない部屋へと連れて行く。待って、私は夫にご飯の用意をしな…

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4年前
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『A子の日記』#42

黎明にシルエットが浮かぶ。寝ぼけ眼を擦ると輪郭が滲んで、空に溶けて消えた。みんなが迎えに来ている。でも待って。もう少しだけ、やりたいことがあるの。旅館の窓に雪が…

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4年前

『A子の日記』#41

瑠璃色の空。「もう少し薄い色だったかしら?」握りしめる古びた絵本は長い年月を感じさせる。娘がこぼした牛乳のシミ。日に当たって色あせた表紙。全てが懐かしい。亡くな…

FOOL企画部
4年前
1

『A子の日記』#40

リュックを背負うと予想以上の重さによろけた。弱った膝が早くも悲鳴をあげる。「こんなんじゃたどり着けないわね!」己を叱咤し、踏み出した一歩。指先に力を入れ確かに地…

FOOL企画部
4年前

『A子の日記』#39

ラジオをつけたまま眠りにつく。何もない静かな夜は酷く恐ろしい。いつかくる死の匂いが、足下まで来ているかのようだ。あの人と死別して4年が経とうとしている。歳を取っ…

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4年前
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『A子の日記』#38

ようやく下の子も嫁を娶った。これで私の役目も終わり。あとはただ平凡な毎日が続くだけ。そんなふうに考えていた時だった。「お父さん!お父さん!しっかりして!救急車!…

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4年前

『A子の日記』#37

ゆっくりする時間が最近増えた。若い頃は毎日が忙しなく過ぎ去り、何もかもが新鮮な経験だった。「暇だわ」旦那との会話は年々少なくなり、楽しみは孫が来る週末のみ。かと…

FOOL企画部
4年前

『A子の日記』#36

柔らかな光に体が溶け、ソファからこぼれ落ちてしまいそうだった。私の膝に頭をのせる孫娘はイチゴ柄のブランケットを羽織り、静かに寝息をたてている。クリーム色のカーテ…

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4年前

『A子の日記』#35

「もう成人式か〜」娘の晴れ着を選びながら、時流れを感じる。「ママとパパは成人式で再開したんだよね。いいな〜。あ、でもパパみたいな人は嫌だな」娘のそんな精神攻撃に…

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4年前

『A子の日記』#34

目印の黄色い靴下がピッチを駆ける。「いけー!そこ!そこ!シュート!」蹴り上げたボールがクロスバーに弾かれ、外へと逃げた。無情に鳴り響くホイッスル。少年たちは崩れ…

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4年前
1

『A子の日記』#33

娘が口を聞いてくれなくなったと、仕事から帰ってきた夫は机の上でスライムのように溶けている。大人への成長の過程。彼女はこれから愛情を受けてきた父親を嫌って、他に誰…

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4年前
固定された記事

『A子の日記』#1

「あたしのなまえはえいこでる。きょうからにっきをかきはじめたいでる。ままにはないしょでる。さいきんままとぱぱがけんかをしているので、かなしいでる。はやくなかなおりしてほしいでる。」A子は覚えたばっかりのひらがなで日記を書き始めた。これからの彼女の人生はどうなるのだろうか?つづく。

あけましておめでとうごいます!

「俺たちの"面白い"を、あなたと。」FOOL企画部です。 おはようございます。そして少し遅くなりましたが、 あけましておめでとうございます! 今年も1年よろしくお願いします! 今日は新年の挨拶だけさせて頂きました。 でわっ!

『A子の日記』 最終話

「んー!」思いきり伸びをすると体が若返ったような気がした。朝の気配が病院を足元から照らし始める。鋭い風が汗ばんだ髪をかきあげた。「あ!」頭上に佇む朝と夜の狭間。南北に伸びるその帯を指さし言った。「やっとみつけたわ。あなたの色」朝に溶けて消える。最期まで私はその群青を見上げていた。

『A子の日記』#45

「…を見つけられたかい?」夫が私に問いかける。まだ見つけれてないわ。そう言うと、夫はくしゃっと崩れた笑顔を見せ「それはいかんな」と呟いた。目が覚めると私は病院のベッドに寝ていた。不思議と気分はいい。「私、もう時間がないのね」最後の力を振り絞る。群青色の思い出の空を見つけるために。

『A子の日記』#44

私の名前はA子です。今日から日記を描き始めようと思います。ママには内緒です。最近パパとママが喧嘩しているので悲しいです。早く仲直りしてほしいです。「ねえママ。どうしてパパと喧嘩するの?」袖を引いて訊ねると、彼女は振り向きこぼれた涙を拭った。「喧嘩なんてしてないわ。安心して、ママ」

『A子の日記』#43

廊下を曲がると、知らない人に呼び止められた。「あなた、だぁれ?」問いかけると彼女は小さく微笑み、私を知らない部屋へと連れて行く。待って、私は夫にご飯の用意をしないといけないのよ。ベッドに横になっていると知らない人がやってきた。疑問に思い、私は彼女に問いかける。「あなた、だぁれ?」

『A子の日記』#42

黎明にシルエットが浮かぶ。寝ぼけ眼を擦ると輪郭が滲んで、空に溶けて消えた。みんなが迎えに来ている。でも待って。もう少しだけ、やりたいことがあるの。旅館の窓に雪がちらつく。体を起こして近づくと冷気が骨身に染みた。今日は白。そうノートに書きとめつつ、明日の空に懐かしい青色を期待した。

『A子の日記』#41

瑠璃色の空。「もう少し薄い色だったかしら?」握りしめる古びた絵本は長い年月を感じさせる。娘がこぼした牛乳のシミ。日に当たって色あせた表紙。全てが懐かしい。亡くなった夫との思い出の絵本。その記憶を頼りに、絵本と同じ空を探している。「今日も見つからなかったわ」楽しそうに日記に記した。

『A子の日記』#40

リュックを背負うと予想以上の重さによろけた。弱った膝が早くも悲鳴をあげる。「こんなんじゃたどり着けないわね!」己を叱咤し、踏み出した一歩。指先に力を入れ確かに地面を掴む。「よし!」一冊の古い絵本を携えて、年甲斐もなく玄関から飛び出した。青く澄み渡った空が最期の旅路を祝福していた。

『A子の日記』#39

ラジオをつけたまま眠りにつく。何もない静かな夜は酷く恐ろしい。いつかくる死の匂いが、足下まで来ているかのようだ。あの人と死別して4年が経とうとしている。歳を取ったら死を受け入れられるかと思っていた。そんなのは幻想だって今ならわかる。「あなたはポックリと逝けて幸せね」静かに呟いた。

『A子の日記』#38

ようやく下の子も嫁を娶った。これで私の役目も終わり。あとはただ平凡な毎日が続くだけ。そんなふうに考えていた時だった。「お父さん!お父さん!しっかりして!救急車!」上の子の叫び声が響く。何を言っているのだろう。あの人は寝てるだけだ。呆然と立ち尽くす私の手を孫娘が握る。強い力だった。

『A子の日記』#37

ゆっくりする時間が最近増えた。若い頃は毎日が忙しなく過ぎ去り、何もかもが新鮮な経験だった。「暇だわ」旦那との会話は年々少なくなり、楽しみは孫が来る週末のみ。かと思えば孫が生まれたのは昨日のことのようだ。ゆっくり進む時計とは裏腹に私は確実に老いていく。鏡に写る自分にため息が溢れた。

『A子の日記』#36

柔らかな光に体が溶け、ソファからこぼれ落ちてしまいそうだった。私の膝に頭をのせる孫娘はイチゴ柄のブランケットを羽織り、静かに寝息をたてている。クリーム色のカーテンが、1度大きく膨らんで私たちを飲み込むと、チン!という軽快な音がした。シロップ色の瞳が微かに開く。「おやつできたわよ」

『A子の日記』#35

「もう成人式か〜」娘の晴れ着を選びながら、時流れを感じる。「ママとパパは成人式で再開したんだよね。いいな〜。あ、でもパパみたいな人は嫌だな」娘のそんな精神攻撃にもめげずに俺ほどいい男はいないぞ、とばかりに胸を張る夫。寡黙なとこがカッコ良かったのよ。と言うと「嘘だ!」と娘は溢した。

『A子の日記』#34

目印の黄色い靴下がピッチを駆ける。「いけー!そこ!そこ!シュート!」蹴り上げたボールがクロスバーに弾かれ、外へと逃げた。無情に鳴り響くホイッスル。少年たちは崩れ落ち、客席からはため息が漏れる。よくがんばった!がんばったよ。言葉の代わりに拍手を送る。赤く腫れ上がるほどに手を打って。

『A子の日記』#33

娘が口を聞いてくれなくなったと、仕事から帰ってきた夫は机の上でスライムのように溶けている。大人への成長の過程。彼女はこれから愛情を受けてきた父親を嫌って、他に誰か好きな男の子ができ、家を出るのだろう。私にもあったのかな?と思い、夫を見て気づく。「そっか。私、まだ反抗期してるんだ」