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これさえ読めばまるわかり!今話題のプラントベースト食品とは?②応用編-1


こんにちは、らびです。
日系グローバル企業の食品事業部で働いております。5月18日に「プラントべースト食品:基礎編」という記事で

・プラントべースト食品って何?
・なんで注目されているの?

という内容を書いたところ、たくさんの方にご覧頂きました。ありがとうございます・・・。現在、世界的に話題になっているトピックという事で皆様関心がある分野なのかな、と実感しております。

※本稿は前回の記事の続き的な位置付けなので、ご覧になっていない方はぜひご一読ください!目次からまとめに飛べば、1分足らずで読めます。

さて、今回はプラントベースト食品の応用編という事で「プラントベースト食品を作っている企業について」と「どうやって作られているか」にフォーカスしてお届けしたいと思っておりましたが、分量が増えてしまったので応用編は2回に分けてお届けします。

今回は「どんな企業がプラントベースト食品を作っているか?」のみにフォーカスしてお伝えしたいと思います。前回と比べたら少しマニアックなお話になりますが、たくさんの会社が出てきますので、ご興味がある方はぜひご覧頂ければ幸いです。

● プラントベースト食品はどんな会社が作っているの?

昨今話題のプラントベースト食品(以下、PB食品)ですが、どんな会社が作っているのでしょうか?今回は日・米で比較しながらリスト化してみたいと思います。

日本市場

不二製油グループ(食用油脂・大豆加工品製造業)
森永製菓(加工食品製造業)
アサヒ飲料(飲料製造業)
ダノンジャパン(乳製品製造業)
大塚食品(加工食品製造業)
カゴメ(加工食品製造業)
マルコメ(みそ加工品)
伊藤ハム(畜肉加工業)
日本ハム(畜肉加工業)
丸大食品(畜肉加工業)

リストに乗り切らない会社もたくさんありますが、大手食品メーカーでPB食品のブランド開発に力を入れている企業は大体このような顔ぶれです。

さて、リスト上位に記載ある「不二製油」ですが、食品関係の方以外はあまり馴染みがないかもしれません。不二製油は植物性の油脂やチョコレート、大豆製品の製造販売を生業としている大企業で、食品業界志望の就活生からも人気な優良企業の一つです(製油業界のランキング)。

そんな不二製油ですが、PB食品の原料である「粒状大豆たんぱく」のシェアが国内では非常に高く、プラントベースト業界内での影響力も強いです。原料提供だけでなく、自社でもプラントベーストのレストランを心斎橋で展開しております。

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写真:粒状大豆たんぱく(不二製油)

デイリーフリー(乳不使用)の植物ミルクだと、アサヒ飲料のPLANT TIMEやダノンジャパンのalproシリーズなどがあります。

代替肉関連では、日本ではパイオニアの大塚食品の「ゼロミート」、伊藤ハムの「まるでお肉!」、丸大食品の「大豆ライフ」、日本ハムの「ナチュミート」などがあります。畜肉加工メーカーがかなり参入しているのが特徴で、これは米国でも同じ傾向にあると思います。

代替肉に市場が奪われる前に自ら参入してしまえ、という考えですね。

カゴメも「丸ごと大豆」という豆乳製品や「大豆のお肉」というパスタソースも販売しております。

マルコメ社は「大豆ラボ」というブランドで、素原料に近い形(ミンチ肉のような形)から加工食品(大豆肉カレー等)まで幅広く展開しています (POSデータを見る限り、同ジャンルでは最も売れているブランドとなります)。

森永製菓ではSee the sunというブランドで「ZEN MEAT」という製品を出しています。

どの食品メーカーも自分の得意分野×プラントベーストというコンセプトで製品開発を行っているのがわかります。

米国市場

さて、続いては米国のリストになります。米国はPB食品(小売業)の推定市場規模45億ドル相当(約4,850億円)と市場規模も大きく、数え切れないほど会社がありますので、有名どころをほんの一部抜粋させて頂きます (出典:U.S. Plant-Based Retail Market Worth $4.5 Billion, Growing at 5X Total Food Sales) 。

・Beyond Meat (植物性食品製造業)
・Impossible Foods (植物性食品製造業)
・Conagra (総合食品メーカー)
・Kellogg (総合食品メーカー:シリアル食品等)
・Maple Leaf Foods (畜肉加工業)
・Monde Nisshin (小麦製品加工業:麺、ビスケット等)
・Nestle (総合食品メーカー)
・Tyson Foods (畜肉加工業)
・Daiya Foods (植物性食品製造業:デイリーフリー等)
・WhiteWave Foods(植物性食品製造業:植物性ミルク等)
・Blue Diamond Growers(アーモンド加工品製造)

日本でも馴染みのある企業だと、ネスレ、ケロッグなど。記載はしませんでしたが、ユニリーバも積極的にPB食品へ投資を行っており、PB食品は世界で最も盛り上がっている食のジャンルと言っても過言ではありません

こちらも同様にリストに記載ありませんが、米国で代替肉などの原料を供給しているサプライヤーの大手はカーギル社、ADM社、ロケット社などが挙げられ、日本においても「粒状大豆たんぱく」や「粒状エンドウ豆たんぱく」を展開しております。

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写真:ロケット社の粒状えんどう豆たんぱく(通常黄色エンドウ豆が使われます)

さて、お話をリスト内の企業に戻します。
本記事ではすべて紹介しきれないので、PB食品界隈で有名なビヨンド社、インポッシブル社、モンデ・ニッシン社についてのみご紹介します。

代替肉の2大巨頭、ビヨンドミートとインポッシブルフーズ

まず、代替肉業界の2大巨頭であるImpossible FoodsとBeyond Meatからご紹介致します(残念ながら2020年5月現在、どちらも日本で食べることはできません・・・)。

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写真:日経新聞

ビヨンド社はエンドウ豆、インポッシブル社は大豆を主原料とした代替肉を専門に開発・製造する企業です。

インポッシブル社の創業者であるパトリック・ブラウン氏はシカゴ大学で生化学博士号を取得後、研究者としての道を歩みました。現在はスタンフォード大学の名誉教授を務めております。

DNAマイクロアレイを開発した研究者である傍ら、2011年に代替肉専門のベンチャー企業としてインポッシブル・フーズを設立し、起業家としても成功。現在はシーフードフリー食品(代替エビ、代替イカなど)の製品開発を進めるなど、研究開発力は世界トップクラスの会社と言えると思います。

インポッシブル社の代替肉は、牛肉の血様の香り・味をリアルに再現する為に酵母により複製・量産された「大豆レグヘモグロビン」という物質を製品に配合しています(詳細はこちら)。大豆レグヘモグロビン、というと怪しい物質に聞こえますが、大豆に含まれるタンパク質の一種で、米国食品医薬局(FDA)に色素添加物として認証を受けているようです(詳細はこちら)。

同社の製品は米国バーガーキング等のファストチェーン店やパブを中心に食べる事ができます。

対して、ビヨンド社のイーサン・ブラウン氏はコロンビア大学のビジネススクール出身、もともとは燃料電池の会社に勤めていたのですが、植物性代替肉業で起業。2019年、代替肉専門企業として初ナスダック上場も果たし、日本でも盛んに報道されました。現在最も勢いがある代替肉メーカーと言っても過言ではないでしょう。

ビヨンド社の製品は世界各国のスーパーで購入できる他、カールスジュニア(米)、マクドナルド(カナダ)、ダンキン、ケンタッキー(アトランタ等)など、超有名店でレギュラー/スポット販売されております。

代替肉クオーン

ここまで紹介したビヨンド社、インポッシブル社はそれぞれエンドウ豆と大豆を主原料とする代替肉でした。この2つに対し、面白い原料で作られている代替肉があるのをご存知でしょうか・・・・?

それが、クオーンです。

クオーンは1985年にMarlow Foodsで設立された食品のブランド名で、真菌由来のマイコプロテインを用いて開発された代替肉の一種です。英国を中心に欧州各国で食べる事ができます。

ダノン、ケリーなどグローバル大企業が買収を模索しましたが、最終的にモンデ・ニッシン社(フィリピン)が1,000億円近い資金で買収した世界的に有名なブランドです。

クオーンはつなぎとして卵白由来のアルブミンを使用しているものがほとんどなので、定番品はビーガン対応ではありません(ビーガン向けラインナップもあります)。

かつて欧州で代替肉といえばクオーンでしたが、現在は米国企業や現地グローバル企業が様々な代替肉を販売しております。

さて、以上が米国のPB食品(主に代替肉)となります!本当は代替肉以外も欧米の植物性チーズやヨーグルトなどもご紹介したかったのですが、文字数が多くなってしまうのでまた別の機会に。

まとめ

ここまでお読みいただきありがとうございました。最後にまとめとさせて頂きます。日本でプラントベースト食品を作っている企業は、

代替肉の原料(粒状大豆たんぱくが主流)
・不二製油等
→代替肉の原料である粒状大豆たんぱくの国内最大シェアを持つ。
代替肉関係の加工食品を作っている会社
・大塚食品、森永製菓、丸大食品、伊藤ハム、日本ハム、マルコメ等
畜肉加工メーカー大豆加工メーカーが多い
● 植物ミルクなどのデイリーフリー飲料・食品を作っている会社
・ダノンジャパン、アサヒ飲料、キッコーマン豆乳等

対して、米国の場合は

代替肉の原料(粒状大豆たんぱく・エンドウ豆たんぱくが主流)
・カーギル、ADM、ロケット
→世界中に展開。米国では大豆だけでなくエンドウ豆たんぱくも普及
代替肉関係の加工食品を作っている会社
・ビヨンドミート、インポッシブルフーズ、モンデ・ニッシンなど
→米国で代替肉と言えばビヨンド社かインポッシブル社が有名。欧州ではモン デ・ニッシンのクオーン(マイコプロテイン)も有名。
● 植物ミルクなどのデイリーフリー飲料・食品を作っている会社
・デイヤフーズ、ホワイトウェーブフーズなど

となっております。

最後に補足ですが、プラントベーストという呼び名は日本では様々ありまして、人によってはプラントベース、プラントベースドなど呼称が異なりますが、すべて同一のものなのでご承知おき下さい(一番英語の発音に近いのが、プラントベーストと思いましたので本記事ではそのような表記で統一しております・・・AQTQさん、ありがとうございました!)

以上、お読み頂きありがとうございました。
次回は「プラントベースト食品はどんな原料で、どうやって作るのか?」にフォーカスした内容をお届けしたいと思いますので、ぜひお読みいただければ嬉しいです。


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