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2.ビジョン策定、全社員への浸透

1.良いビジョンとは

蛭川:ビジョン策定はリーダーの重要なスキルと言えますが、良いビジョンってどのようなものですか?
野田:将来が見通せるもので人をワクワクさせるものでしょうか。未来を想像して、自分の言葉で表現することが大事なことです。
蛭川:そのようなビジョンを作るには、どのようなことに気をつけたら良いでしょうか?

2.ビジョン策定のポイント

野田:切り口、流れ、制約 という3つの軸で考えるといいでしょう。
蛭川:切り口とは?
野田:ITが進展しているとか、多様性(ダイバシティ)社会の到来とか、ビジョンを考える上でのきっかけ(テーマ)を設定していくことです。
蛭川:現在一般的にキーワードになっているような事柄で考えるということですね。流れとはどのようなことですか?
野田:過去から現代までの時の流れをとらまえるということです。例えば人間の本能として、音楽を聴きたいという根源的欲求がありますね。その欲求を満たすために昔はレコード、CDときてMD今はデジタルです。ではその次、令和風に考えるとどうなるかという思考プロセスです。音楽を楽しむということが本質で、あとは時代によって変わるだろうということが想像できます。
蛭川:なるほど。未来は誰にも分かりませんが過去を整理していくことで発想を豊かにできますね。では最後の制約とはどのようなことですか?
野田:発想する際に強制的に枠に当てはめて考えていくというプロセスです。ひな形やフレームワークを利用します。今ですとSDGsがホットな枠組みです。SDGsを前提に将来が変わっていくとし、未来に起点を作って逆算すると考えやすいです。
蛭川:なるほど、SDGsの8分野17目標を下敷きに自社がどのように貢献できるかを考えていくのですね。ありがとうございます。ところで野田さんは将来と未来という言葉を使い分けていますね。

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野田:そうなんです。未来とは現在、過去、未来と使われることが多く、時間の流れを示していることが多いのです。そして見えない未来を考えていく際に、企業を巡る外部の環境が見えたときに自分たちはどうするのか、が見えてくる、そこではじめて将来になるということです。
蛭川:未来が一般的な時の流れを示していて、将来はそこでどうなりたいかを主体的に表現する時に使うというわけですね。
野田:そうです。ビジョンを創る際には、人にこう見られたいとか、可能であれば例えば人からも認められるような状態がいい。マズローの承認欲求ですね。ビジョンには、皆に共感される状態が入っているといいですね。やる気を引き出します。

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蛭川:例えばどのようなものがありますか?
野田:事例としては、IBMグローバルが2008年に掲げた「smarter planet」があります。抽象的ですが、地球の為に役立てないかという強烈なメッセージです。具体的に言えば、電力網、水資源の管理に始まり、道路交通システムまで、地球に負荷をかけず賢い未来を創ろうということになるのではないでしょうか?通常だと「コンピュータとかITを使って公共の役に立てる」的なビジョンになりがちです。人に「いいな」、「そういうふうなところに自分も参加したいな」と貢献意欲を掻き立てます。
蛭川:なるほど組織メンバーのコミットメントということですね。    野田:組織の3要素に沿ってビジョンを考えるといいでしょう      蛭川:バーナードですね。共通目的と貢献意欲、コミュニケーションを念頭において考えるということでしょうか?

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野田:そうですね!組織を構成するメンバーの共通の目的となり得るもので、貢献意欲を掻き立てる、そしてビジョンを使ったコミュニケーションが有効なものといった具合です。
蛭川:ところでビジョンと経営理念の違いはどのように認識されていますか?
野田:理念は変わらないもの、ビジョンは時代時代によって変わるので普遍ではありません。ビジョンはその時その状況によって変わるものです。だからビジョンをつくるのは難しいのです。
蛭川:なるほど、経営理念はその企業の存続目的というか存在意義ですよね。そうしたものは普遍じゃなきゃいけませんよね。
野田:良いビジョンは、俺も頑張ろう、営業に携わりたい、ITで貢献したいと、ふつふつと湧き上がってくるようなものです。(IT部門のビジョンの場合)
蛭川:部門毎に、ビジョンは必要なのでしょうか?
野田:そうです。それぞれの組織長は企業ビジョンを読み込んで、事業ビジョンを作成し、具体化していきます。
蛭川:理念>企業ビジョン>事業ビジョンという流れですね。
野田:理念とは逸脱してはいけないもの、常にチャレンジするとか、地域の為にとか、例えば私が以前お手伝いしたある会社の理念は、邂逅(かいこう、出会いを大切にする)です。とても抽象的でしょう。
蛭川:そうですね。でも分かり易いですし行動指針になりますよね。
野田:それに対してビジョンは、「グリーン・クリーン・サステナブル(地球環境にやさしい)」です。
蛭川:なるほどSDGsのトレンドを押さえていますね。わかりやすい。
野田:それを事業部ごとにブレイクダウンしていくのです。例えば営業、製造、管理のそれぞれの部門が更に落とし込んでいく、方針を具体化していきます。

2.ビジョンを浸透させるには・・・

蛭川:ビジョンメイキングについては良く分かりました。でもいくら良いビジョンでは社員に伝わらないと意味ないですよね。
野田:組織にビジョンを浸透させるには、ある程度マネジメント層に伝わっていく必要がある 階層毎に伝えていくのです
蛭川:すると共通のものでも良いのでは?
野田:階層別に具体度合いが高まっていきます。ですから事業部長が事業ビジョン(3年)を創る、それをもとに部長が部門のビジョン(3年)を創る。それをもとに課長が目標設定し(1年)課員が自分の目標設定(MBO)に落とし込んでいきます。もちろん目標とは強制的に与えられるノルマではなく、双方で合意した目標です。自主的なものでないといけません。
蛭川:その際のポイントは、どのようなことでしょう?
野田:部長や課長が自部門に置き換えて考えられるか? 我々で考えるとどうなるか、文章化できるかどうかです。 最悪なのは、「うちらはいいんだよ」言われたことだけやればという意識となること。IT部門でも「もうちょっと地球環境に負荷かけないようなことをみんなで探してみよう」と皆で考える、そういう形で会社ビジョンに貢献しようようとなるのが望ましいといえます。
蛭川:ビジョンを言葉にできるかどうか難しいですね
野田:可能であれば、承認欲求あるといいですね。こういう風にみられたい、同じやるのであれば、IT部門のおかげでビジョンの浸透がすごく進んだ いなかったら駄目だと思われるような。いざというときに頼りになるような、モチベーションアップ、貢献意欲も醸成されます。
蛭川:表現上のポイントはありますか?
野田:抽象化と具体化のバランスですね。事業ビジョンはあまり細かくせず、部門ビジョンは多少部に沿って具体化していく、そうはいっても目標レベルではなく、定性目標のウエイトが高い 定量化は課長以下、目標レベルです。
蛭川:全社ビジョンを自分なりに解釈して、自分の言葉で具体化して伝えていくということですね。そうじゃないと人を動かすことはできないということですね。コミュニケーションする上でのポイントはありますか?
野田:相手を理解することで、行動が変わります。腹落ちします。相手によって言い方を配慮してやらないといけません。理解力がある人には抽象化したままでも分かります。ですが中には抽象化では分からない人もいます。具体化の例を挙げて、それで考えさせることが必要になってきます。
蛭川:一番いいのは、抽象化のまま伝えてわかればいいということですね。自分で進められる人はどんどん考えさせるのですね。相手を動かすにはどのようなことに留意したら良いでしょうか?
野田:抽象化でレベルをあげて、バックキャストで考えられるようにすることです。そのためには、以下の3点がポイントとなります。①影響力、②心理的安全性、③相手に考えさせる です。

49539586-組織図企業階層、人々-構造、ビジネス人々-概念ベクトル-イラスト。

蛭川:②と③は、部下メンバーに伸び伸びと考えさせて、それを支援していくというスタンスですね。前回のサーバントリーダーシップ的なアプローチですね。
野田:コーチング的な要素で、部下メンバーに考えさせるということです。話すよりも聴くことです。そうすることで本人にとってのメリットを意識させる。自分毎にさせるのです。今回こういうことをやることで組織も良くなるし、社員も成長する、回りまわって自分へ評価にもつながるということです。ただ年がら年中コーチング的でなくてもいい。メリハリが必要です。状況によってコミュニケーションスタイルは変えていきましょう。
蛭川:①の影響力を高めることは必要ですね。あの人が言うのであれば、その話にのってみようという気を起させるわけですね。
野田:そうです。私は影響力を高めるには、①軸があること ②筋が通っていること ③利他の精神 が必要と考えています。軸が何もないと言うだけの人になってしまいます。評論家になってしまうのです。
蛭川:あの人だったらこう考えるよねって思わせないといけないですよね。考え方の一貫性というか、芯があるかどうか、信念ということですね。
野田:そうです。そしてある程度論理的でないと人の心を動かすことはできないでしょう。
蛭川:いい人なんだけど、正直何言っているのか分からない ではいかんですよね。
野田:そして利他の精神
蛭川:稲盛さんが良く言われていることですね。

野田:人は誰しも究極的には自分が可愛いですが、それが出すぎていてはいけない。私利私欲が前面に出ていては部下メンバーに見透かされてしまう。会社のため、組織の為に何をなすべきか常に考えている人だから人はついていくのです。


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