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クレセントムーン #2

泣き出したくなるような雨に追い打ちかけられて、タイピングの気力すら失いそうな午後。相変わらずな窓の外を眺めて、今日やるべき仕事を数えている。

こない通知の理由を考えて、あれやこれや妄想して。
何か悪いことした?気に触ることしちゃってた?思考は細かく深く。仕事なんかとは比べものにならないくらいに繊細に。隅々にまで想いを巡らせて。


「〇〇さん、お電話です」

はっとして、電話に出る。顔ニヤけてなかったかな。いつも通り、冷静沈着なデキるOLを最大限に演じてハキハキと喋る。
なんてことはない用件で電話が終わって、辺りを見回して、バレてないみたいでほっとする。

小さな動揺に心臓が大きな反応をするので、いたたまれなくなってちょっと離席する。コンビニへコーヒーを買いに行こう。

ふと目をやると1件の通知。意中の相手ではない誰か。
こういう時は、テンション上がらないから、読むだけ読んで既読だけつけておく。内容については、後で考えよう。ランチのお誘いもあまり乗り気がしないしな。

仕事終わりの帰り道。今日は金曜日。なぜか浮足立つ雰囲気が漂うけど、わたしには関係ない。13日の金曜日ですら、なんとも思わない。何かいいことが起きてくれるんならいいんだけど。

今日の晩御飯は、パスタにしよう。ボンゴレロッソといきたいところだけど、あさり買うのめんどくさいから、ただのトマトパスタ。具材は適当に冷蔵庫の余り物でなんとかなるでしょ。昨日作ったビーフシチューがまだ残ってるけど、それは週末に食べよ。

そんなことを考えながら寒さに耐えて家路を急ぐと、街灯に照らされた黄色い葉っぱがきれい。木々に数枚だけついていて、次に風が吹いたら落ちてしまいそう。

冬が深まって、今年も終わっていくのね。
なんとも物哀しい季節。そんな今日も、月を探したんだけど見当たらない。

雲に隠れて見えない月。
きれいだね、って言いたかったのにね。

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