満月を食べてみたい。表面がザクザクしているから、クッキーみたいに甘くてほろほろしてるのかも、と紺色の制服をまとって夜に馴染んでいる君のとなりで呆れたい。真っ黒の…
1月9日。父親も仕事に出かけて、家の雰囲気はさっぱりいつも通りの日常に戻った。私は学校へ向かうために家を出る。久しぶりに友達に会えることに、気分が踊った。 電車…
封印蝋
2024年1月22日 16:38
満月を食べてみたい。表面がザクザクしているから、クッキーみたいに甘くてほろほろしてるのかも、と紺色の制服をまとって夜に馴染んでいる君のとなりで呆れたい。真っ黒のコンクリートの上にぽろぽろと落ちて沈んでいく月のかけらを眺めたい。横断歩道の白い線だけを渡る君が眩しくて、齧ったあとのような淡い三日月のせいにして目を細めたい。 満月を食べてみたい。レモネードにして飲むのが良い。透明な瓶に月とはちみつ
2024年1月21日 16:33
1月9日。父親も仕事に出かけて、家の雰囲気はさっぱりいつも通りの日常に戻った。私は学校へ向かうために家を出る。久しぶりに友達に会えることに、気分が踊った。 電車に乗ると、荷物を抱えた御老人がたくさんいらっしゃった。友達と楽しそうに話す彼/彼女らを余所目に、私は空いている席に腰を下ろす。不意に鼻を掠めたおばあちゃん家の匂いに、とうに過ぎ去ったはずの正月の気分になった。正月を、食べたような気がして