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はじめて人を雇用した時に会社がやるべきこと5選(労務手続き編)

ご覧いただきありがとうございます!
今回は、はじめて人を雇用する会社経営者、個人事業主の方向けに、「人をはじめて雇用した時に、会社が最低限やらなければいけないこと(手続き編)」についてお伝えしていきます。
はじめて従業員を雇用する方、これから従業員を雇用しようと思っている方の参考になれば幸いです!


➀ 労働条件通知書兼雇用契約書の作成

従業員を雇用した時にまずはじめにする事は、労働条件通知書兼雇用契約書の作成です。この書類は、雇用者と労働者の間で交わされた労働条件の取り決めを書類にしたものになります。
法律上は、労働契約を結ぶ際に、労働条件ついて書面に記載し、労働者に明示しなければいけない決まりになっています。
※明示しなければいけない事項については、こちらをご参照ください。

労働条件通知書と雇用契約書の違いについては、労働条件通知書は雇用者から労働者へ一方的に「通知」するものであり、雇用契約書は雇用者と労働者双方が内容を確認して署名押印する「契約書」になります。

労働者へ明示しなければいけない内容が記載されていていれば、書式は問いませんし、労働条件通知書でも雇用契約書でもどちらでも構いません。
ですが、トラブル防止の観点からも、雇用者と労働者双方が合意のうえで契約を結んだ方がいいので、「労働条件通知書兼雇用契約書」という名称で、作成するのが望ましいでしょう。
労働条件通知書兼雇用契約書を2部作成をして、それぞれの書類に双方で署名押印をして、1部ずつ保管しておくようにしましょう。

厚生労働省のホームページに、労働条件通知書のひな型が掲載されていますので、参考にしてみてください。
労働条件通知書(一般労働者用;常用、有期雇用型)


➁ 労働保険の加入手続き

次に会社が行うことは、労働保険の加入手続きです。
労働保険とは、労災保険(労働者災害補償保険)と雇用保険の総称のことを言います。
労災保険の加入対象者はパート、アルバイト、正社員等の雇用形態に関わらず、従業員を一人でも雇用した事業主は、適用事業所として登録をし、労災保険に加入する義務があります。※一部除外あり

一方雇用保険の加入対象者は、以下の条件に該当する方が対象になります。

<雇用保険の加入条件>※一部除外あり
(1)31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。
(2)1週間の所定労働時間が20 時間以上であること。

このような労働条件で雇用契約を結んで、従業員を雇用する場合には、会社は雇用保険の適用事業所として登録をし、従業員を雇用保険へ加入させる必要があります。

<必要な手続き> 
◆労災保険
➀ 保険関係成立届
➁ 概算保険料申告書
書類の提出先:管轄の労働基準監督署

◆雇用保険
➀ 雇用保険適用事業所設置届 
➁ 雇用保険被保険者資格取得届
書類の提出先:管轄のハローワーク

※一部業種では手続きが異なります


③ 社会保険の加入手続き

社会保険(健康保険、厚生年金保険、介護保険)の加入条件は、事業所側の条件と、働く従業員側の2つ条件によって変わってきます。それぞれの加入条件は以下の通りです。

<会社の社会保険加入条件>
社会保険の適用を受ける事業所を「適用事業所」といい、社会保険の加入が義務付けられている事業所を「強制適用事業所」といいます。以下のいずれかに該当する事業所は、強制適用事業所に該当し、社会保険の加入条件を満たします。

1.常時5人以上の従業員を使用する事業所 
  ※飲食店や理美容業、農林漁業などの一部業種を除く
2.事業主を含む従業員1人以上の国、地方公共団体または法人の事業所

引用:日本年金機構HP 厚生年金保険・健康保険制度のご案内

もう少し簡単に説明をすると、常時5人以上の従業員を使用する個人事業の事業所、もしくは被保険者※1が1名以上いる法人の事業所は、強制適用事業所に該当するということになります。

この他に、強制適用事業所ではない事業所が、任意に社会保険に加入する「任意適用事業所」という方法もあります。

次に、社会保険に加入する従業員の条件です。

<従業員の社会保険加入条件>

1.適用事業所に常用的に使用される者

2.1週間の所定労働時間および1カ月の所定労働日数が同じ事業所で同様の
  業務に従事している通常の労働者の4分の3以上である者

いわゆる正社員と言われるようなフルタイムで働く従業員は、1に該当しますので、社会保険の加入対象者になります。
一方でパートやアルバイトであっても、フルタイムで働く方と比較をして、週の所定労働時間と月の所定労働日数が4分の3以上勤務する方についても、社会保険の加入対象者になります。

※1 社会保険の加入条件を満たしている人を「被保険者」といいます。

引用:日本年金機構HP 適用事業所と被保険者

この他に、従業員数が101人以上(2024年10月からは51人以上)の企業で働く従業員は、別の条件で社会保険に加入することが出来ますが、今回ははじめて人を雇用する会社さんを想定した内容になっていますので割愛します。

<必要な手続き>

1.新規適用届
2.健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
3.健康保険被扶養者(異動)届 
※健康保険の扶養に入れる方がいる場合

各書類は、事業所の所在地を管轄する年金事務所に提出をします。


④ 時間外労働及び休日労働に関する協定届(36協定)

皆さんは、36協定(サブロクキョウテイ)という言葉は聞いたことがありますか?はじめて聞いた!という方もいらっしゃるかもしれませんが、正式名称は「時間外労働及び休日労働に関する協定届」といいます。
どういうものなのか説明をすると、従業員に残業をさせる場合や休日労働をさせる場合には、事前に労働基準監督署へ36協定を届出をしていないと、残業や休日労働をさせてはいけない決まりになっています。(これは法律で決まっています)
ですので、従業員に残業や休日労働をさせる可能性がある場合は、必ず事前に36協定を提出するようにしましょう。


⑤ 就業規則の作成

就業規則は、労働条件や職場内の規律などを記載している会社のルールブックのようなものです。
就業規則は法律上、常時10人以上の労働者を使用する事業場においては、所轄の労働基準監督署に届け出なければいけないとされています。
従業員が10名になるまでは、作成しなくてもいいんじゃないの?と思われるかもしれませんが、届出義務が発生してなくても、就業規則を作成することは可能ですし、従業員を雇用する前から、もしくは雇用して早い段階で就業規則を作成しておくことで未然に労務トラブルを防ぐことにも繋がりますので、早めに作成することをお勧めします。


この他に税金に関する手続きや、給与計算、勤怠管理など、人を雇用したら会社がやらなければいけないことは多岐にわたりますので、また別の機会にお伝えできたらと思っています。

最後までご覧いただきありがとうございました!

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